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1学期
嫌いじゃないんだ。
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「おつっー。武本っちゃん。皆んなと来ると騒ぎになるから早めに来ちゃった。」
日曜になり午後からのテニス部活動の為にコートの点検をしていると、バカっぽい声が聞こえてきた。
久瀬和也だ。
「おう。って、そういえば、南山高校の顧問とかって来たことないよな。」
「ああ、それ。うちの顧問テニス経験ゼロでさ、自立性を養う為にとか言って交渉やら予定とかは部長が全部やってんすよ。
働き者っしょ、ウチの部長。」
「しっかりし過ぎるやつは、使われやすいな。
まぁ、ウチの部活もそういうシステムだと楽なんだけど。」
「武本っちゃんも、意外と利用されやすいタイプだね。
文句言いながらもやっちゃうタイプ。」
「そういうお前はいいよな。自由人で。」
「…そう、見えます?」
?意味深な物の言い方だった。
そして、一瞬だけ久瀬の存在感が薄らいだ気がした。
コートのネットの張り具合を確認した後、意を決して久瀬に向き合った。
「久瀬…、実はその…お前に聞きたい事があるんだ。」
「えっ?好みのタイプとか3サイズとか?」
「違うわ!だから…田宮真朝の事だよ。」
「ん?」
久瀬の顔から笑顔が消えた。
「お前と彼女はどういう関係なんだ?田宮真朝と田宮美月姉妹の事も知ってるのか?」
直球で聞いてみた。言葉の選び方がわからなかった。
「先生~。ズルいな。」
「へっ?」
「ダメだよ。そう簡単に近付けると思っちゃ。」
久瀬は含みのある言い方で僕の肩に肘をついた。
「もしかして、田宮真朝が好きなの?」
「なっ!違う!僕は彼女の周りの異常な状態が心配で…。」
久瀬の顔がサッと曇って見えた。
「異常な状態って?」
「だって、普通じゃないだろ!
田宮美月の態度も家族も!
それって昔からなんだろ!」
「普通って何だよ。
あんたは普通で、田宮は異常な日常って、くくってるって事だよな。
…無理だよ。
そんな半端な奴に俺たちの秘密は話せないな。」
「お前は田宮があのままの状況の中にいてもいいってのか?」
思わず声を荒げてしまった。
久瀬は泣きそうな顔になった。
「違うよ!違うよ武本っちゃん…。
そんなんじゃ…救えないんだ…。」
「…ごめん。何やってんだー。もう。」
焦り過ぎた自分が恥ずかしくなってうな垂れた。
「…。武本っちゃん、田宮に嫌われてるって言ってたよな。」
「ああ、嫌われてるよ。
嘘つきなんだそうだ僕は。」
久瀬は何か急に考え込んで顎に手をあてる。
「嘘つきって…。
まさか…武本っちゃん…。」
「何だよ。そんなに驚くなよ。
落ち込むだろ。」
「1つだけ、教えてあげるよ。
それって、嫌われてるんじゃないよ。
多分ね。」
「嫌われて…ない?」
「ただ、田宮に近づくなら…それなりの覚悟がいる。
確かに、あのメスブタ姉の事もそうだが、田宮自身がわざと先生を近づけないようにしてるんだよ。」
メスブタ…凄い言い方だな。
「どうして僕を遠ざける必要が?」
「…そりゃ言えないな。
自分自身が何者なのか武本っちゃんは解ってない。
それが、解ったら全て話して、全力で協力してやるよ。」
不敵な笑みをうかべて顔をグッと近づけて来た。
「自分自身が何者かって??サッパリ意味が解らんぞ。」
「わかったらって言ってんでしょ。
…又は俺の恋人になって、ラブラブイチャイチャしてくれたらもれなく全てを話すんだけど!」
「…久瀬!ふざけるのもいい加減に!」
僕は久瀬を払いのけた。
「それから、武本っちゃん、俺から見たらあんた、充分と変人だよ。
普通には見えないよ。」
久瀬は話を濁してラケットを振りだした。
久瀬に気が付いた女生徒が、飴を見つけた蟻のようにわらわらと集まってきた。
これは以上は聞けないな…。
溜息をついて、突き抜けた青空をみあける。
自分自身が解ってない…嘘つき…この謎が解かなければ、彼女に近づけないのか?
