わたしといっしょに新しく部を創らない?と彼女は言った。

阿波野治

文字の大きさ
5 / 15

新しい部を創ろう!

しおりを挟む
「さあ、食べよう。腹が減っては戦はできぬ!」

 いち早く箸を握りしめ、サチは力強く言う。

「戦って、なにと戦うんだよ」
「午後からの授業。それ以外なくない?」
「……ああ、そういうことね」

 意味深なことを言うから、なにか事情でもあると思ったら……。やっぱりサチはいちいち大げさだ。
 いただきます、と声を揃え、俺も箸を手にする。定食の味は、値段の安さを考えれば大満足だ。ボリュームがたっぷりとあるので、その点でも満足がいく。

 食べながら、昨日から始まった高校生活について話す。クラスメイトのこと、授業のこと、今食べている定食のおかずのことと、内容は総じて他愛もない。他愛もないが、サチは一つ一つの話題をさも楽しそうに話すので、こちらまで楽しくなってくる。
 同時に、サチがクラスに馴染んでいるらしいことが分かって、ほっとした気分でもあった。言動が天然というか、風変りなところがあるので、周りから孤立しているんじゃないかと危惧していたのだが、どうやら杞憂だったようだ。

 互いの食器の中は大分少なくなった。話は部活の話題へと移った。

「わたし、無趣味だから、どこに入ろうか凄く迷っているの。運動音痴で体力ないから、体育会系は絶対無理だし。だからといって文化系も、不器用だから、迷惑をかけるかストレスをため込むか、そのどちらかになっちゃうと思うんだよね」
「考えすぎじゃない? あれこれ考えずに入りたい部活に入って、肌に合わないようならやめるみたいな、軽いスタンスでいいと思うけど」
「えー、そんなの嫌だよ。みんなに迷惑をかけるのは心苦しいから、慎重に選びたいっていうか、選ばなきゃだめだと思う」

 力を込めて断言して、定食のメインのハンバーグの切れ端を口に運ぶ。もう少しいい加減というか、猪突猛進というか、当たって砕けろ的な行動を好むタイプだと思っていたので、少し意外だ。

「決めかねているなら、いっそのこと帰宅部でもいいんじゃない。無理に入らなくても」
「でも、せっかくだし、どこかに入りたいよー。訊くの遅れちゃったけど、直太郎くんは部活には入っているの?」
「いや、帰宅部だよ。自慢じゃないけど、生まれてこのかた一回も部活動はやったことないんだ。サチと同じで無趣味だし、その上に面倒くさがりだからね。どこにも所属せずに、気楽に過ごすのが一番だよ」
「面倒くさい? そうかなぁ。友だちを作るきっかけにもなるし、入っておいて損はないと思うんだけど。……うーん」

 サチはあごに片手を添え、首を傾げるという、分かりやすい思案のポーズをとっている。具体的にどの発言に心を揺さぶられたのかは分からないが、異なる意見に出会ったことで、これまでの方針に迷いが生じたらしい。

「なあ、冷めると美味しくなくなるよ。考えるのもいいけど、とにかく食事を――」

 セリフをみなまで言えなかったのは、サチがいきなり思案のポーズを解除したかと思うと、半身を乗り出して俺を見つめてきたからだ。その顔は、真新しい電球を灯したかのように明るい。
 サチの口から飛び出したのは、全く予想していなかった言葉だった。

「直太郎くん、わたしといっしょに新しく部を創らない?」
「は……?」
「直太郎くんは、『あれこれ考えずに入りたい部活に入れば』って言ったよね。わたし、これに入りたいっていう候補はいくつかあるんだけど、一つに絞るとなるとなかなか決められなくて。なんでなのかなって考えてみた結果、どれも決め手に欠けることに気がついたの。不安とか不満とかがちょっとずつあって、三年間ずっとお世話になるのはちょっとどうなのかな、っていう感じなんだ。だったら、不安も不満も覚えなくて済むような、オリジナルの部活動を作っちゃえばいいんだって、たった今気がついたの。……この考え方、変かな?」

 俺は頭を振った。少し不安そうだったサチの表情が、一瞬で笑顔に戻った。

「そっか、よかった! じゃあ、直太郎くんも部員として参加してくれる? 私の部に」
「検討してもいいけど……。でもさ、サチはどういう部活を創ろうとしているの? それを教えてくれないと、流石に入るとは約束できないよ」

 サチははっとしたような表情になった。また考え込むポーズをとったが、今度はすぐに解除して、再び俺を見つめる。そして、こう言った。

「わたし、そういえば、なにがしたいんだろう……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...