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1学期
眠り姫とヘタレ王子
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職員室に向かっていたものの、まだ顔の熱は冷めず、このままじゃ清水先生のオモチャになりそうで、僕は身体をひるがえし、旧理科準備室に先に向かう事に変更した。
旧理科準備室は最近、少しづつ持ち込んだ僕の私物のせいもあり、更に落ち着ける場所になっていた。
骸骨の標本、通称モモちゃんにかけた白衣を羽織り、コーヒーを入れる。
丸イスに座り、机の上の小さなクマのクッションに頭を埋めた。
彼女の事を考えないように…別の事を考えなきゃ…。
そういえば、結婚ってやっぱり女にとっては夢なのか?
そんなに結婚したいのか?
付き合うのとはどう違うんだ??
考えれば考えるほど、自分が結婚にあっていない気がした。
やっぱり、イメージが大事かも。
結婚と言えば新婚さん、新婚さんと言えば
、可愛い奥さん…。
白いエプロンの似合う…白い肌…キッチンからのいい香りと少し高い声で、優しく僕を呼ぶ…。
『…先生…。』
はあぁぁ!田宮真朝のエプロン姿を想像してしまった。
「重症だぞ…。これは。」
クマのクッションをギュっと握った。
しばらくして、いつものように田宮が鍵を開けて旧理科室に入って来たようだ。
僕は覗くのをためらって、クッションの上で耳をそばだてた。
始めはカタカタ音がしたものの、それ以降何の音もしなかった。
音がない…?
しばらく待ってみたものの無音状態だった。
気になり、仕方なく中扉の小窓から覗いてみた。
「えっ?」
彼女はいつも使う中央の実験台の上に仰向けで、胸の下で手を組んで横たわっていた。
なななな何!?寝てるだけか?
それとも…まさか…服毒自殺!?
いやいや…。
どうしたらいいんだ!
中扉を開けようとしたが、手を止めた。
もし、眠っててドアを開けた瞬間に起きたら、僕がいつもここに居る事がバレてしまうかもしれない。
僕は遠回りをして旧理科準備室をこっそり抜け出すと、旧理科室のドアの前でワザとらしく、咳払いをした。
ガチャ。
旧理科室のドアを開けて中に入った。
彼女はピクリとも動かない。
そっと近づいて、口元に手を差し伸べてみる。
あ…息はしてる。
ホッとした。
しかし、実験台の上で眠ってるなんて冗談にもほどがある。
まな板の上の鯉じゃないんだぞ。
あ、でも安心出来ないか…睡眠薬自殺なら直ぐには反応が出ないはず。
困った。区別がつかない。
30分~1時間何もなければ眠ってるだけだと思うんだが。
僕は隣の実験台の丸イスに腰掛けて
肩ひじを付きながら彼女を見つめた。
しばらく、こうやっ観てるしかないか。
白衣からチョコレートキャンディを取り出し口に運んだ。
こんな近くでじっくりと彼女を見た事はなかった。
寝る為か髪は解かれて、静かに呼吸する彼女は白雪姫か眠り姫のようだった。
僕は…彼女に…恋してるのか?
