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夏休み
僕は嘘をつき続ける
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風邪もひとまず落ち着き、合宿が終了した。
僕は、特に仕事がある訳じゃなかったが朝早くから学校に出勤した。
彼女の顔が見たかった。
とにかく、その衝動がおさえられなかった。
遠くからでもいいから、見たかった。
それだけでいいと思ってた。
しかし、午前中、彼女は旧理科室を訪れなかった。
今日は来ないのだろうか?
がっかりして肩を落としながら、食堂に向かった。
部活動の生徒がチラホラいた。
彼女はいないかな?
僕の横目に田宮が映った。
いや、田宮だけじゃなかった。
田宮と向かい合って楽しそうに話す石井の姿も目に入った。
石井は田宮のクラスメイトで映像研究部の男子だ。
明るく知的な感じの好青年という感じだ。
その、石井が田宮と2人きりで向かい合わせで食事をしていたのだ。
僕の胸はザワザワと騒いでいた。
息苦しさを感じ、ネクタイを緩めた。
付き合ってはいないと言ってた、好きな人も居ないと…でも、それは彼女発信であって、石井がそうだとは限らない。
僕は奥歯を噛み締め、購買でパンを買うと食堂を引き返した。
その場には居られなかった。
折角、彼女が見られたというのに。
頭を冷やさなきゃ…。
嘘つき…。
彼女と久瀬の言葉が頭の中をグルグル回っていた。
仕方ないだろう!僕は教師だ。
しかも、担任でもないし、彼女は僕の事なんて何とも思ってない。
「…っきしょう!」
僕は頭を冷やしに屋上へとあがった。
誰も居ない屋上は開放感があって暑いが心地よい風が吹いていた。
ネクタイを取り胸を開けて風に当たりながら、床に腰掛けてパンを頬張る。
「結局、少ししか見られなかった…。」
「…何か見られなかったんですか?」
僕の背後から人影が伸びる。
僕の目の前でスカートが風に揺れた。
田宮真朝!
「ばっ!そこに立つな!スカートん中見えるだろ!」
「あ、すいません。先生がいるって思わなかったので。
でも少々見られても大丈夫です。
別に気にしませんから。」
「気にしろよっ!僕だって男なんだぞ!」
僕の事は男としても見ていないって訳か…最低だ。
「先生だって、生徒の前でそんなに胸はだけてちゃダメなんじゃないですか?」
「!!」
忘れてたー!!
僕は慌ててシャツのボタンを締めた。
「プッ、ふふふ。変な先生。」
「そんなにウケるなよ。傷つくだろ。」
彼女の側にいる僕は、まるで子供のようにあしらわれてしまう。
彼女はすっと屋上の柵に肘を乗せた。
髪が風に踊り、うなじがあらわになる。
ドキドキが止まらない!
「先生…、先生は何の為に生きてるんですか?」
「えっ。」
そう言いながら振り返った彼女は、夏の日を浴びて、首筋の汗を光らせ眩しく見えた。
「何を…急に…。」
「私は…死ぬ為に…生きてるんです。最高の死を迎える為に。」
そう言って、彼女は満面の笑みを浮かべた。
透明で…今にも消えてしまいそうな気がした。
その柵の外に飛び出してしまうんじゃないかと、不安にかられ、僕は彼女の手を引いていた。
グイッ!
「田宮…!」
彼女は少しよろけて、僕の肩に寄りかかった。
そして、僕を見上げた。
「プッ。あはは。
先生の目の前で自殺なんてしませんよ。
安心して下さい。」
彼女はそう笑ったが、僕は掴んだ手を離す事が出来なかった。
自分でも判るくらい、僕は切ない顔をしていたと思う。
もどかしい…苦しい…。
この手を…離したくない…。
ポン。
彼女は反対の手で、僕の胸を軽く突き飛ばした。
「先生は…こっちの世界に来ちゃダメだよ。ね。」
呟くように言って、彼女は屋上を出て行った。
僕はその場から、彼女の消えた屋上のドアを見つめていた。
好きになっちゃいけないって事か…?
田宮は僕の気持ちに…気付いてる…?
それでも…受け入れてはくれない。
当たり前か…。
特に仲がいい関係でもない、共通点がある訳でもない、担任でもない…そんな教師に好かれたって…。
僕は…田宮真朝を好きじゃない。
元々、そういう感情ではなかったはずだ。
何を傷つく事がある?
