叡知の夢

松本羊平

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同の章

氷、透き通る水 前編

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麻綾(元春の活躍もあって朱雀に憑依された亜樹を退けた叡知と彩夏。一方、騰蛇の脅威で中宮府を離れた亜里沙と美樹は、中宮府と戌亥町の中継地点である純高知の水晶堂に身を寄せていた。)

麻綾(亜里沙の水晶を通しての幻視(ヴィジョン)の見解は評判が良く、一般人や外国人は勿論、セルフ界に転移してきた異邦人、果ては大和の富裕層や著名人から支持され、大和国内でも指折りの人気を誇っていた。)

麻綾(だが、当の亜里沙は高次元の精神性とガラス細工のような繊細さを考慮した旦那が、人が多い国際都市山海(丑寅町と卯町)を避けて、田舎の純高知に隠れ家のように構えたのだった。)

麻綾(美樹が水晶堂を訪れて2日目。)

亜里沙「ここでの暮らしは慣れましたか?」

美樹「うん♪亜里沙の旦那さんも良い人だし、何より落ち着いた雰囲気だよね♪」

亜里沙「それは何よりです。」

美樹「それじゃあ、ちょっと運動に行ってくるね。」

麻綾(そういうと美樹は水晶堂を出る。その直後に、亜里沙は水晶室に入って、水晶と向き合い、幻視(ヴィジョン)を行う。)

亜里沙(叡知の方は、朱雀に憑依された亜樹の襲撃を受け、叡知の剣が叩き折られるも、元春の機転で退け、時間稼ぎに成功。)

亜里沙(相手が態勢を立て直す前に、私と対面して、女宿曜星(うるきぼし)の紋章を刻んでおきたい所でしょうが、彩夏に委ねているなら、今日の陰の刻にでも来そうですね。すぐにでも刻むとしましょう。)

亜里沙(一方、叡知と別行動を麻綾は、白虎に憑依された美里は魔獣族の牽制のため、彰を説得を試みましたが、失敗したようですね。)

亜里沙(となると、桃矢の説得に赴くでしょうね。桃矢は血気に逸る所がありますが、亜矢、一樹が動いてくれれば、大丈夫でしょうが・・・。)

亜里沙(問題は、麻綾が叡知を思い過ぎる余りに強引な手段に出る危険性がありますね。桃矢を苛めて他派閥から反感を買う恐れは勿論ですが、何より厄介なのは、諸々の問題を考慮すると合流出来るのは早くて2020年の6月下旬か7月の上旬。)

亜里沙(如何に叡知が実力の根源を取り戻し、且つ天后から金剛峯鏡を所持していても、厳しいかもしれませんね。)

亜里沙(それ以外の宿曜師の動きは・・・。)

亜里沙(鋭気と仁は幻妖族に追い詰められるも、大コスモス帝国のルーン製の武器の精製の修行に出ていた利沙が帰国と同時に2人を救出。酉町と戌亥町の交通の要所の狐狸の祠周辺の集落にある伝国堂に籠もって応戦。)

亜里沙(叡知にとっての遠距離かつ暗黒期間の宿曜師(美緒、康史、理英、吉平、香里、達哉、智恵)は、美緒は天空に憑依。吉平は勾陳に憑依。智恵は玄武に憑依。隣接する宿曜師は進退窮まり、それぞれの近しい宿曜師の側についたようですね。)

亜里沙(その中で、司龍は踏みとどまり、駆け付けた美言と共に、戌亥町と子町にあるOGHAM(オガム)海洋公園を怪魚族から死守しているものの、利沙達と比べて劣勢・・・。)

亜里沙(すぐにでも駆け付けたいですが、先ずは朱雀に憑依された亜樹ら怪鳥族を何とかしないことには・・・。)

亜里沙(大和の秩序の崩壊や時間の経過でより強大になる六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)のことを考慮すれば、相性の優位性を旨く利用・・・そう、安・壊の相性の三つ巴の状態に・・・。)

麻綾(安・壊の相性の三つ巴・・・それは亜里沙派(保守派)、鈴夜派(革新派)、叡知派(中立派)と3つ派閥に分けて、牛宿曜星の宿曜師の勇樹と六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)を攻略するという構想を亜里沙は描き始める。)

