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翌朝、キースは朝早くに目が覚めた。
夜更かしした割にスッキリとした目覚めだった。

早々に着替えをし、荷物をまとめた。

部屋を出て食堂に向かうとそこにはすでにテオーリオがいた。

「おはようございます。早いですね」

「おはよう。テオこそ早いな」

「僕はいつもこのぐらいですね、ラジィはもっと早いですよ」

「へぇ~意外だな」

キースが何気なく呟くと、ドアの方からラジィの声がした。

「意外とは何だよ。朝飯食べるだろ?」

「ラジィが作ったのか?」

「まさか。テルマが作ったよ。僕は野菜を収穫するから早起きなんだ」

「そうなのか。失礼、失礼。朝飯いただきます。テルマの作った飯は美味いからしっかり堪能しないとな」

「その旨いご飯は僕の野菜のおかげでもあ~る」

ラジィはニヤッとして、厨房に消えていった。

キースは、ははっと笑い、それから無意識に周りをキョロキョロして探した。
テオはそれに気付き、

「テルマさんですか?テルマさんは多分そろそろ戻ってくると思いますよ」

「あ、あぁ。何処か行ってるのか?」

「いえいえ、テルマさんは眠らないので、夜通し何かしらをしてるんです。内容は毎日違うので何とは言いにくいのですが…あぁほら、戻ってきましたよ」

そう窓の外を見て言った。
キースもつられて窓の外を見ると、テルマがご機嫌に戻ってくる姿があった。

昨日の夜は酒に強い、色気に溢れた姉御のような印象だったが、今は年若い働き盛りの溌剌とした女性に見えた。
そもそも初対面の時は中性的な雰囲気だったし、テルマはいったい………???

キースは密かに頭を抱えた。

テルマは窓から元気な声で挨拶をした。

"おはよう!みんな早起きだね。朝ご飯は食べた?"

「まだです。これからいただきます」
「今から~」

慣れた様子でテオは返事をし、ラジィも配膳をしながら答えた。

「テルマさん、おはようございます。昨夜は何作っていたんですか?」

「ふふふ。学校だよ~。子供の数が増えたから学び舎が必要だからね」

テルマは楽しそうに学校の建物のこだわりとかについて説明を始めた。

ふんふん、なるほど、へぇ~そうなんですねなど、テオが相槌を打っているが、キースにはよくわからなかったから聞き流していた。

「テルマ、中入れば?」

配膳を終えたラジィがテルマに声を掛けた。

"ははっ確かに"

テルマが玄関へと足を向けた。
テルマは食堂に入るなりキースの側にやってきて、

"そうそう、昨日渡しそびれた物があるんだった。夜中思い出してね~"

と、テルマはキースの額に手を当てた。

"キース、クレードの名と共に加護を与える 信念を貫け"

キースの身体が光を放ち、収束した。

「な、な!?何?えっ?…クレード?…えっ?」

"そっ、君はキース・クレードと名乗るがいい。その名を名乗る間は私の加護を与えよう"

「加護?」

"そう、まぁ、精霊がちょっと扱いやすくなる程度だがな。対価は私の頼みを聞いてくれればいい。仕事だよ"

「えぇぇ……」

"まぁまぁ、悪いもんじゃないから。まぁ頼みって言ったってあっちの食料品とか衣料品とかを手に入れてほしいってぐらいだよ"

「………」

"えっ?テオから聞いてない?仕事あるって"

「いや、それは聞いたけど…」

"加護を与えた対価はその仕事。まっ色々とやりやすくなると思うよ。よろしくね"

「わかった…。有難う」

"ふふふ"

テルマがニヤニヤしているとちょうど子供たちが起きてきて、ぞろぞろと階段を降りてきた。

「おはよー」
「おはよー」
「……zzz」
「ほら、おきて。おはようだよ」

"みんな、おはよう"

そのタイミングで厨房からラジィが朝食の追加分がワゴンに運んできた。

「おっ、いいタイミングだな!さぁ、みんなで朝飯にしよう」

部屋には美味しい匂いが立ち上り、部屋にいるテルマを除く全員の空腹を刺激した。
昨日よりも少しバリエーションの増えた食事に子ども達の目がキラキラした。

「あ~。今日も色々あるー!」
「たまごがふわふわだよ!」

「キース、キース、たべよーよ」
「えー!キースはここ!ぼくのとなり」
「ずるーい!わたしもキースのとなりがいいー」

子供たちが一気に覚醒し、たちまち部屋が賑やかになった。

「わかったよ、ほら、仲良く皆で食べよう」

キースがやれやれと子供たちの輪に入っていき、
テオとラジィも子供たちに手を引かれ皆で朝食を食べた。

キースは窓際からその様子を楽しそうに見ていた。

「ねぇねぇ、テルマさんは食べないの?」

子供たちのうち一番の年長者の女の子がテルマのそばに来て聞いてきた。

"ふふふ、実はね、私はものすごく早起きしちゃってもう食べちゃったんだよ。だから今はいいんだよ。あぁ、でも、コーヒーを飲もうかな。一緒してもいいかい?"

「うん!テルマさんは私のとなりね!」

満面の笑みでテルマの手を引き、席に連れて行った。

テルマが座ると、ラジィがコーヒーを差し出してきて

「はい、テルマ。テルマも気を遣うんだな」

と意外そうな顔してボソッと呟いた。
テルマは呆れた顔をして、

"まったく、私を何だと思っているんだ。私はいつも優しいよ"

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