本当に…僕は…彼女に嫌われてる訳じゃないのか?
そう思うと知らず知らずに僕の口角が上がっていた。
翌日、職員室に入るのが少し気が重かった。
あの球技大会から、清水先生としばらく仕事上の話ししかしていない。
「おはようございます。清水先生。」
「おっす。…お前さあ、彼女にちゃんと会ってるか?」
急にプライベートな話しを振ってきたので驚いた。
「えっ。いえ、ここのところ忙しくて。」
「いかんな~。いかんよ、それ。」
「はい~?何すかそれ。しょうがないでしょ!
教師の休みなんて休みじゃないんだから。」
「結婚迫って来るぞ。」
「けっ…結婚って!まだ考えた事もないですよ。仕事だってまだ慣れてもいないのに。」
突然の結婚の言葉に動揺した。
「問題は、高校教師っていう職業だよ。
女って奴らは変な勘ぐりするからな。
しょっちゅう彼氏が学校の仕事で会ってくれないと、女生徒とデキてんじゃないかと心配になる。」
「だ…誰が女生徒とデキてるんですか?
あり得ません!」
「事実、デキてなくても疑いは膨らむんだよ。
だから、焦ると結婚を迫ってくる…。
そこ、踏まえて恋人とは付き合うんだな。」
「先輩のアドバイスとしてうけとります。」
「田宮の事ばっか考えて、自分の足元すくわれるなよ。」
清水先生は出席簿で僕の頭を軽く叩いて職員室を出て行った。
「…解ってますよ。」
素直じゃないんだから…清水先生は心配してくれてるんだ。
でも、やっぱり僕は田宮真朝の事から手を引く気はさらさらなかった。
嫌われてる訳じゃない…。
だったら、きっと先へ進めるはずだ。
このモヤモヤを解消する道は閉ざされた訳じゃないんだ。
少しづつでいい、一歩づつでいい…彼女に近づくチャンスはたくさんあるはずだ。
久瀬のおかげで少しだけポジティブに考える事ができるようになっていた。
「…久瀬って、実はいい奴かも…。」
ふと、僕は手帳を開いた。
忘れていたが、彼女の証明写真が挟まっていた。
これは、お守りだな。
写真を見ながらほくそ笑んでしまった。
日曜になり午後からのテニス部活動の為にコートの点検をしていると、バカっぽい声が聞こえてきた。
久瀬和也だ。
「おう。って、そういえば、南山高校の顧問とかって来たことないよな。」
「ああ、それ。うちの顧問テニス経験ゼロでさ、自立性を養う為にとか言って交渉やら予定とかは部長が全部やってんすよ。
働き者っしょ、ウチの部長。」
「しっかりし過ぎるやつは、使われやすいな。
まぁ、ウチの部活もそういうシステムだと楽なんだけど。」
「武本っちゃんも、意外と利用されやすいタイプだね。
文句言いながらもやっちゃうタイプ。」
「そういうお前はいいよな。自由人で。」
「…そう、見えます?」
?意味深な物の言い方だった。
そして、一瞬だけ久瀬の存在感が薄らいだ気がした。
コートのネットの張り具合を確認した後、意を決して久瀬に向き合った。
「久瀬…、実はその…お前に聞きたい事があるんだ。」
「えっ?好みのタイプとか3サイズとか?」
「違うわ!だから…田宮真朝の事だよ。」
「ん?」
久瀬の顔から笑顔が消えた。
「お前と彼女はどういう関係なんだ?田宮真朝と田宮美月姉妹の事も知ってるのか?」
直球で聞いてみた。言葉の選び方がわからなかった。
「先生~。ズルいな。」
「へっ?」
「ダメだよ。そう簡単に近付けると思っちゃ。」
久瀬は含みのある言い方で僕の肩に肘をついた。
「もしかして、田宮真朝が好きなの?」
「なっ!違う!僕は彼女の周りの異常な状態が心配で…。」
久瀬の顔がサッと曇って見えた。
「異常な状態って?」
「だって、普通じゃないだろ!
田宮美月の態度も家族も!
