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「でも、肝心の活動内容が決まらないとどうしようもないよね。『なにをする部なのかはまだ決まってません』では、先生も『どうぞ空き教室を使って』とはならないだろうし。わたしも昨日今日とずっと考えたけど、特に思い浮かばなかったなぁ。直太郎くんは?」
「俺もさっぱり。考えれば考えるほど逆効果っていうか、そんな感じだよね。インスピレーションが閃くのを待つしかないんじゃないかな」
「期限は夏休みが始まるまで、だったよね」
「長いようにも思うけど、決められないままだらだらいきそうな気もするし、怖いよな」
「うん……」
「仮にアイデアが浮かんだとしても、先生に部活動として認められるか分からないからね。そう思うと、許された時間は長いように見えて短いのかもしれないな。……いや、わざとネガティブなことを言うつもりはないんだけど」
などと弁明しつつも、暗い方向に話を持って行ったことを、俺は内心大いに反省した。残り少なくなった焼きそばパンを無理矢理口に押し込み、コーラで流し込んで話頭を転じる。
「そういえば、顧問ってどうなるのかな。今の段階で気にしてもどうしようもないと思うけど、ちょっと気になる」
「顧問の先生なら、もうすぐ産休が明ける先生がいるから、その先生に頼めばいいっていう話だったよ。D組の、えーっと、有吉郁子先生って言ってたかな」
「D組? 俺のクラスか」
現状、俺のクラスの担任は、むさくるしい中年男性教師が務めているが、そういえばそんなことを言っていたような記憶がある。
「ああ、直太郎くんの担任の先生だったんだね。いい先生?」
「いや、産休中だから会ったことないけど」
「あっ、そうだったね」
サチらしい間抜けな見落としに、俺もサチも小さく笑った。
直後、突然、一陣の強風が吹き抜けた。
「あっ⁉」
サチの足元に置かれていた、メロンパンの袋が高々と舞い上がった。サチは反射的に立ち上がって手を伸ばしたが、届かない。風がやむと、袋は小さな円をくり返し描きながら、階段に沿って地上へと落ちていく。
「わわっ、待って! パンの袋!」
サチは袋を追いかける。メロンパンを片手に持っての追跡だから、酷く間抜けな絵面だ。そしてそれ以上に、危なっかしい。階段を普通に下りるだけで転ぶようなやつでは流石にないが、今は袋を追いかけている。視線は足元ではなく、逃げていくパンの袋に向いている。思わず腰を浮かした瞬間、
「あっ!」
階段から足を踏み外した。サチの体が大きく前に傾く。
「サチ……!」
俺はサチへと突進する。あっという間に追いつく。右腕を掴む。サチの全体重を、歯を食いしばって繋ぎ止める。
サチの顔面は、階段の角にぶつかるギリギリで静止している。
「……っぶねぇ」
ふう、と大きく息をつく。サチは左手を床についていたので、「離すよ」と伝えた上で、ゆっくりと慎重に右腕を離す。サチは腕立て伏せをしているような姿勢になった。足の方が高く頭の方が下だから、重力によってスカートは大きくめくれ、黒いショーツが丸見えになっている。どうやら俺は、サチの下着を見る機会に恵まれた場合、二回見る運命にあるらしい。
「直太郎くん、ありがとう。でもわたし、今、体勢どうなってるの? 分からないよ~。助けて~」
サチが情けない声で窮状を訴える。俺はサチの体よりも下の段まで下り、
「大丈夫。もう落ちないし、落ちたとしても俺がキャッチするから。まずは足を――」
「えっ? どうやって起きるの? この体勢だと無理じゃない?」
「そうかな。じゃあ――」
細かく指示を出し、ときにはこちらが手を貸すことで、サチはなんとかその場に立つことができた。
「ありがとう。いやー、死ぬかと思った」
サチは際どいところで大けがを免れたばかりとは思えない、爽やかな笑顔で礼を言った。やれやれ、と俺はため息をつく。
「俺もさっぱり。考えれば考えるほど逆効果っていうか、そんな感じだよね。インスピレーションが閃くのを待つしかないんじゃないかな」
「期限は夏休みが始まるまで、だったよね」
「長いようにも思うけど、決められないままだらだらいきそうな気もするし、怖いよな」
「うん……」
「仮にアイデアが浮かんだとしても、先生に部活動として認められるか分からないからね。そう思うと、許された時間は長いように見えて短いのかもしれないな。……いや、わざとネガティブなことを言うつもりはないんだけど」
などと弁明しつつも、暗い方向に話を持って行ったことを、俺は内心大いに反省した。残り少なくなった焼きそばパンを無理矢理口に押し込み、コーラで流し込んで話頭を転じる。
「そういえば、顧問ってどうなるのかな。今の段階で気にしてもどうしようもないと思うけど、ちょっと気になる」
「顧問の先生なら、もうすぐ産休が明ける先生がいるから、その先生に頼めばいいっていう話だったよ。D組の、えーっと、有吉郁子先生って言ってたかな」
「D組? 俺のクラスか」
現状、俺のクラスの担任は、むさくるしい中年男性教師が務めているが、そういえばそんなことを言っていたような記憶がある。
「ああ、直太郎くんの担任の先生だったんだね。いい先生?」
「いや、産休中だから会ったことないけど」
「あっ、そうだったね」
サチらしい間抜けな見落としに、俺もサチも小さく笑った。
直後、突然、一陣の強風が吹き抜けた。
「あっ⁉」
サチの足元に置かれていた、メロンパンの袋が高々と舞い上がった。サチは反射的に立ち上がって手を伸ばしたが、届かない。風がやむと、袋は小さな円をくり返し描きながら、階段に沿って地上へと落ちていく。
「わわっ、待って! パンの袋!」
サチは袋を追いかける。メロンパンを片手に持っての追跡だから、酷く間抜けな絵面だ。そしてそれ以上に、危なっかしい。階段を普通に下りるだけで転ぶようなやつでは流石にないが、今は袋を追いかけている。視線は足元ではなく、逃げていくパンの袋に向いている。思わず腰を浮かした瞬間、
「あっ!」
階段から足を踏み外した。サチの体が大きく前に傾く。
「サチ……!」
俺はサチへと突進する。あっという間に追いつく。右腕を掴む。サチの全体重を、歯を食いしばって繋ぎ止める。
サチの顔面は、階段の角にぶつかるギリギリで静止している。
「……っぶねぇ」
ふう、と大きく息をつく。サチは左手を床についていたので、「離すよ」と伝えた上で、ゆっくりと慎重に右腕を離す。サチは腕立て伏せをしているような姿勢になった。足の方が高く頭の方が下だから、重力によってスカートは大きくめくれ、黒いショーツが丸見えになっている。どうやら俺は、サチの下着を見る機会に恵まれた場合、二回見る運命にあるらしい。
「直太郎くん、ありがとう。でもわたし、今、体勢どうなってるの? 分からないよ~。助けて~」
サチが情けない声で窮状を訴える。俺はサチの体よりも下の段まで下り、
「大丈夫。もう落ちないし、落ちたとしても俺がキャッチするから。まずは足を――」
「えっ? どうやって起きるの? この体勢だと無理じゃない?」
「そうかな。じゃあ――」
細かく指示を出し、ときにはこちらが手を貸すことで、サチはなんとかその場に立つことができた。
「ありがとう。いやー、死ぬかと思った」
サチは際どいところで大けがを免れたばかりとは思えない、爽やかな笑顔で礼を言った。やれやれ、と俺はため息をつく。
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