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第3章
2話 【待たれたヒーローの誕生】
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希和に次の依頼が届くのに、そんなに時間はかからなかった。
それは「三田ケ谷マンション殺人事件」に関するものだった。
事件は、今から九年前、高校を中退して遊び歩いていた当時十七歳だった金持ちの家の少年が、同じ高級マンションに住んでいた若妻を性の餌食としたうえ殺害。さらに傍らにいた生後七カ月の赤ちゃんを、泣き声がウルサイからと、布団を被せたまま放置し、窒息死させてしまったという、これまた残忍な犯行だった。
遺族は当然のごとく"極刑"を望んだが、反省の見られない犯人が供述をクルクルと変え、その内容は、いかにも弁護士に知恵をつけられたような話が多かった。
たしかに、犯人の少年には、金持ちだからこそ依頼できるであろう剛腕弁護士が付いていた。
希和にとって、この事件はある意味、難しい取り扱いを要する案件だった。
なぜなら、被害者の遺族は当たり前のように犯人の反省と極刑を望んでいるが、加害者本人は反省の心など微塵もなく、何より"生きること"に異常に執着していたからだ。
「被害者の方々の苦しみ、遺族の方々の悲しみを思い知りなさい!」
希和は依頼されてから毎晩、犯人の少年に向かって犯行時の被害者の気持ちと声を、音と映像で再現して送信した。
遺族の方々の嘆きや苦しみも、併せて送信することも忘れなかった。
これは、留美の時の失敗から学んだことだった。
この事件に関しては、検察側の死刑の求刑が却下され、一審・二審で"無期懲役"の判決がくだされた。この結果は、加害者側に大金で雇われた剛腕弁護士が付いたお陰だという噂が流れ、国民の間に司法に対する不満が静かに広がっていったのだった。
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遺族は当然のごとく"極刑"を望んだが、反省の見られない犯人が供述をクルクルと変え、その内容は、いかにも弁護士に知恵をつけられたような話が多かった。
たしかに、犯人の少年には、金持ちだからこそ依頼できるであろう剛腕弁護士が付いていた。
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なぜなら、被害者の遺族は当たり前のように犯人の反省と極刑を望んでいるが、加害者本人は反省の心など微塵もなく、何より"生きること"に異常に執着していたからだ。
「被害者の方々の苦しみ、遺族の方々の悲しみを思い知りなさい!」
希和は依頼されてから毎晩、犯人の少年に向かって犯行時の被害者の気持ちと声を、音と映像で再現して送信した。
遺族の方々の嘆きや苦しみも、併せて送信することも忘れなかった。
これは、留美の時の失敗から学んだことだった。
この事件に関しては、検察側の死刑の求刑が却下され、一審・二審で"無期懲役"の判決がくだされた。この結果は、加害者側に大金で雇われた剛腕弁護士が付いたお陰だという噂が流れ、国民の間に司法に対する不満が静かに広がっていったのだった。
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