それって昔からなんだろ!」
「普通って何だよ。
あんたは普通で、田宮は異常な日常って、くくってるって事だよな。
…無理だよ。
そんな半端な奴に俺たちの秘密は話せないな。」
「お前は田宮があのままの状況の中にいてもいいってのか?」
思わず声を荒げてしまった。
久瀬は泣きそうな顔になった。
「違うよ!違うよ武本っちゃん…。
そんなんじゃ…救えないんだ…。」
「…ごめん。何やってんだー。もう。」
焦り過ぎた自分が恥ずかしくなってうな垂れた。
「…。武本っちゃん、田宮に嫌われてるって言ってたよな。」
「ああ、嫌われてるよ。
嘘つきなんだそうだ僕は。」
久瀬は何か急に考え込んで顎に手をあてる。
「嘘つきって…。
まさか…武本っちゃん…。」
「何だよ。そんなに驚くなよ。
落ち込むだろ。」
「1つだけ、教えてあげるよ。
それって、嫌われてるんじゃないよ。
多分ね。」
「嫌われて…ない?」
「ただ、田宮に近づくなら…それなりの覚悟がいる。
確かに、あのメスブタ姉の事もそうだが、田宮自身がわざと先生を近づけないようにしてるんだよ。」
メスブタ…凄い言い方だな。
「どうして僕を遠ざける必要が?」
「…そりゃ言えないな。
自分自身が何者なのか武本っちゃんは解ってない。
それが、解ったら全て話して、全力で協力してやるよ。」
不敵な笑みをうかべて顔をグッと近づけて来た。
「自分自身が何者かって??サッパリ意味が解らんぞ。」
「わかったらって言ってんでしょ。
…又は俺の恋人になって、ラブラブイチャイチャしてくれたらもれなく全てを話すんだけど!」
「…久瀬!ふざけるのもいい加減に!」
僕は久瀬を払いのけた。
「それから、武本っちゃん、俺から見たらあんた、充分と変人だよ。
普通には見えないよ。」
久瀬は話を濁してラケットを振りだした。
久瀬に気が付いた女生徒が、飴を見つけた蟻のようにわらわらと集まってきた。
これは以上は聞けないな…。
溜息をついて、突き抜けた青空をみあける。
自分自身が解ってない…嘘つき…この謎が解かなければ、彼女に近づけないのか?
本当に…僕は…彼女に嫌われてる訳じゃないのか?
そう思うと知らず知らずに僕の口角が上がっていた。
翌日、職員室に入るのが少し気が重かった。
あの球技大会から、清水先生としばらく仕事上の話ししかしていない。
「おはようございます。清水先生。」
「おっす。…お前さあ、彼女にちゃんと会ってるか?」
急にプライベートな話しを振ってきたので驚いた。
「えっ。いえ、ここのところ忙しくて。」
「いかんな~。いかんよ、それ。」
「はい~?何すかそれ。しょうがないでしょ!
教師の休みなんて休みじゃないんだから。」
「結婚迫って来るぞ。」
「けっ…結婚って!まだ考えた事もないですよ。仕事だってまだ慣れてもいないのに。」
突然の結婚の言葉に動揺した。
「問題は、高校教師っていう職業だよ。
女って奴らは変な勘ぐりするからな。
しょっちゅう彼氏が学校の仕事で会ってくれないと、女生徒とデキてんじゃないかと心配になる。」
「だ…誰が女生徒とデキてるんですか?
あり得ません!」
「事実、デキてなくても疑いは膨らむんだよ。
だから、焦ると結婚を迫ってくる…。
そこ、踏まえて恋人とは付き合うんだな。」
「先輩のアドバイスとしてうけとります。」
「田宮の事ばっか考えて、自分の足元すくわれるなよ。」
清水先生は出席簿で僕の頭を軽く叩いて職員室を出て行った。
「…解ってますよ。」
素直じゃないんだから…清水先生は心配してくれてるんだ。
でも、やっぱり僕は田宮真朝の事から手を引く気はさらさらなかった。
嫌われてる訳じゃない…。
だったら、きっと先へ進めるはずだ。
このモヤモヤを解消する道は閉ざされた訳じゃないんだ。
少しづつでいい、一歩づつでいい…彼女に近づくチャンスはたくさんあるはずだ。
久瀬のおかげで少しだけポジティブに考える事ができるようになっていた。
「…久瀬って、実はいい奴かも…。」
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