自問自答してみた。
でも…彼女にキスしたいとか…抱きしめたい…とかいう感情は湧いて来ない。
どちらかと言えば、こういう2人だけの静かな空間に埋もれていたかった。
やはり…恋ではないのか…じゃあ…何なんだ?。
……解らない。自分の事なのに解らなかった。
彼女にとって旧理科室が居場所なら、僕にとって、彼女は居場所なのかもしれない。
彼女の寝顔を眺めてるだけで、心地よいドキドキ感と幸福感を感じる。
このまま…ずっと…ずっと…このまま永遠に…。
はっ!今、顔!思い切り緩んでたよな。
慌てて、ズレた眼鏡を直した。
我に帰り、真っ赤になった。
ダメだ、彼女を見ると顔の筋肉まで緩んでしまう。
時計を見ると、1時間近くたっていた。
彼女に変化はなかった。
良かった。
僕は羽織っていた白衣を彼女にそっと掛けると静かに旧理科室を出て行った。
「職員室で頭を冷やそう。」
そう、呟きながらも後ろ髪を引かれる思いだった。
ブルルル。
携帯が鳴った。
「げっ、久瀬!!」
勝手に久瀬がアドレス入れてたのを忘れていた。
「…何だ?っていうかメッセージとかにしとけよ直接じゃなくて。」
「冷たいなー。武本っちゃんは。どう?田宮との間に進展あった?」
「はっ?進展って僕は別に!」
「武本っちゃんは、ムッツリスケベだからなー。」
「何で、僕がムッツリスケベなんだ!?」
はっ。思わず廊下で叫んでしまった。
終業式後の放課後の廊下は生徒もいなくて助かった。
「じゃあさ、テニス部の合宿先がそっちの学校と日程が重なってるらしいんだ。
つまり、二泊三日は俺と1つ屋根の下~。」
「げっ。知らん。そんなの!」
「…武本っちゃんの反応次第では、協力してあげるよ。
田宮、攻略したいんだろ?」
「攻略って!ゲームじゃないんだぞ!」
「まあまあ。ちょっと、この前は武本っちゃんに冷たくしちゃったかなーなんてね。
それに俺、彼女の1番のファンなんでね。」
「ファン!?」
「まー。その話も後ほど。
とにかく楽しみにしててよ。
愛してるよ!武本っちゃん。」
「死ね!速攻死ね!」
僕は久瀬からの電話をぶち切った。
明日から夏休みだってのに、何なんだこの怒涛のようなスケジュールは!?
ダメだ。職員室でまず、整理して考えよう。
7月の終わりから補習が5日、8月の始めにテニス部合宿、そしてお盆に香苗の両親に挨拶、もしくは清水先生の家に行くのもその頃か…。
夏休みなのに全然きが休まねーし!むしろ、精神的には重過ぎる状況ばかりだ。
また…彼女の側に居たくなった。
さっきいたばかりなのに…。
切なさに唇を噛みながら、僕はポケットの手帳を開いた。
彼女の写真は挟まったままだ。
とにかく、1つ1つこなして行こう。
まずは、牧田銀子と親しくなろう。
補習の5日間で少しでも彼女の事を知るために。
旧理科準備室は最近、少しづつ持ち込んだ僕の私物のせいもあり、更に落ち着ける場所になっていた。
骸骨の標本、通称モモちゃんにかけた白衣を羽織り、コーヒーを入れる。
丸イスに座り、机の上の小さなクマのクッションに頭を埋めた。
彼女の事を考えないように…別の事を考えなきゃ…。
そういえば、結婚ってやっぱり女にとっては夢なのか?
そんなに結婚したいのか?
付き合うのとはどう違うんだ??
考えれば考えるほど、自分が結婚にあっていない気がした。
やっぱり、イメージが大事かも。
結婚と言えば新婚さん、新婚さんと言えば
、可愛い奥さん…。
白いエプロンの似合う…白い肌…キッチンからのいい香りと少し高い声で、優しく僕を呼ぶ…。
『…先生…。』
はあぁぁ!田宮真朝のエプロン姿を想像してしまった。
「重症だぞ…。これは。」
クマのクッションをギュっと握った。
しばらくして、いつものように田宮が鍵を開けて旧理科室に入って来たようだ。
僕は覗くのをためらって、クッションの上で耳をそばだてた。
始めはカタカタ音がしたものの、それ以降何の音もしなかった。
音がない…?
しばらく待ってみたものの無音状態だった。
気になり、仕方なく中扉の小窓から覗いてみた。
「えっ?」
彼女はいつも使う中央の実験台の上に仰向けで、胸の下で手を組んで横たわっていた。
なななな何!?寝てるだけか?
それとも…まさか…服毒自殺!?
いやいや…。
どうしたらいいんだ!
