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2章 屋敷での生活
私は私。
しおりを挟むティナは夢を見ていた。少し前に見たふわふわとした物ではなく、どこか不気味で冷たい雰囲気で、だんだんと不安な気持ちになってしまう。
ふと、周りを見てみると、前世プレーした乙女ゲームの様々なシーンが目の前で次々と流れている事に気づいた。ティナは、ある映像の前に立ち止まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ある青年が小柄な少女の肩に手を置き、正面にいる少女を睨み付けている。
「なぜ、なぜ殿下がその女といるのですか!?私のなにが不満なんですの!?」
「・・・ティアーナ、お前が今までミルラにしてきた悪事の数々、今まで目をつぶってきたがもう我慢できない。父上に報告して、婚約を破棄して貰う。」
「っ!何故ですの!その女がいいってことですか!?・・・・あぁ、分かりましたわ。私みたいな出来損ないとは結婚したく無いのですね?自分の子供が私のように出来損ないだったら大変ですもの。」
「・・・そう言う訳ではない。」
「ふふっ。その点、魔力量も多くて、殿下とおなじ珍しい光属性をお持ちのミルラさんなら言うことなしですものね。」
「・・・。」
「・・・許しませんわ。私以外の殿下に愛される存在なんていなくなればいいのよ!!」
「キャーー!!」
ーズシャッ!
「・・・ティアーナ、墓は作ってやろう。最後の慈悲だ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一人の青年が小柄な少女を庇うように、もう一人の少女の前に立ちはだかっている。
「ティナ、いくらなんでも最近やり過ぎだよ?」
「リュオお兄様もその女の肩を持つのですか!?」
「・・・はぁ、どうやら僕は妹を甘やかし過ぎたみたいだ。」
「っ、それはどういうこっ!」
ードシュッ!
「に、様?な・・・ぜ」
「・・・これ以上ルクシール家に泥を塗ることは、次期当主の僕が許さない。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ティナが見ている映像は、一人の少女が男女に問い詰められ、そして殺されていく物だった。
ティナは、その映像を他人事のように眺めていた。
ティナは死んでいく少女を見ながら思った。何故、殺されてしまった少女はどの映像でも苦しそうなのだと。何故いつも泣きそうな顔をしているのだと。そして、何故誰もそんな彼女に気づかないのか・・・と。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ティナは目を覚ますと、自分が泣いている事に気づいた。
「私はゲームのティアーナじゃない。此処は今の私にとっては現実だ。・・・私はあの少女とはちがう。」
ティナは自分に言い聞かせる様に呟いた。
ベッドから起き上がり、伸びをする。長い時間寝ていたのか、身体中の関節がパキパキと音をならした。
「ティアーナ様?・・・目をお覚ましになられたんですか?」
ふと、声がした方を見てみると、花瓶に花を飾ろうとしてくれていたのだろう。手に色とりどりの花を握っているロセと目があった。
「うん、今起きたの。私倒れちゃったんだ・・・。心配かけてごめんなさい。」
ティナは少しでも安心させられればと、ふんわりと笑いながらそうかえした。
すると、ロセは泣き笑いの様な顔をして、手に持っていた花を落としてしまった。
「ティナ、様っ!良かった。目が覚めて、本当に良かった・・・。」
「えっ、ちょっとロセ?大丈夫??」
「こうしては要られません!今すぐ旦那様達にお伝えしなければ!ティナ様、失礼します!!」
ロセはそう言い残し、部屋を出ていってしまった。
(ロセってあんなキャラだったか?)
そんなことを考えつつ、今の状況を探るため辺りを見回した。そして、ティナは自分の周りを可愛らしいお人形達が囲んでいることに気づいた。
「何か、寄宿舎でもこんなことあったな。・・・てゆーか、何でベッドをお人形が取り囲んでるの!?怖っ何これ監視ですか!?うわっ目があったよぉ~」
ティナの悲痛な叫びは誰にも気づかれることはなかった。
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