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食堂に着くと、そこはたくさんのテーブルと椅子が並んでいた。

「レストラン?」
ファルコンがラジィトに聞くと、ラジィトは首を振り、

「残念ながら、ここはまだ働く人が居ないからご飯は作れないんだ。いつかテルマがレストランにしてくれるかもな。まっ今日は持ってきたお弁当があるからいいよな?」

ファルは元気に「うん」と頷くと、早く食べようとラジを引っ張った。

天気が良かったので、テラス席で食べることにした。
テオとソフィが運んでくれたピクニックバッグを広げた。

色々な具材が挟まれたサンドイッチや色とりどりのおかず、
1番人気のカラアゲもたくさん入ってる。

「おなかすいたー」
「早く食べようよぉ」

アウルとホークが待ち切れないと駄々をこねた。
それを聞いたラジィトはニヤッとし、2人に向かい、

「お前達さっきまでもっと遊ぶーって言ってじゃないか」

2人は顔を見合わせ、素知らぬ顔で

「えー?言ってないしぃ~」
「僕も知らなーい。ラジ兄ちゃん誰かと間違えてない~?いただきまーす」

「なっ、なっ、なっ」

思わぬ反論に言葉を失ったラジィトを横目に2人はサンドイッチや唐揚げをパクっと口に放り込んだ。

その様子を見ていた他の子供たちもクスクスと笑い、次々に食べ始めた。

いつもと環境が違うからか、いつもよりもさらに賑やかな昼食になった。しばらくすると、ガーデニアが泣きながらテオーリオとラジィトの元にやってきた。

「テオ兄ちゃ~ん、ラジ兄ちゃ~ん」

「どうしましたか?」
「なんで泣いているんだ?」

「ひっく…なんかねぇ、私がねぇ、ひっくひっく…」

ガーデニアがしゃくり上げながらした拙い説明を要約すると、どうやらガーデニアがサンドイッチを食べようとすると、ウサギやリスが奪っていって全然食べられないらしい。

テオとラジの隣にいたソフィが辺りをキョロキョロしながら、

「ウサギ?リス?どこにいるんだい?」

と、不思議そうな顔をした。

アウルとホークもソフィと一緒に辺りを見回していた。

「いないよ?」
「どこにいるんだ?」

その声にガーデニアなプンプンと自分の膝を指差した。

「ここだよ、ここ、ほら、私の膝の上に乗っているよ」

ソフィは顔を近づけ、

「なんもいないようにみえるけどねぇ」

ガーデニアが目に大粒の涙を溜め、泣くのを我慢しながら必死に反論した。

「い゛るも゛ん…」

ガーデニアの頭にポンッと手が置かれ、その手が頭を撫でた。

「いるんだよ。なんだまだお前ら視えないのか~。まだまだだな」

と、声の主、ラジィトがニヤッとした。
その言葉にアウルとホークがぶぅっと頬を膨らませた。
陰でこそっと聞いていたカイトに至っては今にも泣きそうな顔をした。

「こらこら、ラジ、言い方気を付けないと」

テオーリオが助け舟をだした。
テオーリオに窘められたラジィトは肩を竦めた。

「へいへい」

「アウル、ホーク、カイト、気にしないで。魔力持ちの人は精霊に関しては心技体が揃って、かつ、慣れていないと視えないそうですよ。」

「心技体?」

カイトが聞き慣れない言葉に首を傾げてテオーリオに聞き直した。

「そうです。テルマさんの世界の言葉らしいです。心技体。心の健康と体の健康と、技術のバランスが全て整ったとき、最大限のパフォーマンスが発揮できるようになるらしいですよ」

カイトは腑に落ちない顔をして、テオーリオに聞いた。

「僕たち健康になったよ?」

テオーリオが答える前にラジィトがひょこっとテオの肩から顔を出し、

「いーや、お前たちはまだまだ健康にならなきゃいけないんだよ。アウル、ホーク、お前は野菜をもっと食べなきゃな。カイトは量が少ない!もっとたくさん食べられるようにならないとな!ほら、もっと食べて遊ぶぞー!」

そう言うと、ラジィトは食事中の輪に戻っていった。

「やれやれ…」

テオーリオはラジィト達の背中を見送り、ガーデニアとソフィに
「さぁ、僕たちも食べましょう」

と促した。ニーサがボソッと

「私もどこか健康じゃないのかね?」

テオーリオは頬に手を当てて
「ソフィさんは慣れじゃないですかね?テルマさんのいうところの技術の部分は子供のほうが環境の変化に慣れるのは早いみたいなので」

「そんなもんかねぇ」

ソフィはなんとなくわかるようでわからないモノを飲み込むようにサンドイッチをパクリと食べた。

賑やかな昼食を終え、午後は公園内から出ないことを約束に各々が気になる所へ自由に行動することに決めた。

「やれやれ、子供は元気だねぇ」

ソフィが食後にお茶を飲んで一息ついていると

"ほぉ~見事に分かれたねぇ"

と声がして、

「おや、テルマさんかい?どういうことだい?」

ソフィが振り返ると少年のような姿をしたテルマがふわっと舞い降りてきた。

"魔法にも精霊にも属性があるんだよ。ほら、水場で遊んでいる子達はみんな水属性の適性がある子ばかりだ"

「属性…」

"ソフィ、あなたは料理を作るのは得意だろう?"

「ん?あぁ、料理は得意だね」

"それはあなたが1番火属性の魔力を得意としているからだよ"

「えっ?そうなのかい?私も魔法が使えるのかい?」

ソフィは全然ピンときていない様子だった。

"ふふっ"

テルマは指をクルっと回し、腕輪を作り出した。

"これをつけてごらん"

腕輪を渡されたソフィは訝しげながらも腕に腕輪を着けた。

すると、指先がほんのり赤い色をしていた。

「こ、これは」

"これが魔力。あなたの指先が赤い光を宿してる"

そして、ソフィの周りに赤い小さな光が漂っている

"これは気、これが練成されると精霊になる。あなたは魔力持ちだから精霊は扱えないけどね"

"赤は火、火に適性がある"

"あなたの性格はまさに火性の人だ。"

「なるほど…。わかったようなわからないような…。コホン、それはさておき、テルマさん、なんでそんな姿なんだい?」

テルマは運動着の様なラフな服装をしていた。

"それは、もちろん!遊ぶ為だよ!いつもの姿は動きにくいからね!"

「ははっ、テルマさん元気だねぇ」

"子どもは元気の塊だか…………"

テルマは何かを察知した様に急に空を見上げた。

"………行かなきゃ…"

「えっ?」

"キースの命が消える…"

そう言い残してテルマは消えた。
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