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気球の中は無言だった。

テオーリオもラジィトもせっかく見えた希望がすっかり萎んでしまったようで籠の中で小さく丸くなっている。

それでも気球は進み、やがて鳥が旋回しているポイントまで辿り着いた。

気球の高度を低くし、地面から少し浮いたところで固定した。

"2人はまだ降りないでね。私が見てくるよ"

テルマは気球から降り、地面に降り立った。
地面に触れ、探索するように魔法の糸をを蜘蛛の巣状に放った。

"よかった。毒とか瘴気とかはないね。ただただ乾いてるだけだ。これなら…"

乾いた地面にプレハブをイメージして四角い箱を作り、内装を整えた。といっても、柔らかく寝心地を良くした寝床を作っただけだが…

パチンと指を鳴らして2人を浮かせ、呼び寄せた。

「うわっ」「わわっ」

慌てる2人の声がどんどん近づいてきた。
ふわふわ浮かぶ2人を今しがた作った寝床にそれぞれ優しく降ろした。

"よし、これで寝られるね。とりあえず今日は寝よう。オヤスミ"

「えっ?あっ?ちょっ…………すーっ」
「へ?………………………ぐぅ」

有無も言わさず2人の目元に手をやり目蓋を閉じ、眠りにつかせた。

テオーリオとラジィトは共によく寝ている。

よっぽど疲れていたんだろうな。
気を張っていただろうし。

明日からのこと、どうしようかな…
んー…とりあえず私も寝ようかな。
考えるの疲れたし…

テルマも寝台に横になった。
目を閉じ、いつものように眠りにつく………はずだった。

ん?

………眠くない…?
こんなに疲れて………ないな?

あれ?なんで?

………

あっ…そっか~、私言ってみりゃ幽霊じゃん

えっ?幽霊って寝ないの!?
嘘っ、誰か……って誰も知るわけ無いか。

はぁ…マジか…
惰眠をむさぼるのが唯一の趣味だったのに

はぁ~

寝台でモゾモゾしていたが、どう足掻いても全然眠くならないので、テルマは外に出ることにした。

外に出て、伸びをすると、自然と姿が慣れた大人サイズになった。やっぱ長年親しんだものがあるんだろうな。

ドサッと地面に寝転がり、空を見上げた。
満天の星空が、でも、知ってる星空とは確実に違う星空が広がっていた。

"あーあ。なんでこんなことになっちゃってるんだろうなぁ…"

あちらの世界では…もう、ちゃんと死んでるから心配いらないはず。時間の流れがわからないけど…

私の~お墓の~前で~
そこに私は~いません~

そんな歌があったね…ははっ

これからどうしたらいいんだろう…、いや、どうするか
決めないと。

1人なら当てもなく彷徨っていただろうけど、あの子達がいるしね。

テルマは元来お人好しな上に、無責任に放置する、見て見ぬふりをすることが苦手であった。

ふぅ~やれやれ。

とりあえずテルマは現在の自分の状態を把握することにした。
むしろ、それぐらいしかやることがなかった。

やることを決めたので、テルマはすくっと立ち上がり、手をグーパーグーパーした。

"魔法…使えるんだよね"

さっきまでは必死だったからなんとなくだったけど、ちゃんと把握したい。

生前、幼少期から仕組みを考えるのが好きだったこともあり、魔法新しいものを手に入れたことを改めて意識すると体がウズウズしてきた。

幸いにもここは荒野。
プレハブを除いたら人も生き物も建物も何も無い。

"ふっふっふっ………いっちょ、やったろうかー"
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