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午後七時を報せる鐘が鳴った。
眠り姫たちにとっては就寝時間であり始業の時間を、観客たちにとってはショーのはじまりを告げる音色だ。
眠り姫たちは一斉に眠る態勢へと移行する。ベッドに腰かけている者はブランケットに潜りこみ、体を横たえている者はブランケットを体にかけ、ブランケットをすでにかけている者は任意の形にかけ直す。
ブランケットは一面淡い桃色で、無地。サイズは小さめなので、たとえ小柄でも、体をコンパクトに折り畳んだとしても、全身を完全に隠すのは難しい。
それを承知のうえで、首から下を覆い隠そうと懸命に体を縮め、初心な恥ずかしがり屋を装う。
どうせ隠せないなら、いっそのことありのままの姿を見せるべきだと開き直り、ブランケットは一ミリも体の上にはのせないようにする。
腕や脚などの露出した部分、胸や尻などの性的欲求を刺激する部位など、重要なところだけ出すように工夫する。
生半可に小細工を弄して、わざとらしい印象を与えては元も子もないと、わざと無造作に被る。
どう見られるかよりも眠りにつきやすさを重んじて、ブランケットを丸めて抱き枕のようにして、それを抱いて眠る。
礼節をわきまえさえすれば、ブランケットはどう使おうが自由。客の好みや要望が眠り姫たちに伝えられることはないので、どう工夫を凝らすかは彼女たち次第。どのように体を覆うのかの匙加減は軽視できない要素であり、なおかつ個性が出るところだ。
やがて少女たちは静止し、ベッドルームは死のような静寂に支配される。
これから三時間後、客が帰るまでのあいだ、彼女たちはベッドに横になっていなければならない。
彼女たちはしゃべらない。寝返りもほとんど打たない。静かに、静かに、眠り姫たちは眠る。
五分が過ぎ、十分が経ち、十五分が経過した。
空間のほぼ中央に置かれたベッドの上、仰向けの姿勢でブランケットをあごまでかぶり、足首から先を左右とも出したマーガレットは、まだ眠れずにいる。
彼女はブランケットのかぶりかたにこだわりを持たない。それよりも気をつけているのは寝相で、天井を向いてなるべく動かないようにしている。
ただ、それはこだわりではなくて、「こだわらない、というこだわり」ですらなくて、心がけ程度の方針に過ぎない。
どうせすんなり寝つくことなんてできない。輾転反側しているうちにブランケットごと寝相も乱れるから、特定の状態を維持し続けることにこだわる意味はあまりない。やぶれかぶれになって乱雑になりすぎないように、緩やかなルールを守るように努める程度で充分だ。
眠り姫たちにとっては就寝時間であり始業の時間を、観客たちにとってはショーのはじまりを告げる音色だ。
眠り姫たちは一斉に眠る態勢へと移行する。ベッドに腰かけている者はブランケットに潜りこみ、体を横たえている者はブランケットを体にかけ、ブランケットをすでにかけている者は任意の形にかけ直す。
ブランケットは一面淡い桃色で、無地。サイズは小さめなので、たとえ小柄でも、体をコンパクトに折り畳んだとしても、全身を完全に隠すのは難しい。
それを承知のうえで、首から下を覆い隠そうと懸命に体を縮め、初心な恥ずかしがり屋を装う。
どうせ隠せないなら、いっそのことありのままの姿を見せるべきだと開き直り、ブランケットは一ミリも体の上にはのせないようにする。
腕や脚などの露出した部分、胸や尻などの性的欲求を刺激する部位など、重要なところだけ出すように工夫する。
生半可に小細工を弄して、わざとらしい印象を与えては元も子もないと、わざと無造作に被る。
どう見られるかよりも眠りにつきやすさを重んじて、ブランケットを丸めて抱き枕のようにして、それを抱いて眠る。
礼節をわきまえさえすれば、ブランケットはどう使おうが自由。客の好みや要望が眠り姫たちに伝えられることはないので、どう工夫を凝らすかは彼女たち次第。どのように体を覆うのかの匙加減は軽視できない要素であり、なおかつ個性が出るところだ。
やがて少女たちは静止し、ベッドルームは死のような静寂に支配される。
これから三時間後、客が帰るまでのあいだ、彼女たちはベッドに横になっていなければならない。
彼女たちはしゃべらない。寝返りもほとんど打たない。静かに、静かに、眠り姫たちは眠る。
五分が過ぎ、十分が経ち、十五分が経過した。
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ただ、それはこだわりではなくて、「こだわらない、というこだわり」ですらなくて、心がけ程度の方針に過ぎない。
どうせすんなり寝つくことなんてできない。輾転反側しているうちにブランケットごと寝相も乱れるから、特定の状態を維持し続けることにこだわる意味はあまりない。やぶれかぶれになって乱雑になりすぎないように、緩やかなルールを守るように努める程度で充分だ。
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