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記憶編

嫌な予感

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「・・・で、その警察の方が何の用で・・・?」

「今雨降ってるってこと解ってる?」

そう言いながらその青年・・・

というか警察の柚希圭は、私の方に手を伸ばし、傘を差しだす。

「・・・入れっていうことですか?」

「そう。入らないと風邪ひくよ?」

「・・・ありがとうございます。」

その言葉に甘え、そのままその小さめなビニール傘にお邪魔する。

「えーっと・・・

 近くの病院は・・・ああ、向こうだね」

ふと、隣にいる柚希圭という人を見てみる。

体の半分ほどが傘からはみ出て、左半身が濡れていることに気付いた。

「・・・柚希圭さん、ですっけ?」

「圭でいいよ~」

この人こんなふわふわした喋り方するのか。

「・・・圭さん。体出てますけど。」

「ん~・・・あ、本当だ・・・」

気付いてなかったんですか。

この人警察やってて大丈夫なんだろうか。

「・・・もうすぐ病院なので、そのまま走って帰りますよ?」

「仮にも女の子だからね。ちゃんと送ってから帰すよ。」

・・・台詞だけ聞くと少し胡散臭いが、お言葉に甘えて病院まで送ってもらった。



「それじゃあまたいつか、会う時まで。」

ご丁寧に病院の敷地内まで入って送ってくれた。

・・・ああ。そうだった・・・

勝手に病院を抜け出したから叱られるな・・・

など、考えたのは看護士に呼び止められた後だった。

「山本さん!今日のリハビリ頑張ったわね!」

今日の、リハビリ・・・?

私は今日リハビリが始まる前に逃げ出したはず・・・

「・・・あ、いや看護士さん・・・?」

「ああ、今日頑張りすぎて疲れちゃったのね。ゆっくりお休みなさい?」

・・・まさか、私が知らないうちに別の私がいて・・・

なんて、空想をしてみる。

「そうだ!山本さん、言い忘れてたわ」

「・・・何をですか?」

いやな予感がする。

「明日からご両親のご希望でね、

山本さんのカウンセリングが行われることになったのよ!」

いやな予感・・・が、的中したのかどうかわからないな

「・・・わかりました。

 カウンセリングがあるときは呼んでください」

「ええ、わかったわ

 それじゃあゆっくり休んでね」

・・・

「ドッペルゲンガー・・・か。」

病室に戻りながら一人そんなことを呟くのだった。

もしかしたら病室の中に誰かいるのかも、

など思いながらドアを開けても誰もいない。

・・・ああ。無駄に怖がってしまったな。

そう思いながら私は固い布団にくるまって寝るのだった。



ーーー私のいやな予感が、的中してるとも知らないで。

そのカウンセリングが、どう影響を与えるかも知らないで・・・
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