わたしといっしょに新しく部を創らない?と彼女は言った。

阿波野治

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踊り場のランチタイム

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 昼休み時間。昨日と同じように学食の前で待ち合わせる。

「ごめん、待った?」

 五分ほどでサチが駆けつけた。今日も相変わらず、走っている最中の胸の揺れは絶景の一言に尽きる。

「三十秒だけクラスの友だちと話をするつもりだったんだけど、長引いちゃった。ごめんね」
「いや、全然いいよ。友だち付き合いも大事だもんな」
「ありがとう。寛大な心の持ち主だね、直太郎くんは」
「まあな。ところで、今日は学食じゃなくて外で食べたいんだけど。食べるものは購買で買って。だめかな?」
「いいけど、どうして?」
「んー、なんとなく」

 学食に来るまでは、学食以外の場所で食事をしようとは一ミリも考えていなかった。しかしサチを待っている間に、人がいない場所で二人きりで食べたい、という願望が芽生えた。生徒たちでごった返す学食内の様子を見ているうちに、昨日サチと昼食をともにしたさいに、じろじろと見られたことを思い出した。二日連続でそれは勘弁してほしい、と思ったのだ。
 早い話が、嫉妬。サチをひとり占めしたくて、昼休み時間だけでも二人きりで過ごしたくて、そんな提案をしたのだ。

「おなかぺこぺこだし、さっそく移動しよっか。で、どこで食べるの?」
「実は、まだ決まってない。とりあえず購買に行こうぜ」
「りょーかい!」

 人がいない場所がいいとは思っていたが、具体的にどこで、ということまでは決めていなかった。まずは互いにパンと飲み物を購入。それから二か所ほど、これはと見当をつけた場所に足を運んでみたが、いずれも先客がいた。迷っていても時間の無駄ということで、俺が向かったのは、

「おー、旧校舎! 二日連続!」

 サチは小さく歓声を上げた。

「もしかして直太郎くん、静かな場所で食べたかったの? だったら、絶好のスポットかもね。わたしたちの思い出の場所でもあるわけだし」

 サチは喜んでいるようだが、明らかなマイナス要素が一つだけある。日当たりが悪いのだ。まだ四月中旬だから、日陰だと昼間でも少し肌寒い。昼食くらい、温かな日なたで食べたい。

「雑草だらけで、座るはちょっとって感じだな。もう少し場所を探そう」

 サチを促し、校舎の外壁を沿うように移動を開始する。
 最初の角を折れると、目の前に階段があった。二階に行くための外階段だ。見上げてみると、踊り場に日が射している。

「サチ、踊り場で食べよう。日当たりがいいから」
「あっ、ほんとだ。眺めもいいし、いいね。じゃあ、行こう!」

 サチは元気よく階段を上り始めた。俺も上りかけたが、足を止めたままサチを目で追う。背中ではなく、それよりも下をじっと見つめる。十段ほど上ったところで、スカートの中がとうとう見えた。今日は、黒だ。

「直太郎くん、どうしたの?」

 足を止め、不思議そうな顔をこちらに向ける。スカートの裾を気にする素振りは見せていない。このシチュエーション、女子ならば俺の目論見にすぐに感づきそうなものだが、サチは鈍感らしい。

「いや、なんでもない。行こうぜ」

 二日連続で下着を拝見できた喜びににやつきながら、俺も階段を上る。
 俺たちは踊り場に腰を下ろし、さっそく昼食を食べ始める。俺は焼きそばパンとチョココロネ。サチはホイップクリーム入りの大きなメロンパン。ボリュームは申し分はなく、味も合格点に達している。

 食べながらの会話の話題は、やはりというか、部活動のこと。口火を切ったのは、サチだ。

「担任の先生にいろいろ聞いてみたんだけどね、部員が五人集まらなくても、部室を使わせてもらえる場合もないわけじゃないみたい。空き教室自体は結構あるらしくて」

 どうやら独自にリサーチをしていたらしい。流石は発起人だけあって、熱意がある。
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