黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第099話 追跡と面会準備⑦

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 ディエヴスがツグナたちに告げたその言葉は、「魔力を用いた術法――つまり魔法については、地球においては目立つことこの上ないので、極力使用は避けるように」という忠告であると同時に、「消費した魔力はイグリア大陸こっちと比べて極端にその回復速度が遅い」環境であるということを示していた。

 例えば、仮に戦闘において魔力を100消費した場合、
 イグリア大陸では「回復速度アップ(HP・MP)」、「回復量アップ(HP・MP)」のスキルがなくとも、1~2日程度で戦闘前の状態にまで回復することができる。

 しかし、地球においては同じ100の魔力を消費しても、1~2日で回復できるのはせいぜい5~10とごくわずかな量でしかなかった。
 ツグナは「回復速度アップ(HP・MP)」、「回復量アップ(HP・MP)」の両スキルを保有しているためまだ条件としてはいいが、この二つのスキルをもたないヴァルハラの面々は相当に厳しい環境に晒されていると言えるだろう。

 もちろん、魔力を回復させる薬を飲めばこのような事態に頭を悩ませることは無くなるだろうが、その薬も無限にあるわけではない。また、作製には薬草を乾燥させる必要があるなど相応の時間がかかるため、いつでも常備されているというわけでもない。

(理想はキリアやリーナの魔法主体で戦うメンバーはもちろん、ソアラやアリアの前衛メインのメンバーもこの二つのスキルを獲得できればいいんだけど……)

 彼がぽろりと心の中に零すように、「回復速度アップ(HP・MP)」・「回復量アップ(HP・MP)」のスキルは、今後も地球で活動するうえで最優先で獲得すべきスキルとも言える。
 このスキルは魔力だけではなく、体力の自己回復力も強化するため前衛メインで戦うソアラやアリアも恩恵を得られる有用なスキルなのだ。
 ただ――

(獲得条件が物凄くシビアなんだよなぁ……)

 ツグナは両スキルの持つ「えげつない縛りプレイ」とも呼べるその獲得条件に、さらに憂鬱な思いを募らせた。彼自身は転生する際にディエヴスからのもらった(というより弱みに付け込んで半ば強請って勝ち取った)「特典ボーナス」により所持していたのだが、同じスキルを持つリリアにその獲得条件を聞いてみたところ、

「確か……回復薬なしで高レベルの魔物との戦闘を行いながら、迷宮で1カ月過ごしていたらスキルが獲れていた気がするな」

 という、「何そのマゾプレイは……」と突っ込みたくなるセリフが返って来たのだ。
 それを聞いたツグナは、この時ばかりは「よくやったあの時の自分!」と自分で自分を褒めたくなる思いがしたのはここだけの話だ。

(スキルの獲得には、条件的にそれなりの時間を要する。だからソアラたちにこの二つのスキルを獲らせるのは、今のところ夏季休暇を利用するほかないか……)

 ツグナは今後の課題として頭の片隅にそれを置きつつ、むくりと身体を起こす。そんな彼に、授業の準備を終えた瑞基と彰彦が声をかけてくる。
「よぉ、朝からグッタリしてたな。ゲームでもしてて寝不足なのか?」
「いや、たぶん妹の亞里亞さんの事じゃないか? 確か、事故で怪我したって聞いたけど……」
 笑いながら原因を推測する瑞基に、隣の彰彦が呆れながら自分の意見を口にする。
「まぁな、彰彦。下校した時に車にぶつかったらしくてな。幸い日常生活に支障は出てないが、大事をとって激しい運動は控えるようにしてたんだよ。事故当時はバタバタしてたけど、状況が落ち着いた今になって疲労が出てるって感じなんだよ」
「あ~、確か亞里亞さんって特進?類のコースだったよね……」
「スポーツ特化のコースか……そりゃあ当人も辛いだろうなぁ……兄としては何かと気苦労が絶えないだろ? 大丈夫か?」
 ツグナの話を受けて漏らした彰彦の言葉に、瑞基も珍しく心配そうな顔を浮かべながら訊ねる。

「まぁ、色々と気になることはあるが、亞里亞のそばにいるのは俺だけじゃないからな。それに、今日からはいつも通りの生活に戻しているし。そんなに心配してもらうほどじゃないさ」
 ツグナは素直に自分を気遣ってくれる二人に笑いながら言葉を返す。ただ、それでもやはり心配であることは変わりなく、「何かあったら言ってくれよ」と告げてチャイムと共に席に戻っていった。

(まぁ……ホントはもう普段通りの生活をしても全く問題は無いんだけどな)
 彼はノートを開きながら、心の中にぽつりと呟く。あの激闘を終えて戻ったアリアは、シルヴィとキリアの処置により、数日後には普段通りの生活に戻っている。
 だが、それでも数日間の療養は必要だったがために「事故に遭った」として学院側に事情を説明していたのだ。

(さて、と。あとは――……)

 教壇に立つ教師の授業を耳にしながら、ツグナは頭の中に浮かぶ女子生徒――御水瀬千陽にどうやってコンタクトを取ろうかと思案し始めた。
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