夢から覚める時間です

くろいぴあすのひと。

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記憶編

雨の日の記憶

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そこからは毎日が忙しかったことを覚えている。

歩くためのリハビリが、覚えた漢字を何度も書かされるような、

そんな気分なのだ。

そんな日々に退屈を感じ、私は病院から出て行こうとしたのだ。

怒られることは承知の上だった。

それでも、外の空気が恋しかった。


*****


・・・本当に脱走してしまった。

久しぶりの外は、少し雨の湿ったにおいがした。

「・・・雨、降るのか・・・」

そう気付いた時にはもう顔に雨水がポツリと降ってきた後で・・・

「・・・帰ろうかな・・・」

いや、今頃私がいないということに気が付かれたかも知れない。

「・・・帰りたく、ない・・・」

でもずっと帰らないわけには行けない。

どうしよう・・・など考えていると、

・・・横断歩道に目が行った。

そこには、私よりも幼く見える少女がいた。

金色の髪で、後ろ姿で顔こそは見えないが・・・

道路で、踊っているようだった。

雨の日だから風邪をひく、

それ以前に道路にいるのは危ない・・・!

私は気付くとその少女の近くに寄っていた。

「危ないよ・・・!」

力一杯叫んだ。

その声が聞こえたのか、その少女は振り返り、こちらを向いて・・・

・・・哂っていた。

「アハハハハハハハハハハハハッ!!!」

そう言って少女は私の両手を引いて・・・

道路に、引きずり込んだ。

「・・・離してっ・・・!」

だが抵抗空しく少女はものすごい力で私の両手を掴んでいる。

いつか車が来て死ぬのだろうか、そう考えていると

上から、

人の影がやってきて、

その少女を押し倒した。

その人は水色の髪で和服を着ていた。

・・・そう。上から落ちてきた人影は荻堂燐その人だったのだ。

「・・・早く帰って!李奈!」

少女が押し倒され手がやっと離れた私に荻堂燐はそう言った。

「・・・でも、今病院に行ったら・・・」

「今なら大丈夫!あなたは叱られたりしない!」

その言葉を聞いて、私は持っている力を振り絞り病院に向かい走っていった。

まだ雨の降っている街中を、走り抜けていった。



「・・・ちょっと、そこの君?」

後ろから呼び止められた。反射的に振り返る。

「・・・なんですか?」

そこにいたのは・・・

明るい色の茶髪、ガラスのような青い目・・・

の、私と同じくらいの年齢に見える傘を持った青年だった。

「君、こんな雨の日になんで傘もささずに外に出てるの?

 ・・・それにその服、入院服だよね?どうして?」

妙に鋭い。何者だろうか?

「・・・何者、ですか?」

思ったことがそのまま口から出た。

「柚希圭。一応警察です。」

・・・衝撃的な一言だった。
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