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4話 篭城
しおりを挟む3度目の6月のある日、この日を境に学校に行く事は2度と無かった。
私の生活は一変した。
最初は両親に理由を問いただされた。
朝方に寝て夕方起きる生活をしていた私は両親と顔を合わせる機会が減っていった。
親は部屋に篭ったままで神出鬼没の私と顔を合わせるたびに理由を聞いた。
明確な理由があって不登校になったわけでは無い事は私も分かっていたし、周囲の人間からの期待に耐えきれずにパンクしてしまったのだろうと思っていた。
しかし私は両親にひたすら黙秘を続けた。
「どうして?」
「分からない…(うるさい)」
「なぜ?」
「分からない…(お前らのせいだ)」
両親を毛嫌いするようになった私は一層強く、深く部屋に篭った。
1階から聞こえる和やかな生活音を聞きたくなく、起きている時は常にイヤホンをつけていた。
腹立たしさをかき消すために感情が高ぶるとより一層音量を上げ爆音で耳にかけ流していた。
耳が痛くなろうがどうでも良かったし、いっそ聞こえなくなればいいと思った。
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3年生になってからの生活は酷いものだった。
まずテニス部を辞めた。
もちろんすぐには辞めさせてくれず顧問に渋られたし指導室で理由を問いただされた。
唯一受けた3年の中間テストは全く勉強せずに受けた。
もちろん目に見えて全教科の点が悪かったし今まで見下していたような奴にも軽々追い越されてしまうざまだ。
友達には「十分だろ、元が良すぎたんだ」と励ましてもらったが、そんな風に考える余裕は当時の私には到底なかった。
たった一つのほつれから糸になってしまったセーターのように、私の生活はズルズルと音を立てて崩れ堕ちていった。
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部屋のベッドの上でずっと今の生活に陥ってしまったターニングポイントを復習していた。
間違えを嘆くのではなく淡々と生活を振り返っていった。
それらをまとめて親に言えばきっと納得して理解して自身の過ちも謝ってくれると分かっていた。ただ、そうした所で私の生活が変わる事は無いし何より親が納得するのが許せなかったので私は一層強く黙秘を続けることを誓った。
私に対して声を荒げて自分の価値観を押し付ける父親
涙に顔を汚しながらただこうなったら理由を私に問う母親
平和だった4人家族に突如訪れた負の感情、これに支配されていく両親をいつもバチが当たったと心高らかに眺めていた。黙秘を続ける事は私なりの復讐だった。
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スマートフォン、ゲーム機を一切買い与えられていなかった私には本とオーディオプレイヤーしか無かった。
本は大半が漫画だったが中には親に与えられた小説や親に従順な息子であると偽っていた時に買った小説もあった。それを思い出すとイライラするが気分が落ち着いた時には小説も読んでいた。
親身になって心配してくれた兄と釣りに行って気分転換したりもしたがその帰り牛丼を食べながら将来の事や高校に行けと言われたのはショックだった。兄は優しいままだと思っていたのに。
私には高校や将来を考える余裕など当時は微塵も無かったし、ストレスで自傷や自殺が頭の中を駆け巡り、生きているだけで精一杯だった。
ストレスがかなり溜まっていた時は度々ロープを部屋から垂らして首をかけ、足を離したりもしていた。
しかし5秒ほど経って血管の圧迫で顔が熱くなり視界がブラックアウトしていくとこで毎回死の恐怖に負け、足をつく。
足の届かない所でやっていない時点ではなから死の恐怖に負けているのだが、何度も繰り返した。
ある時から死ぬのが馬鹿らしく思うようになってきた。又憎んでいる家族がのうのうと生きている事に許せなくなった。気分によって私の感情は自殺願望と殺人願望を行ったり来たりしており、その度にロープを張ったりナイフを研いだりしていた。
一度ロープをかける所を母親に見られた事があり1週間ほど諦めたように「生きとったらそれで良い」と言うようになったがそれも7日限りであり、またすぐに尋問や進路の話が始まる。
その時に愛されてない事を理解した
両親は私ではなく優秀な〝私〟という人間を愛したいのだと察した。彼らは3人の優秀な人間を持っている自分自身が一番愛おしいのだ。
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