僕が田宮に興味がある理由は…あの日の謎の解明だけだ。
それだけなんだ…。
そう思いながら、僕の心は絶望の渦に飲み込まれて行くかの如く、深い深い場所に田宮真朝への想いを封じ込めた。
この胸の奥のパンドラの箱を開けてはいけない…。
僕は…僕は…僕は……。
言い訳の波を彷徨う僕は、何故か前にも同じような事を感じたような気がした。
同じように…ユラユラと彷徨う心…いつの頃だったか…。
もう、考えるのさえ無駄だった。
虚無感が僕を支配し始めていた。
僕はとりあえず、旧理科準備室に入った。
田宮姉妹の件は足を踏み込んでしまってる以上無視は出来なかった。
去年も今頃だったはず。
何かが起こるとすれば8月中だと考えたのだ。
気持ちを封印している為かいつもよりドキドキはしなかった。
中扉の小窓から見える田宮真朝は、何かの絵を描いいた。
以前とは違い鉛筆画ではなく、絵具を使っているようだ。
頬に絵具が付いているのに、それを拭く事もなく集中しているようだった。
いつもなら、居心地のいい空間のはずが、今の僕には少し辛かった。
中扉に頭をつけて胸を押さえた。
ガチャ。
旧理科室の扉が開いた。
田宮美月!
僕は中扉に耳を押し当てた。
「どう?調子は。そろそろ締め切りも近い事だし完成させてもらわないと。」
「もう少しかな。」
「どれどれ?」
田宮美月は彼女の絵を覗き込んだ。
「あーもっと、色気が欲しいわね~。妖艷な感じ。」
「……。」
「あんた、エッチした事ない処女でしょ~。
だから色気が出ないのよ。
そこらへんの適当な奴とヤッちゃえば?」
なんて下品なんだ!あの魔女は!
お前とは違うんだぞ…彼女は!…?…処女…!!。
思わず、彼女の裸を想像してしまった自分に恥ずかしくなった。
「そんな人いないよ。」
「そうね。あんたに性欲湧く男なんて超変態だものね。」
カチン!
なんか、少しムカついた。僕は変態じゃない!いたって普通だぞ…。
「とにかく、間に合わせてよ!判った?」
「…はい。」
彼女の今描いてる物に意味があるんだな。
何の為の絵なんだ?
田宮美月が出て行った後、彼女は自分の絵をジッと見つめた。
「…難しい…な。キスもした事ないのに…。」
「!」
7月の屋上の出来事が頭をよぎった。後…もう少しで…初キス…の距離だったんだ。
ズキッ。
胸の奥がうずいた。ザワザワ…ムカムカ…イライラ。
静まれよ!頼むから…先へ進めなくなる。
僕は下唇を噛んで彼女が帰宅するのを待った。
僕は、特に仕事がある訳じゃなかったが朝早くから学校に出勤した。
彼女の顔が見たかった。
とにかく、その衝動がおさえられなかった。
遠くからでもいいから、見たかった。
それだけでいいと思ってた。
しかし、午前中、彼女は旧理科室を訪れなかった。
今日は来ないのだろうか?
がっかりして肩を落としながら、食堂に向かった。
部活動の生徒がチラホラいた。
彼女はいないかな?
僕の横目に田宮が映った。
いや、田宮だけじゃなかった。
田宮と向かい合って楽しそうに話す石井の姿も目に入った。
石井は田宮のクラスメイトで映像研究部の男子だ。
明るく知的な感じの好青年という感じだ。
その、石井が田宮と2人きりで向かい合わせで食事をしていたのだ。
僕の胸はザワザワと騒いでいた。
息苦しさを感じ、ネクタイを緩めた。
付き合ってはいないと言ってた、好きな人も居ないと…でも、それは彼女発信であって、石井がそうだとは限らない。
僕は奥歯を噛み締め、購買でパンを買うと食堂を引き返した。
その場には居られなかった。
折角、彼女が見られたというのに。
頭を冷やさなきゃ…。
嘘つき…。
彼女と久瀬の言葉が頭の中をグルグル回っていた。
仕方ないだろう!僕は教師だ。
しかも、担任でもないし、彼女は僕の事なんて何とも思ってない。
「…っきしょう!」
僕は頭を冷やしに屋上へとあがった。
誰も居ない屋上は開放感があって暑いが心地よい風が吹いていた。
ネクタイを取り胸を開けて風に当たりながら、床に腰掛けてパンを頬張る。
「結局、少ししか見られなかった…。」
「…何か見られなかったんですか?」
僕の背後から人影が伸びる。
僕の目の前でスカートが風に揺れた。
田宮真朝!
「ばっ!そこに立つな!スカートん中見えるだろ!」
「あ、すいません。先生がいるって思わなかったので。
でも少々見られても大丈夫です。
別に気にしませんから。」
「気にしろよっ!僕だって男なんだぞ!」
僕の事は男としても見ていないって訳か…最低だ。
「先生だって、生徒の前でそんなに胸はだけてちゃダメなんじゃないですか?」
「!!」
忘れてたー!!