中扉を開けようとしたが、手を止めた。
もし、眠っててドアを開けた瞬間に起きたら、僕がいつもここに居る事がバレてしまうかもしれない。
僕は遠回りをして旧理科準備室をこっそり抜け出すと、旧理科室のドアの前でワザとらしく、咳払いをした。
ガチャ。
旧理科室のドアを開けて中に入った。
彼女はピクリとも動かない。
そっと近づいて、口元に手を差し伸べてみる。
あ…息はしてる。
ホッとした。
しかし、実験台の上で眠ってるなんて冗談にもほどがある。
まな板の上の鯉じゃないんだぞ。
あ、でも安心出来ないか…睡眠薬自殺なら直ぐには反応が出ないはず。
困った。区別がつかない。
30分~1時間何もなければ眠ってるだけだと思うんだが。
僕は隣の実験台の丸イスに腰掛けて
肩ひじを付きながら彼女を見つめた。
しばらく、こうやっ観てるしかないか。
白衣からチョコレートキャンディを取り出し口に運んだ。
こんな近くでじっくりと彼女を見た事はなかった。
寝る為か髪は解かれて、静かに呼吸する彼女は白雪姫か眠り姫のようだった。
僕は…彼女に…恋してるのか?
自問自答してみた。
でも…彼女にキスしたいとか…抱きしめたい…とかいう感情は湧いて来ない。
どちらかと言えば、こういう2人だけの静かな空間に埋もれていたかった。
やはり…恋ではないのか…じゃあ…何なんだ?。
……解らない。自分の事なのに解らなかった。
彼女にとって旧理科室が居場所なら、僕にとって、彼女は居場所なのかもしれない。
彼女の寝顔を眺めてるだけで、心地よいドキドキ感と幸福感を感じる。
このまま…ずっと…ずっと…このまま永遠に…。
はっ!今、顔!思い切り緩んでたよな。
慌てて、ズレた眼鏡を直した。
我に帰り、真っ赤になった。
ダメだ、彼女を見ると顔の筋肉まで緩んでしまう。
時計を見ると、1時間近くたっていた。
彼女に変化はなかった。
良かった。
僕は羽織っていた白衣を彼女にそっと掛けると静かに旧理科室を出て行った。
「職員室で頭を冷やそう。」
そう、呟きながらも後ろ髪を引かれる思いだった。
ブルルル。
携帯が鳴った。
「げっ、久瀬!!」
勝手に久瀬がアドレス入れてたのを忘れていた。
「…何だ?っていうかメッセージとかにしとけよ直接じゃなくて。」
「冷たいなー。武本っちゃんは。どう?田宮との間に進展あった?」
「はっ?進展って僕は別に!」
「武本っちゃんは、ムッツリスケベだからなー。」
「何で、僕がムッツリスケベなんだ!?」
はっ。思わず廊下で叫んでしまった。
終業式後の放課後の廊下は生徒もいなくて助かった。
「じゃあさ、テニス部の合宿先がそっちの学校と日程が重なってるらしいんだ。
つまり、二泊三日は俺と1つ屋根の下~。」
「げっ。知らん。そんなの!」
「…武本っちゃんの反応次第では、協力してあげるよ。
田宮、攻略したいんだろ?」
「攻略って!ゲームじゃないんだぞ!」
「まあまあ。ちょっと、この前は武本っちゃんに冷たくしちゃったかなーなんてね。
それに俺、彼女の1番のファンなんでね。」
「ファン!?」
「まー。その話も後ほど。
とにかく楽しみにしててよ。
愛してるよ!武本っちゃん。」
「死ね!速攻死ね!」
僕は久瀬からの電話をぶち切った。
明日から夏休みだってのに、何なんだこの怒涛のようなスケジュールは!?
ダメだ。職員室でまず、整理して考えよう。
7月の終わりから補習が5日、8月の始めにテニス部合宿、そしてお盆に香苗の両親に挨拶、もしくは清水先生の家に行くのもその頃か…。
夏休みなのに全然きが休まねーし!むしろ、精神的には重過ぎる状況ばかりだ。
また…彼女の側に居たくなった。
さっきいたばかりなのに…。
切なさに唇を噛みながら、僕はポケットの手帳を開いた。
彼女の写真は挟まったままだ。
とにかく、1つ1つこなして行こう。
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