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3.アイドルになるために頑張ります
3-3.
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目の前にはお父様とお母様。
今日は二人にわたしがアイドルになることを認めてくれるようにお願いする。
しっかりと自分の気持ちを伝えなくては……。
「前に、夢の中でアイドルだったと言ったと思うんだけど、わたしアイドルになりたいの」
「アイドルとは舞台の上で歌って踊る職業だったかな」
「そう。可愛い衣装を着て歌って踊るの」
お父様もお母様も渋い顔をしている。でもここで退くわけにいかない。
「侯爵家の娘が人前で歌って踊るのはなぁ……」
「そうねぇ、レティシアが可愛いのはわかるけれど、仕事としては……」
「家はどうするんだ? 婿をとるんだろう?」
やっぱり簡単には認めてくれないか……。
それでも、丁寧に自分の意思を伝えて応援してもらいたい。
「婿は取ります。ちゃんと家のことはします。勉強も手を抜きません。元々、アイドルはそんなに長くできる仕事じゃないんです。夢の中でもアイドル業と学業は両立させていました」
「長くできる仕事じゃないなら、なおのこと応援はできない」
「時期がくればアイドルは引退して結婚します。レティシアとばれないように活動します」
「そうはいってもなぁ……」
「まずはわたしの歌を聴いてください。アイドルがどのようなものか知ってから判断してください。大きな舞台でのコンサートはわたしの目標でした。どうしても無念を晴らしたいんです。お願いします。どうか私の夢を叶える応援をしてください」
「……まずはレティシアの歌を聴いてはどうかしら?」
「お母様!」
嬉しい。お母様はわたしの歌を聴いてくれるようだ。
「あなたもレティシアの歌、本当は聴いてみたいのでしょう?」
「それはそうなんだが……」
「聴いたら応援したくなるから尻込みしているのでしょう? せっかくレティシアが練習してきてるのよ。聴いてあげましょう」
「お母様……。練習のこと知っていたのですね」
「もちろんです。大好きな読書の時間を減らして音楽室に籠もっていたでしょう。それで、あなたは聴くのですか? わたしは一人でも聴きますよ」
「それはひどいぞ。わたしもレティシアの歌は聴きたい」
「なら決まりね。レティシア、聴かせてくれるかしら」
「はい!」
わたしはお父様とお母様に歌とピアノを聴いてもらう。用意しているのはリネットに聴いてもらったデビュー曲とちょっと切ない恋愛ソングの二曲だ。この恋愛ソングはメロディーラインがきれいで切なくてぐっとくる。ピアノにも良く合う曲だ。
「では、ピアノを弾きながら歌います。今日聴いてもらいたい曲は二曲です。二曲続けて聴いてください」
わたしは鍵盤の上に指を置いた。
集中よ。二人にアイドルの良さが伝わりますように……。
そう願いを込めて鍵盤を叩き始めた。
良い滑り出しだ。歌い始めは丁寧に、けれど明るく人を引きつけるように……。二人に届くように意識して……。
今日は前回よりも少し余裕がある。わたしは二人の反応を見る。表情は悪くない。
少し体が揺れている? リズムに乗ってくれているのかしら。それなら……。
わたしは少しテンポを上げてみる。
うん。二人は曲に乗ってくれている。わたしもさらに気持ちが乗ってくる。声も良い感じに出てるし、気持ち良い。
絶対にここで終わりにはしない。
一曲目が終わる。二人の反応は良かった。
わたしはまぶたを閉じて気持ちを切り替える。
そして、少し控えめな音で二曲目の演奏を始めた。
最初は気持ちを抑えて……。自分で演奏しながらだからか、さらに気持ちが込めやすい。わたしは情感たっぷりに歌い上げた。
二人の反応はどう?
わたしの気持ちが伝わっていますように……。
今日は二人にわたしがアイドルになることを認めてくれるようにお願いする。
しっかりと自分の気持ちを伝えなくては……。
「前に、夢の中でアイドルだったと言ったと思うんだけど、わたしアイドルになりたいの」
「アイドルとは舞台の上で歌って踊る職業だったかな」
「そう。可愛い衣装を着て歌って踊るの」
お父様もお母様も渋い顔をしている。でもここで退くわけにいかない。
「侯爵家の娘が人前で歌って踊るのはなぁ……」
「そうねぇ、レティシアが可愛いのはわかるけれど、仕事としては……」
「家はどうするんだ? 婿をとるんだろう?」
やっぱり簡単には認めてくれないか……。
それでも、丁寧に自分の意思を伝えて応援してもらいたい。
「婿は取ります。ちゃんと家のことはします。勉強も手を抜きません。元々、アイドルはそんなに長くできる仕事じゃないんです。夢の中でもアイドル業と学業は両立させていました」
「長くできる仕事じゃないなら、なおのこと応援はできない」
「時期がくればアイドルは引退して結婚します。レティシアとばれないように活動します」
「そうはいってもなぁ……」
「まずはわたしの歌を聴いてください。アイドルがどのようなものか知ってから判断してください。大きな舞台でのコンサートはわたしの目標でした。どうしても無念を晴らしたいんです。お願いします。どうか私の夢を叶える応援をしてください」
「……まずはレティシアの歌を聴いてはどうかしら?」
「お母様!」
嬉しい。お母様はわたしの歌を聴いてくれるようだ。
「あなたもレティシアの歌、本当は聴いてみたいのでしょう?」
「それはそうなんだが……」
「聴いたら応援したくなるから尻込みしているのでしょう? せっかくレティシアが練習してきてるのよ。聴いてあげましょう」
「お母様……。練習のこと知っていたのですね」
「もちろんです。大好きな読書の時間を減らして音楽室に籠もっていたでしょう。それで、あなたは聴くのですか? わたしは一人でも聴きますよ」
「それはひどいぞ。わたしもレティシアの歌は聴きたい」
「なら決まりね。レティシア、聴かせてくれるかしら」
「はい!」
わたしはお父様とお母様に歌とピアノを聴いてもらう。用意しているのはリネットに聴いてもらったデビュー曲とちょっと切ない恋愛ソングの二曲だ。この恋愛ソングはメロディーラインがきれいで切なくてぐっとくる。ピアノにも良く合う曲だ。
「では、ピアノを弾きながら歌います。今日聴いてもらいたい曲は二曲です。二曲続けて聴いてください」
わたしは鍵盤の上に指を置いた。
集中よ。二人にアイドルの良さが伝わりますように……。
そう願いを込めて鍵盤を叩き始めた。
良い滑り出しだ。歌い始めは丁寧に、けれど明るく人を引きつけるように……。二人に届くように意識して……。
今日は前回よりも少し余裕がある。わたしは二人の反応を見る。表情は悪くない。
少し体が揺れている? リズムに乗ってくれているのかしら。それなら……。
わたしは少しテンポを上げてみる。
うん。二人は曲に乗ってくれている。わたしもさらに気持ちが乗ってくる。声も良い感じに出てるし、気持ち良い。
絶対にここで終わりにはしない。
一曲目が終わる。二人の反応は良かった。
わたしはまぶたを閉じて気持ちを切り替える。
そして、少し控えめな音で二曲目の演奏を始めた。
最初は気持ちを抑えて……。自分で演奏しながらだからか、さらに気持ちが込めやすい。わたしは情感たっぷりに歌い上げた。
二人の反応はどう?
わたしの気持ちが伝わっていますように……。
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