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一章 幼少期
まだまだ不安
しおりを挟むその日の夜、無事にティナの部屋を用意したカイ達。寄宿舎で暮らすにあたり、ティナに何かあったらすぐに駆けつけられるようにルイド達の部屋の近くにした。
そして、ルイド達はティナの周りにずっと誰かがいると気を使うだろうと、ティナを一人にしてあげようということになった。寝る時間になり、それぞれどこが自分の部屋なのかティナに教えて、自分の部屋に戻った。
│││││││││││││││││││││
次の日の朝。
(・・・う、ん、・・・朝か。ん?何だ、体の右側が暖かい。!?なっ何でティナが俺のベッドで寝ている??しかも、腕にがしりとしがみついて離れないな。)
ティナは気持ち良さそうな寝顔をしていて、起こすのはしのびない気持ちになる。
「・・・これは、朝の訓練には行けないか?」
誰かが答えてくれるわけもなく、ポツリと呟いた一人言は部屋の中に消えた。
│││││││││││││││││││││
「おい、副団長遅くないか?」
「確かに!今まで遅刻したことないのにな?」
「もしかして、何かあったんじゃないか?」
「心配だな。様子を見に行ってみるか。」
「オースッ!ん?ルイドまだ来てねーの?」
「へぇー、めずらしいねぇ?」
「あ!おはようございます!!カイさん、ヒュースさん。」
「おー!おはよー!!」
「おはよぉ~。」
「ところで、ルイドの様子見に行くんだろ?俺らもついてくわ。」
「そうだねぇ。気になるし。」
「そうですか!では行きましょう!!」
・・・ガチャ!「おーい!ルイド!!無事か?」
「・・・だからノックをしてから入れのと何度も言っているだろう?カイ。」
「おっ、わりーわりー!」
「特に健康に問題はないみたいだねぇ?ルイド。」
「・・・あぁ。心配かけてすまないな。」
「ふみゅう。」
「「「「ふみゅう?」」」」
「・・・あぁ、ティナ。起きたのか?」
「・・・うん、おはよぉ~」
「!?えっ、何でティナがルイドのところで寝てんだよ??」
「ふふっ。ティナがいたから朝練にこれなかったんだねぇ?」
((寝起きのティナちゃん可愛い!!))
「・・・腕から離れなくてな。起こすのはしのびなくなってしまい・・・。」
「まぁー、ルイドが無事ならいーや!!」
「そうだねぇ。ところでルイドは朝練くるのかい?」
「・・・ティナも起きたことだし、参加する。・・・ティナも来るか?」
「!うん!!行く!」
「・・・そうか。では準備してきなさい。」
「はぁーい!」
「すっかりティナの父親みたいだな?ルイド!!」
「そうだねぇ。そういえば、今度ルイドの息子に合わせるんだっけ?」
「・・・あぁ。仲良くなれればいいのだが。」
「じゅんびできた!」
「おっし!なら行くか!!」
│││││││││││││││││││││
ルイド達は訓練所までの道のりを歩いていた。
「ところでさ、何でティナはルイドのベッドで寝てたんだ?」
「確かに。気になってたんだよねぇ。」
「えっと、ねてたんだけど、さびしくなっちゃって。」
「あー、そっか。まだ三歳だもんな。」
「配慮したつもりだったけど、浅はかだったねぇ。」
「・・・すまない。ティナ」
「ううん!でも、これからはだれかといっしょにねたいな・・・。」
「・・・そうだな。そうするか。」
「ふふっ、いつでも来ていいからねぇ?」
「バッチコイだぜ!!」
「やった!」
ティナは頬を少し赤く染め、呟くようにそうこぼした。
│││││││││││││││││││││
ティナ達は談笑しながらあっという間に訓練所に着いた。
「「「あっ!お帰りなさい!!それと、おはようございます!!副団長!」」」
「おーう!ただいま!!」
「・・・あぁ。おはよう。」
「あ!ティナちゃんも来たんですね!!おはようございます!」
「おはよう!」
朝日が眩しいのか、ティナは目を細め答える。
ティナが来たことを知った騎士達は、良いところを見せようといつもより気合いが入っているようだ。
「んじゃ、ティナはここで見ててな?」
早速訓練に入ろうとするカイが、ティナに話しかけた。
「わかった!」
ティナは訓練というものを見たことがないためか、ワクワクと目を輝かせている。周りの騎士達も訓練しつつティナの様子を気にしているようだった。
│││││││││││││││││││││
「あぁー!疲れたあぁー!!」
「ふふっ、他の騎士達もいつもより気合いが入ってたねぇ??」
「・・・あぁ。単純だな。」
訓練を終えたカイ達は、汗を軽く流して食堂に向かっている。ティナもお腹がすいてきているようだ。
「キュルル~」
「おっ!ティナもお腹へったか!んじゃ早く食堂に行こーぜ!!」
「うん!おなかへった!!」
│││││││││││││││││││││
食堂はかなり広い作りになっていた。何か食べたいときは、メニューから食べたいものを選び、カウンターの受付に伝える。横にはけといて、出来た物を受けとるというスタイルだ。
ティナはパンと目玉焼きのセットで、カイ達は日替わりメニューを選んだようだ。
「おいしい!!」
「だろー!ここの飯はうまいんだよ!!」
「確かに、美味しいねぇ。」
「・・・気にいったようで何よりだ。」
パンはフワフワしていて、ほんのり甘い。目玉焼きは半熟すぎず、固すぎず、絶妙だ。そして何よりパンとの相性が抜群にいい。ティナは一心不乱に食べ続けている。
「お気に召したかな?」
そういって厨房から出てきたのか、エプロン姿のおじさんが近づいてきた。手には沢山の切り傷があり、今までの料理人人生が語られている。
「お!休憩か?ファル?」
「あぁ。丁度一段落したからな。お嬢ちゃん、旨いか??」
ファルと呼ばれた男は、虎の獣人のようだ。がたいがいい体にエプロンと、何ともおかしな姿になっている。そして、ティナに話しかけた。
「うん。すっごくおいしかった!!」
ティナはいつの間にか完食していたようだ。キレイさっぱりなくなっていた。
「へへっ!そうかい。それは良かった。これはデザートだ。」
ファルは嬉しそうに目を細め、ティナにアイスをあげる。
「ありがとう!」
ティナも嬉しそうに受け取り、アイスを食べ始めた。
「ずっりー!俺には??」
カイもアイスが欲しかったのか、ファルに抗議する。
「バーカ、可愛くもないやつにあげるアイスはない。」
そういってファルは厨房に戻って行った。
「ちぇー、アイス食べたかった!!」
カイは本気で食べたかったのか、悔しそうに顔を歪める。それをルイド達は呆れた顔で見ていた。
「あ~ん?」
ティナは可哀想に思ったのか、カイにアイスを差し出した。
「んんっ!可愛い!じゃなくて、ごめんごめん。ティナのアイスなんだからティナが食べな?」
一瞬身をよじらせ、カイはすぐに否定する。
「い~の!はい、あ~ん!!」
ティナも手が疲れてきたのか、少し強めにアイスを差し出した。
「うっ・・・ありがとう」
最終的にカイが折れ、素直に食べる。その様子を見ていた周りの騎士達はカイに殺気を飛ばしていた。あくまでティナに気づかれないように。そんな殺気をひしひしと感じていたカイは、背中に汗がつぅーっと流れたのがわかった。
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