イマワノキワ -その時に私を呼んでー

たまひめ

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第3章

1話 【待たれたヒーローの誕生】

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 そんな希和の大きな悩みとは別に、一部の人たちの間では、希和の噂が、まるで乾いた大地が久しぶりの雨の恵みを受けた時のように、急激に広まっていった。
 それは、留美の母親が"NPO法人・殺人事件被害者遺族会"の会合で、たまたま隣の席に座った婦人に言った一言からだった。
「念じるだけで、仇を討ってくれる力を持った人がいる。私たちはその方法で犯人を死に追いやった」と。
「それは誰? 誰なの? 教えてっ!」
 婦人はその話に飛び付いてきた。
 彼女もまた、愛しい我が子を殺された一人だった。
 その婦人の切迫した様子に気圧けおされて、
「とても珍しくて、でも一度聞いたら忘れない名前よ」
 婦人は、留美の母親の答えを待ちわびるように、喉をゴクリと鳴らした。
「人が亡くなる間際を、"今際の際"というでしょう? そのイマワノキワさんよ」
 留美の母親は、丁寧に教えた。
「イマワノキワさん?」
「そう。ものすごい能力の持ち主よ。ただし、犯人に仇を討ちたいのなら、自分の命を捧げるくらいの覚悟が必要よ。自分の命と引き換えにできないくらいなら、やめた方がいいわ。もし覚悟が本物なら、イマワノキワさんを真剣に念じれば必ず応えてくれる」
 こうしてこの婦人を通し、希和の噂は瞬く間に広まり、希和はいつしか仇を討ってくれる正義の味方と言われるようになった。
 中には、興味本位で念を送る者もいたが、それは電話の着信拒否と同じで、希和の綺麗な心に届くことはなかった。
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