僕は慌ててシャツのボタンを締めた。
「プッ、ふふふ。変な先生。」
「そんなにウケるなよ。傷つくだろ。」
彼女の側にいる僕は、まるで子供のようにあしらわれてしまう。
彼女はすっと屋上の柵に肘を乗せた。
髪が風に踊り、うなじがあらわになる。
ドキドキが止まらない!
「先生…、先生は何の為に生きてるんですか?」
「えっ。」
そう言いながら振り返った彼女は、夏の日を浴びて、首筋の汗を光らせ眩しく見えた。
「何を…急に…。」
「私は…死ぬ為に…生きてるんです。最高の死を迎える為に。」
そう言って、彼女は満面の笑みを浮かべた。
透明で…今にも消えてしまいそうな気がした。
その柵の外に飛び出してしまうんじゃないかと、不安にかられ、僕は彼女の手を引いていた。
グイッ!
「田宮…!」
彼女は少しよろけて、僕の肩に寄りかかった。
そして、僕を見上げた。
「プッ。あはは。
先生の目の前で自殺なんてしませんよ。
安心して下さい。」
彼女はそう笑ったが、僕は掴んだ手を離す事が出来なかった。
自分でも判るくらい、僕は切ない顔をしていたと思う。
もどかしい…苦しい…。
この手を…離したくない…。
ポン。
彼女は反対の手で、僕の胸を軽く突き飛ばした。
「先生は…こっちの世界に来ちゃダメだよ。ね。」
呟くように言って、彼女は屋上を出て行った。
僕はその場から、彼女の消えた屋上のドアを見つめていた。
好きになっちゃいけないって事か…?
田宮は僕の気持ちに…気付いてる…?
それでも…受け入れてはくれない。
当たり前か…。
特に仲がいい関係でもない、共通点がある訳でもない、担任でもない…そんな教師に好かれたって…。
僕は…田宮真朝を好きじゃない。
元々、そういう感情ではなかったはずだ。
何を傷つく事がある?
僕が田宮に興味がある理由は…あの日の謎の解明だけだ。
それだけなんだ…。
そう思いながら、僕の心は絶望の渦に飲み込まれて行くかの如く、深い深い場所に田宮真朝への想いを封じ込めた。
この胸の奥のパンドラの箱を開けてはいけない…。
僕は…僕は…僕は……。
言い訳の波を彷徨う僕は、何故か前にも同じような事を感じたような気がした。
同じように…ユラユラと彷徨う心…いつの頃だったか…。
もう、考えるのさえ無駄だった。
虚無感が僕を支配し始めていた。
僕はとりあえず、旧理科準備室に入った。
田宮姉妹の件は足を踏み込んでしまってる以上無視は出来なかった。
去年も今頃だったはず。
何かが起こるとすれば8月中だと考えたのだ。
気持ちを封印している為かいつもよりドキドキはしなかった。
中扉の小窓から見える田宮真朝は、何かの絵を描いいた。
以前とは違い鉛筆画ではなく、絵具を使っているようだ。
頬に絵具が付いているのに、それを拭く事もなく集中しているようだった。
いつもなら、居心地のいい空間のはずが、今の僕には少し辛かった。
中扉に頭をつけて胸を押さえた。
ガチャ。
旧理科室の扉が開いた。
田宮美月!
僕は中扉に耳を押し当てた。
「どう?調子は。そろそろ締め切りも近い事だし完成させてもらわないと。」
「もう少しかな。」
「どれどれ?」
田宮美月は彼女の絵を覗き込んだ。
「あーもっと、色気が欲しいわね~。妖艷な感じ。」
「……。」
「あんた、エッチした事ない処女でしょ~。
だから色気が出ないのよ。
そこらへんの適当な奴とヤッちゃえば?」
なんて下品なんだ!あの魔女は!
お前とは違うんだぞ…彼女は!…?…処女…!!。
思わず、彼女の裸を想像してしまった自分に恥ずかしくなった。
「そんな人いないよ。」
「そうね。あんたに性欲湧く男なんて超変態だものね。」
カチン!
なんか、少しムカついた。僕は変態じゃない!いたって普通だぞ…。
「とにかく、間に合わせてよ!判った?」
「…はい。」
彼女の今描いてる物に意味があるんだな。
何の為の絵なんだ?
田宮美月が出て行った後、彼女は自分の絵をジッと見つめた。
「…難しい…な。キスもした事ないのに…。」
「!」
7月の屋上の出来事が頭をよぎった。後…もう少しで…初キス…の距離だったんだ。
ズキッ。
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