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2章 屋敷での生活
母との再開
しおりを挟むティナはついに、父、フェルナンドと兄のリュオと再開を果たした。あれから父が獣人の騎士団の皆にティナが二年前に行方不明になった自分の娘だということを伝えた。最初は疑いの目で見ていた騎士団の皆。特に、ティナを森で見つけたルイドは中々信じなかったが、父がどういった経緯でティナが居なくなってしまったのかを事細かに説明したら信じてくれたようだった。
フェルナンドは一刻も早く妻のマリーナに会ってやって欲しいということだったが、急すぎたために後日となった・・・。
│││││││││││││││││││││
「それでは、ティナの親が見つかったことに乾杯!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
あれから、ティナの親が見つかったことは瞬く間に寄宿舎で暮らす全員に広がり、今は近いうちに寄宿舎から出ていくことになるティナのお別れパーティーをしていた。
そして、今ティナの目の前に大切な人達が集まっていた。
「う~、ティナが居なくなっちまうと寂しくなるなぁ~!!」
鼻をズピズピとならしながらティナに頬擦りをする団長。お酒が入っているからか感情を隠すこと無くさらけ出している。
「・・・ティナ、体には気をつけて欲しい。」
ティナを何かと気にかけてくれていたルイド。ティナを拾ってくれたのもルイドだったので、ティナが一番なついていたのはルイドだった。
「ぐすっ、ディナァァ~幸せになれよぉぉ~!!」
ティナを妹の様に可愛がってくれていたカイ。カイはティナという妹分が居なくなってしまうことが悲しくて仕方がないらしい。
「ふふっ、別れを悲しむって柄でもないけど、・・・やっぱり寂しいねぇ。」
目を少し赤くし、悲しげにそう告げるヒュース。ヒュースは物知りで、ティナの兄の様な存在だった。
「お嬢が居なくなっちまったら飯の作りがいがなくなるなぁ。」
目を細めそう告げる料理人のファル。あれから前世の知識を活かしたお菓子などを一緒に作ったことがきっかけとなり、仲良くなったのだった。
「うっ、ひっくっ、うぅ~~。」
先程から泣き続けているリオン。同い年だったこともあり、幼馴染としてずっと一緒にいた大切な人であり、ティナも離れてしまうのは悲しかった。永遠に会えなくなるわけではないのは分かっているのだか、悲しいものは悲しいのだ。
そして・・・
「ティナちゃ~ん!」「寂しいよぉ~!!」
「俺の癒しがぁぁぁ~」「毎日の楽しみがぁ」
「生きる喜びがぁぁぁあ!!」
騎士団の皆だ。皆ティナを可愛がってくれて、ティナは騎士団の皆が大好きだ。
また、この場には居ないが、寄宿舎で働いている人達からお別れのプレゼントを沢山頂いた。
(こうしてみると、私は本当にいい人達に恵まれたんだな。)
ティナは目の前の人達を見て、そう思ったのだった。
│││││││││││││││││││││
ティナのお別れパーティーが終わり、数日が経った昼下がり・・・。
「よし、出発だ!」
父のフェルナンドの掛声を合図にティナを乗せた馬車と騎士団の皆はフェルナンドの屋敷へと進み始めた。
一時間半位が経ったころ、馬車が止まった。
「着いたぞ、ティナ。」
そう優しく告げる父。恐る恐る馬車から降りると、目の前に見事な屋敷が立っていた。屋敷の周りには大きな花壇がいくつもあり、植えられた季節の花達が庭を明るく彩っていた。
(懐かしいなぁ。昔、にーさまと一緒に花を植えた時に、咲いた花を使って作ったしおりまだのこってるかな?)
なんて事を考えていたティナの目の前に、一人の美しい女性が現れた。随分急いでやって来たのか、肩で息をしている。そして、ティナの顔を見た瞬間泣き出してしまった。
「ティナ!ティナちゃんなのね!?あぁ、良かった。貴女が無事で本当に良かったわ!!」
ティナを優しく抱きしめながらそう繰り返すこの女性、ティナの母マイゼに、ティナは声をかける。
「おかーさま、今まで心配かけてごめんなさい。」
すると、マイゼは目を見張り、涙で頬を濡らし、微笑みながらこう言った。
「お帰りなさい、ティナ。」
「っ、はい!ただいま帰りました!おかーさま!!」
こうしてバラバラだった家族が一つになった。
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