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2章 屋敷での生活
兄の後悔2
しおりを挟むティナが行方不明になってから二年が経とうとしていた。あの時八歳だった僕も、もう十歳になる。未だに見つからない僕の妹はどこにいるのだろう。
│││││││││││││││││││││
日課の訓練を終えた僕は屋敷の中がさわがしいことに気づいた。
近くにいた執事に話を聞くと、父さんが獣人の騎士達と人間の騎士達で同盟を組もうと言っているらしい。昔の戦争でわかった獣人の恐ろしさを教えられている人々は、獣人を恐れている。だから父さんの考えはなかなか受け入れられないだろうな。
でも、父さんの考えはいいと思う。最近の調査で、魔物の数がだんだん増えているといっていた。力の強い獣人と同盟を組めれば、相当な戦力になる。今の獣人は和解したいと思っているらしいと聞いたことがある。いいきっかけだろう。
・・・それに、獣人と繋がりがあればティナの情報が入りやすくなるしね。
│││││││││││││││││││││
父さんが国王と騎士達を説得して、今は同盟を組むためにおたがいの国境の境にきている。ここで同盟を組む誓いをするらしい。
今、まさに僕の目の前で父さんと獣人の騎士団長が同盟を組もうとしている。
「・・・あれ?」
ふと、僕よりも小さい人間の少女?が目に止まった。
(なんで獣人の後ろに隠れてるんだろ?ん?そういえばここにいる子供って僕だけじゃなかったけ??)
少女をよく見てみたいのに、体が大きい獣人の後ろに隠れてるせいで、少女の姿がよく見えない。父さんは少女に気づいていないみたいだ。焦れったい思いをしていたら、少女が一瞬顔をだした。一瞬だったので、顔はよくわからなかったけど、僕と同じ色のきれいな銀髪は見ることができた。
「っ!」
(父さん譲りの銀髪は人間の国ではかなり珍しいはず。今まで、父さんと僕以外の銀髪をみたことがない。妹のティナを除いてっ・・・)
僕は心臓が高鳴る。心臓の音がうるさいくらいだ。
(まさか・・・いや、もしかしたら!!)
「・・・ティナ?」
気づいたら声にだしていた。ずっと探していた妹の名前を。
「に・・・さま?」
少女は、昔妹に呼ばれていた僕の呼び方を呟いた。
「!ティナ!?本当にティナなの??」
改めて顔を見ると、少し大きくなったが昔の面影が残る、可愛い僕の妹の顔だった。
二年ぶりにみたティナの顔と、声を聞いた僕の目から涙が浮かぶ。
「はいっ!に、さまっ!!」
ティナも目から涙をこぼしながら僕の問いに答える。
「・・・まさか!・・・あぁ!ティナ!父さんだよ!!覚えているかい?」
同盟を組終わり、帰ろうとしていた父さんは、僕が足を止めたので戻ってきたのだろう。僕たちの会話を聞いて、少女を見た。そして少女がティナだとわかり、泣きそうな顔でティナに声をかける。
「は、、い。おぼえています!とーさま!!」
泣き笑いのような顔でそう告げるティナに、僕たちは堪えきれずティナにかけより、抱きしめた。
「ティ、、ナ!会いたかった!!ずっとっ・・・。」
もっと伝えたいことがあったのに、言葉がでてこない。
「よかっ、た!!生きていたんだな!ティナ!本当に、よかった・・・。」
泣いているのだろう。肩を震わせティナを抱きしめ続ける父。
そんな僕たちを見て、ティナもまた泣き出してしまった。それからしばらく僕たちは泣き続けた。
(僕はもう後悔したくない。何があってもティナを守ろう。)
僕はそう胸に誓った。
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