『有意義』なお金の使い方!~ある日、高1の僕は突然金持ちになっちゃった!?~

平塚冴子

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ハードで楽しい深夜のお仕事

第7話

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 図書室に入ると昼の賑わいとうって変わって、ひっそりと静まり返っていた。

 薄暗い受付に座って端末入力をしている早川さんに声を掛けた。

「早川さん。あの…。」
「ああ、有村君。
 もう少しで終わるから待ってて。
  図書室は基本、私語厳禁だからこっちの控え室へどうぞ。」
「ありがとう。」

 とは言え、室内には図書委員3人しかいないんだけど。

 受付の裏側にある扉を開けて早川さんが入れてくれた。
 そこは結構小さな部屋でパイプイス2つと小さなテーブルとその上にパソコンがあるだけだった。
 
「本当の控えだけの部屋だなぁ。」
 
 おそらく以前は倉庫で書類の棚とかあったんだろう。
 今はパソコンでまかなえるから、不要な物を捨てた結果、こうなったという感じかな。
 
 お茶やお弁当食べるには丁度いいかな。
 パイプイスに腰掛けて辺りを見回したが白い壁と小窓だけで特に何もなかった。

 コンコン。

 控え室の扉をノックして早川さんが入って来た。

「お待たせ。…でもないかな。」
 
 肩をすくめて早川さんはパイプイスに腰掛けた。
 お茶はないけど、缶ジュースなら先生からの差し入れであるけど…。

「あ、いえ大丈夫です。
 パソコンにジュースこぼしても悪いし。」
「そうね。ここかなり狭いの。
 ごめんなさい。」

 少しの沈黙の後、早川さんは慎重な感じでゆっくりと口を開いた。


「これは…私の独り言って言う形で話すわね。
 …保っちゃんって、中学時代は明るくてね誰にでも優しくて…まぁ、生活に余裕があったからって言われればそうなんだろうけど。
 結構モテてたみたい。
 男子からはチャラいって思われてたみたい。
 
 そして…頭が良かったの。
  
 彼のお父さんは個人で印刷会社経営していてね…職人肌の人で、使ってる機械もかなりの年代物。
 インクまみれで、油まみれ…保っちゃんはお父さんの仕事は継がないって言ってた。
 汚いし、儲からないって…でもそれは本心ではなかったの…どう頑張っても時代はこの仕事を選んでくれない…未来のない仕事じゃ家族を養えないだろうって…。
 薄々、景気が悪くなるのはわかっていたみたい。
 そしてこの先の見通しも立たない事を…誰よりも察知していた。
 好きや、楽しいだけで、仕事は出来ても…家族を養う事は別だって…そう言うとこだけ、昔から大人びてたの…だから…!
 
 …お父さんの仕事がある事業に失敗した時…保っちゃんだけは、あまりショックを受けなかった…というより『ほら、やっぱりな。』って感じで、すぐに新聞配達の仕事見つけて、翌日には新聞配りに走ってた。
 お父さんやお母さんはショックで1週間も仕事も手に付かないって言うのに…。
 けど…保っちゃんが、頑張れば頑張るほど…お父さんは社員の居なくなった工場で、寝転んだり、一日中ボケッとしたり…最近じゃ、パチンコまで行って。
 お母さんがやっとパートで少し生活の足しが出来るようになったっていうのに。
 
 たまに来る仕事の時だけ…夢中で仕事をする父親に、保っちゃんの心は荒れて行ったわ。
 家族より仕事を…たまに来る小さな仕事の方を優先する父親に絶望感を感じているの。
 そして家族を養う責任感…アルバイト代もほとんど家に入れてるらしいわ。
 
 うちも、それ程裕福な個人事業主じゃないから、彼の事…放って置けないの。
 気持ちのわかる…同志みたいな。
 
 でも…いくら考えても、その事と有村君へのイジメに接点が無いのよ。
 本人の口からは教えてくれないだろうし。」

 早川さんはきっと、正直に、本心から僕の為に話してくれたんだ。
 このヒシヒシと伝わる切ない感じ。
 早川さんにも…辛い思いをさせてしまった…。

 僕は早川さんに相談した事を少し後悔した。

「もしかして、宮地のお父さんと僕が似てるとか…?」
「あははは!無いわ。
 おじさん、小太りで丸い顔でプクプク。
 髪の毛も少ないの。」
「いやいや、外見じゃなくて…仕草とか…。」
「有村君って、幼く見えるわよ。
 おじさんくさいところは無さそうだわ。」
「あ~。やっぱりそっちだよね。」

 僕と早川さんは軽く笑いながら視線を合わせた。

「ありがとう、早川さん。
 後は僕1人でなんとかする。
 …だから、宮地のフォローは今まで通りしてあげてよ。」
「有村君…。
 いい人ね…保っちゃん、鈍感なのかな。」

 僕は、早川さんと別れて控え室を出て、受付に残っていた図書委員に会釈をして図書室を後にした。
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