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シャルロッテに勝負を申しこんだ翌朝、マーガレットは目覚まし時計のアラームが鳴る前に目覚めた。
緊張はしてない。それ以外のもろもろのネガティブな感情もいっさいない。むしろ肩の力は抜けている。頭だってしゃっきりとしていて、眠気が少しも残っていない。シャルロッテの寝顔を眺める心の余裕があったし、いつもどおり最後に目覚めたヘレンを起こしてあげるサービス精神も発揮できた。
ベッドの上でぐずぐずしているヘレンを置き去りにして自室に戻って、てきぱきと着替えを済ませる。ヘレンがあくびを連発しながら帰室したのを見届けて、一人で一階まで下りる。
眠り姫たちの一夜の売上額は、眠り姫たちが就寝しているあいだに係のシスターによって集計され、翌朝に多目的室に通じる廊下の壁に貼り出される。マーガレットはそれを見に行っているのだ。
眠り姫の多くは、朝食をとるために食堂へ向かうさいに、紙を見て結果をたしかめる。今はまだ少し早い時間帯だからだろう、紙の前には誰もいない。
心臓が早鐘を打っている。
今日目が覚めて初めて、心が不安定になっている。怖いし、逃げたい。
しかし、もう結果は出ている。そして、それを変えることはできない。
だったら、思い切って、こちらからぶつかっていこう。
壁に取りつけられたコルクボードに、文字がタイプされたA4サイズのコピー用紙が貼りつけられている。上部中央に「〇月△日獲得額」とタイトルが記され、左半分に一位から十一位まで上位十一名、右半分に十二位から二十二位までの下位十一名、合計二十二名の名前がのっている。項目は名前と順位の他に、合計獲得金額。
マーガレットは一番下から見ていくことにした。
予想どおり、最下位の二十二位はヘレンだった。能天気で幸せそうな寝顔が脳裏によみがえり、思わず笑ってしまった。しかしすぐに表情を引きしめて、名前を上へ、上へとたどっていく。
約三分の一の十五位までに、マーガレットの名前はなかった。いつもなら、だいたいこの順位までに自分の名前が見つかるのに。さらに上の順位へと上っていったが、折り返しの十二位までに名前はない。
そして、上位十一名。
十一位、十位、九位と、他の眠り姫の名前が記載されている。順位が一桁だったなんて、いつ以来だろう?
八位、七位、六位――まだ出てこない。
五位、四位、三位――。
とうとう、名前を見つけた。
一位、マーガレット。
二位はシャルロッテ。両者の獲得金額の差はわずかだが、マーガレットのほうが上回っている。シャルロッテに勝っている。
「嘘……」
マーガレットは自分の瞳に映る数字が信じられない。
夢ではないかと、頬をつねってみた。痛かった。
目を閉じて、十秒を数えて、それからもう一度紙を見た。やはり、自分の名前が一位にあった。
にわかには信じられないが、現実なのだ。
眠り姫の売上額で、初めてシャルロッテに勝った。
しかも、とったことがなかった一位をとるという、おまけと呼ぶにはあまりにも大きすぎるおまけつきだ。
緊張はしてない。それ以外のもろもろのネガティブな感情もいっさいない。むしろ肩の力は抜けている。頭だってしゃっきりとしていて、眠気が少しも残っていない。シャルロッテの寝顔を眺める心の余裕があったし、いつもどおり最後に目覚めたヘレンを起こしてあげるサービス精神も発揮できた。
ベッドの上でぐずぐずしているヘレンを置き去りにして自室に戻って、てきぱきと着替えを済ませる。ヘレンがあくびを連発しながら帰室したのを見届けて、一人で一階まで下りる。
眠り姫たちの一夜の売上額は、眠り姫たちが就寝しているあいだに係のシスターによって集計され、翌朝に多目的室に通じる廊下の壁に貼り出される。マーガレットはそれを見に行っているのだ。
眠り姫の多くは、朝食をとるために食堂へ向かうさいに、紙を見て結果をたしかめる。今はまだ少し早い時間帯だからだろう、紙の前には誰もいない。
心臓が早鐘を打っている。
今日目が覚めて初めて、心が不安定になっている。怖いし、逃げたい。
しかし、もう結果は出ている。そして、それを変えることはできない。
だったら、思い切って、こちらからぶつかっていこう。
壁に取りつけられたコルクボードに、文字がタイプされたA4サイズのコピー用紙が貼りつけられている。上部中央に「〇月△日獲得額」とタイトルが記され、左半分に一位から十一位まで上位十一名、右半分に十二位から二十二位までの下位十一名、合計二十二名の名前がのっている。項目は名前と順位の他に、合計獲得金額。
マーガレットは一番下から見ていくことにした。
予想どおり、最下位の二十二位はヘレンだった。能天気で幸せそうな寝顔が脳裏によみがえり、思わず笑ってしまった。しかしすぐに表情を引きしめて、名前を上へ、上へとたどっていく。
約三分の一の十五位までに、マーガレットの名前はなかった。いつもなら、だいたいこの順位までに自分の名前が見つかるのに。さらに上の順位へと上っていったが、折り返しの十二位までに名前はない。
そして、上位十一名。
十一位、十位、九位と、他の眠り姫の名前が記載されている。順位が一桁だったなんて、いつ以来だろう?
八位、七位、六位――まだ出てこない。
五位、四位、三位――。
とうとう、名前を見つけた。
一位、マーガレット。
二位はシャルロッテ。両者の獲得金額の差はわずかだが、マーガレットのほうが上回っている。シャルロッテに勝っている。
「嘘……」
マーガレットは自分の瞳に映る数字が信じられない。
夢ではないかと、頬をつねってみた。痛かった。
目を閉じて、十秒を数えて、それからもう一度紙を見た。やはり、自分の名前が一位にあった。
にわかには信じられないが、現実なのだ。
眠り姫の売上額で、初めてシャルロッテに勝った。
しかも、とったことがなかった一位をとるという、おまけと呼ぶにはあまりにも大きすぎるおまけつきだ。
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