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【ハニ×カミ のカ からあげちゃん】
ーP2ー
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はにわ は、毎日ボクのところへ来た。
ひとしきり笛の練習をした後、ボクを巻き込んで遊ぶ。
人間の遊びに興味は無かったが、やってみると意外に楽しい。
ただ、神の子であるボクを ”鬼” と呼んで逃げ回るのはどうかと思う。それに、見通すことが出来るボクとでは「かくれんぼ」というのは勝負にならない。
タイヤの付いた板 ースケボーというらしいー に乗せられて、緑地の下り坂で背中を押された時は、罰を与えてやろうかと思ったが。
一人で街を見渡している時、つい気になって はにわ を確認するようになった。町で一番元気な はにわ。 夏休みは毎日走り回っていたのだろ。その肌は褐色に染まっている。
町の全てを見通すことが出来るボクは、ここから出る必要が無い。そんなボクに はにわ は、一緒に色んな所へ行きたいと言い出した。
断っても、はにわ は引き下がらない。二人で勝負をして はにわ が勝ったら一緒に遊びに行くことを約束させられた。
そんな条件を飲む必要もないのだが、人間の子供が思いつくような勝負。神の子の力を使えば負けるはずがない。
しかし…
「それロン!国士無双!!」
麻雀という遊びは知っていたし、見通す力があるボクが有利なはずだった。しかし、人間の作ったゲームという機械。仕組みがどうなっているか全くわかららない。神の力を振るうことも出来ずに完敗。
日曜日、約束通りボクは はにわ と一緒に遊びに行くことになった。
迎えに来てくれた はにわ を見て、思わず笑ってしまう。頭には工事用ヘルメット、手にはオモチャのつるはし。市内にある荒れ地を、一緒に探検すると言う。
荒れ地の奥に、ひっそりと大きな石が置かれている。これは、ボクがこの町の木に住むようになる前、別の神の子が住んでいた場所。
その周りに置かれている物を見て、はにわは、お宝発見と目を輝かせた。
それは、埴輪。
当時、この森やそこに住む人間を守っていた神の子。人間もまた、神の子を護りたいという想いを込めて埴輪を作り、石の回りに並べた。
この町の埴輪について教えると、はにわ は目を輝かせて言った。
「じゃぁ、あたしもフィガの為に埴輪を作るね」
神の存在を季節のイベント程度にしか意識されなくなって久しい。多くの神の子が人に忘れられ、人を見限った。それはボクも同じ。諦めかけていたボクの心に、はにわの言葉が強く刺さった。
夕方、はにわは蚊に刺された腕をかきながら、コンビニに立ち寄る。
「お腹空いたよね、今日はあたしがご馳走しちゃう」
神の子のボクに、空腹なんてものはないのだが。
店内で、おすすめの食べ物をボクに教えてくれる。しかし、ボクが見えない店員には、大きな独り言にみえるだろう。はにわ は、そんな視線を意に介さず、食べ物を楽しそうに選ぶ。
はにわは、『からあげちゃん』というものをボクにくれた。鶏肉を油で揚げた物。褐色で、サクサクとした楽しい食感。そして、口の中に広がるうま味。
それはまるで、はにわの元気で楽しい性格を、食べ物で表現したかのよう。
からあげちゃんを頬張るボクが、よほど嬉しそうに見えたのだろう。その後も はにわ は、ボクに色んな食べ物を持って来てくれた。そして、ボクが人間の食べ物を口にするのを見て、笑う。
「甘い物としょっぱいものしか食べられなくて、野菜も嫌いって子供みたい」
そもそも神の子にとって、食べることが不要だというのに。
ひとしきり笛の練習をした後、ボクを巻き込んで遊ぶ。
人間の遊びに興味は無かったが、やってみると意外に楽しい。
ただ、神の子であるボクを ”鬼” と呼んで逃げ回るのはどうかと思う。それに、見通すことが出来るボクとでは「かくれんぼ」というのは勝負にならない。
タイヤの付いた板 ースケボーというらしいー に乗せられて、緑地の下り坂で背中を押された時は、罰を与えてやろうかと思ったが。
一人で街を見渡している時、つい気になって はにわ を確認するようになった。町で一番元気な はにわ。 夏休みは毎日走り回っていたのだろ。その肌は褐色に染まっている。
町の全てを見通すことが出来るボクは、ここから出る必要が無い。そんなボクに はにわ は、一緒に色んな所へ行きたいと言い出した。
断っても、はにわ は引き下がらない。二人で勝負をして はにわ が勝ったら一緒に遊びに行くことを約束させられた。
そんな条件を飲む必要もないのだが、人間の子供が思いつくような勝負。神の子の力を使えば負けるはずがない。
しかし…
「それロン!国士無双!!」
麻雀という遊びは知っていたし、見通す力があるボクが有利なはずだった。しかし、人間の作ったゲームという機械。仕組みがどうなっているか全くわかららない。神の力を振るうことも出来ずに完敗。
日曜日、約束通りボクは はにわ と一緒に遊びに行くことになった。
迎えに来てくれた はにわ を見て、思わず笑ってしまう。頭には工事用ヘルメット、手にはオモチャのつるはし。市内にある荒れ地を、一緒に探検すると言う。
荒れ地の奥に、ひっそりと大きな石が置かれている。これは、ボクがこの町の木に住むようになる前、別の神の子が住んでいた場所。
その周りに置かれている物を見て、はにわは、お宝発見と目を輝かせた。
それは、埴輪。
当時、この森やそこに住む人間を守っていた神の子。人間もまた、神の子を護りたいという想いを込めて埴輪を作り、石の回りに並べた。
この町の埴輪について教えると、はにわ は目を輝かせて言った。
「じゃぁ、あたしもフィガの為に埴輪を作るね」
神の存在を季節のイベント程度にしか意識されなくなって久しい。多くの神の子が人に忘れられ、人を見限った。それはボクも同じ。諦めかけていたボクの心に、はにわの言葉が強く刺さった。
夕方、はにわは蚊に刺された腕をかきながら、コンビニに立ち寄る。
「お腹空いたよね、今日はあたしがご馳走しちゃう」
神の子のボクに、空腹なんてものはないのだが。
店内で、おすすめの食べ物をボクに教えてくれる。しかし、ボクが見えない店員には、大きな独り言にみえるだろう。はにわ は、そんな視線を意に介さず、食べ物を楽しそうに選ぶ。
はにわは、『からあげちゃん』というものをボクにくれた。鶏肉を油で揚げた物。褐色で、サクサクとした楽しい食感。そして、口の中に広がるうま味。
それはまるで、はにわの元気で楽しい性格を、食べ物で表現したかのよう。
からあげちゃんを頬張るボクが、よほど嬉しそうに見えたのだろう。その後も はにわ は、ボクに色んな食べ物を持って来てくれた。そして、ボクが人間の食べ物を口にするのを見て、笑う。
「甘い物としょっぱいものしか食べられなくて、野菜も嫌いって子供みたい」
そもそも神の子にとって、食べることが不要だというのに。
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