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2章 屋敷での生活
思い出した、この世界で私は・・・
しおりを挟む朝食を終えたティナ達は楽しく話をしていたが、ティナは今、内心困っていた。
「ティナ、ティナに似合いそうなドレスを沢山作ったんだ。メイド達に言ってティナの部屋に運んどいてもらったから、後で見てみてくれ。」
「ねぇティナ!この髪飾り、ティナにピッタリだと思って買ってきたんだ。こっちにおいで、つけてあげる。」
「あ、ありがとうございます。とーさま、にーさま。」
ここで小話を入れようと思う。無事家族と再開したティナは、あの後、父の呼び方をとーさまからお父様に変えようとした。が、父フェルナンドが
「兄のリュオを「にーさま」と呼んでいるのだから自分も「とーさま」と呼んで欲しい。むしろパパでもいいぞ。」
と真顔で言ってきたのだ。さすがにパパ呼びは出来そうになく、母が
「さすがにパパは貴族として格好がつかないんではなくて?」
と、父に目が笑っていない笑顔を向けてくれたお陰で、パパ呼びは何とか免れた。
最終的に、家では「とーさま、かーさま、にーさま」、公の場では「お父様、お母様、お兄様」と呼ぶことになった。
まぁ、「○ーさま」呼びは、マナーの勉強が始まるまでの間だけだが。
ティナは今五歳で、七歳から六年間国立の小学校に通い始める。(すでに兄のリュオは通っていて、今は四年生になる。)そのため、六歳から貴族の子供達は本格的にマナーの勉強を始める。そして、マナーの勉強が始まると、例え家の中でも貴族としての振る舞いをしなければならなくなるのだ・・・。
・・・話を戻すと、ティナがこの屋敷に帰ってきてから父と兄から沢山のプレゼントを貰っている。とても嬉しいし、有難い。ただ、プレゼントの量が異常なのだ。
「ちょっと、あなた?リュオ?可愛いティナにプレゼントをあげたくなるのもわかりますが、いくらなんでも『毎日』沢山のプレゼントをあげるのはよしてください。ティナも困ってしまうし、教育に良くないですわ。」
「・・・わかってる。」
「・・・気をつけます。」
「はぁ、反省してませんわね・・・。」
そうなのだ。このところ、毎日父と兄からプレゼントを貰っていて、ティナの部屋は父達からのプレゼントでいっぱいになっている。母のマリーナは、子供達に立派な大人になって欲しいと、断りづらいティナに代わって注意してくれている。
もし、ティナが前世を思い出していないただの子供だったら、母に余計なことを言うなと思っていただろう。だが、前世を思い出した今はとてもありがたかった。
(普通の子供がこんなに甘やかされたら、とんだ我が儘娘になりそう。全ては私の思いのままになるとか勘違いして。そしたら、完璧に悪役令嬢のできあ・・・がり?)
この瞬間、ティナの頭の中で今まで絡まっていた糸がほどけた。
「あっ・・・」
(私、私は・・・ゲームの悪役令嬢だ。ゲームのラストで必ず死ぬ、悪役・・・。リオンとロセになんか引っ掛かったのは、二人が攻略対象だったからなんだ。それに、リュオお兄様も・・・。)
そう、ティナは前世プレーした『精霊と少女の誓い』略して『精誓』という乙女ゲームの悪役令嬢だったのだ。
悪役令嬢のティアーナは、魔力が比較的高くなるとされている貴族・・・それも公爵令嬢なのにも関わらず、魔力量がとても少なかった。そして、高等学校に入学したティアーナは、魔力量が多く、珍しい光の魔力属性を持つヒロインに嫉妬し、執拗にいじめるのだ。
そして、自分の婚約者であるこの国の第一王子と仲良く話している所を目撃し、怒ったティアーナはヒロインを刺殺そうとする。が、逆に王子に首を切られ死んでしまう。
まぁ、これはヒロインが第一王子を選んだ場合だが・・・。
実際、今のティナも魔力量がかなり少ないので、ゲームのティアーナと状況は一緒だ。
「・・・ィナ?」
「・・・ヒューッ、ヒューッ」
(私、死ぬの・・・?もし、もしもヒロインがリュオお兄様を選んだら、ヒロインと並んだリュオお兄様に冷たい瞳で睨まれて、お兄様が作った氷に貫かれ・・・私は死ぬ。物語ではそうだった。私は、大好きなにーさまに殺されるの?)
「おい!ティナ?大丈夫か!?」
(リュオお兄様じゃなかったとしても、私は攻略対象に殺される?ゲームのように、無惨に殺されちゃうの・・・?)
「っう、やだっ、嫌!そんなのいやぁぁあ!!!」
「「「ティナ(ちゃん)!!!」」」
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