亜里沙(とは言え、鈴夜が私の話等聞く耳を持つ訳もありませんし、例え思惑通りに進んだとしても、相性の兼ね合いで、叡知と彩夏は別行動になり、美樹と真悟の交渉に少々手間取るでしょう。)

亜里沙(すると、朱雀に憑依された亜樹は、元春が与えたダメージも回復し、恕を我がものにし、SAIVIAN(サビアン)天文科学館から程近い、大和図書館の鈴夜のもとに向かい、引いては午町にあるSYBILLA CLUB(シビラクラブ)にいる真悟のもとに向うでしょうね。)

亜里沙(しかも最悪なことに、あの3人は、事ここに及んでなんの行動も起こしていないようですね。)

亜里沙(もし、朱雀に憑依された亜樹を真悟のもとに向かわせてしまえば深刻な事態になります。彩夏と元春には、早急にSAIVIAN(サビアン)天文科学館に向かってもらい、叡知の交渉の時間稼ぎをしてもらう必要があります。)

亜里沙(その上で、美樹との交渉は私がお膳立てし、真悟との交渉の場に桃矢、亜矢、一樹がいれば或いは・・・その場合は、私と美樹が御霊神宮に向かって、時間稼ぎをすればなんとかなりそうですね。)

麻綾(亜里沙が思案に暮れていると、美樹がある人物を連れて来る。)

亜里沙「一樹ですか、久しぶりですね。」

一樹「久しぶりだな亜里沙。ちょっと近くを通ったからよって見た。」

亜里沙「ちょうど良かった。私はこれから叡知達(彩夏と元春)と対面しますので、貴方達は少し席を外してくれませんか?」

美樹「えぇ美樹も・・・。」

一樹「ほら行くぞ美樹。」

麻綾(一樹は美樹を連れて、その場を去る。)

亜里沙(さて、叡知の状態を考慮すれば、凌犯期間(2019年7月9日(火)から2019年7月31日(水))中、7月17日(水)の満月の日を目処に叡知を飛星道場で実力(レベル10)までには引き上げる。)

亜里沙(真悟との交渉を7月25(木)の下弦の月までに達成出来れば、相性の上では鈴夜から恕と行き着いて、彩夏と合流して朱雀に憑依された亜樹に挑めますね。)

亜里沙(出来れば、妖魔の力が発揮出来ない新月の日が望ましいですね。しかも、8月1日(木)は、凌犯期間と水星の逆行が終わるタイミング。如何にして、朱雀に憑依された亜樹の関心を叡知から逸らすかが重要ですね。)

麻綾(亜里沙は幻想(ヴィジョン)を元に計画を立てて、叡知達(彩夏と元春)の来訪を待つ。7月9日(火)の陰の刻。叡知は彩夏と元春を伴い、亜里沙を尋ねてを目指す中。)

叡知「叡知の剣が・・・これは、利沙に殴られそうやな。」

彩夏「・・・プハ☆確かに、ルーン製の武器って莫大な資金と良質な金から錬金したオリハルコンを持って、大コスモス帝国のルーンに行かないと精製出来ないことを考慮すると、大和の民の血税で精製されるに等しいもんね。」

元春「だからこそ、利沙はルーンの地に赴いて、大和式ルーン製の武器の精製を考案した。これなら、オリハルコンさえあれば、出費を抑えつつ、何よりルーンの地まで行かなくて良くなるのは有難い。」

元春「尤も、ルーン製の武器を扱う上で、最低限の実力(レベル40)かつ実力の根源で、血液型、年干支、生まれた曜日が不可欠だがな。さらに、真価を発揮するとなると、日干支や指紋も必要だが、今は鋼鉄の剣が扱える実力(レベル10)までは立て直さないとな。」

彩夏「まあまあ、それまで戦闘はあたいと元春でどうにかすれば良いさ。まあその前に、亜里沙に会って、女宿曜星(うるきぼし)の紋章を刻まないね。」

叡知「亜里沙か・・・可愛いけど、星空学園の頃は誰とも連まず、保健室におった印象しか無いな。」

麻綾(叡知は彩夏と元春に感謝しつつも、現状自分自身が戦闘面で足を引っ張っていることが悔しくて仕方無かった。)
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