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2章 屋敷での生活
この思いは(ロセ視点)
しおりを挟む私がティナ様に仕えてから二週間がたった頃、ティナ様に私の秘密を打ち明けようか迷っていた。
私の秘密というのは、私は子供の頃孤児院で育ったということだ。つまり、元平民なのだ。普通元平民の私が公爵様に仕えるなど普通はあり得ないことだ。しかし、旦那様が私を指名してくれた。
そして、ティナ様はその事を知らない。もし私が元平民と知ったら、ティナ様は軽蔑するだろうか。
それはそれで仕方ないと思う自分もいる。ただ、ティナ様に軽蔑の目を向けられたくない自分もいることも確かだ。
おかしい。公爵家に来たときは不安しかなかったのに、今はこの生活を終わらしたくないと思っている。
「はは、何でこんなに怖いんだろ・・・。」
今日は天気が良くて、外でお茶をしようとことになり、私は紅茶の支度をしながら呟いた。秘密を打ち明けることがこんなに怖いことなんて知らなかった・・・。
・・・「やっぱりロセがいれるお茶はおいしいね!」
「ふふ、ありがとうございます。」
ティナ様の笑顔を見ると、心の奥が暖かくなる。付け合わせのパウンドケーキも気に入ったようで良かった。さすがに三枚目を食べようとしたときはとめたけど・・・。
(この生活を終わらせたくない・・・。でも、ティナ様に隠し事はしたくない。)
私は覚悟をきめた。
「・・・ティナ様、私は今まで隠していた事があります。」
いきなり話し出した私に、ティナ様は戸惑った顔をしている。
緊張からか、恐怖からか、体か震えてしまう。
「私は・・・、私は貴族に拾われましたが、元は平民なんです。今まで黙っていて、申し訳ありません・・・。」
拳を握りしめ、ティナ様にそう告げた。
すると、ティナ様はこう言ったのだ。
「だからなんですか?」
私はあの時の衝撃を一生忘れないだろう。
「ティナ様は嫌ではないのですか?元平民の私が。」
ティナ様の言葉がすんなり信じられず、思わずそう返してしまった。
「うん。全く嫌じゃないよ?そもそも、貴族は平民を見下すけど、平民がいるから貴族の私達が暮らせてる訳で、見下すなんてあり得ないから。それに、ロセはお父様に見定められてうちに来たんでしょ?堂々としてればいいの!」
私は、ここにいていいのですか?ティナ様。
「ティナ様・・・」
今、自分がどんな顔をしているかわからない。そして、ティナ様は私に微笑みながらこう言ってくれたのだ。
「それに、私はロセが好きだよ?いつも気を配ってくれて、凄く感謝してるの。」
私にそのような言葉、勿体無いくらいです・・・。
「感謝してるのは、私の方です・・・。」
この日、私は一生ティナ様に仕えることを心に誓った。願わくば、人生も共にしたいと思う私は我が儘なのだろうか。
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