手の届かない君に。

平塚冴子

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2学期

イジワルな彼女

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昼休みは憂鬱だった。
なにせ、葉月と2人で食事なんて拷問に他ならない。
特に会話したい事もない。
田宮とだったら話したい事は沢山あるのに…。
僕は何かにつけて田宮と比べてしまっていた。

食堂で葉月が僕に手を振った。
「先生~~!」
「あ、ああ。」
そもそも、このノリが嫌なんだ。
僕は思いっきりの営業スマイルで応えた。
ドン!
僕は誰かにぶつかった。
「あ、すいませ…。」
「いえ、こちらこそ。すいません。
まだ学校に慣れてなくて。」
そこに立っていたのは、久瀬ばりの美形の成人男子だった。
身長も僕くらいで白衣を着ていた。
「あの…。」
「金井先生!」
葉月がそいつの名前を呼んだ。
金井…?
「昨日からスクールカウンセラーの配置替えで来ました。金井 雄二です。」
「ああ、1年3組担任の武本です。」
「武本先生ですか?
昨日ちょうどお休みでしたね。
よろしくお願いします。」
「はあ、どうも。」
顔は久瀬っぽいが、真面目で話しやすい感じだ。
「そうだ!一緒にどうです?食事!」
ナイス!葉月と2人きりよりは全然マシだ!
「喜んで。葉月いいよな。」
「え~~。まぁいいわ。」
「実は、もう1人約束をしている生徒がいるので同席させてもらってもいいですか?」
「ええ。いいですとも。」
「もう少しで、来ると思いますから、先に席で待っていましょう。」
僕は内心ホッとしまくりだった。
葉月は隣でふくれっ面だったが…。

僕と金井先生はラーメンを葉月はオムライスを注文した。
食堂の席を確保して、僕らはもう1人の生徒を待ちながら話した。
「金井先生は週に何回こちらに?」
「毎日です。」
「毎日!?スクールカウンセラーは他の学校と掛け持ちだと聞いていますが…。」
「普通は。
…ですが、この学校での問題が大き過ぎるので、急遽、僕が派遣されたんです。
全てを把握するには全日勤務が必然だと理解したので。」
「問題…不登校のですか?」
「ええ、まぁそんなところです。」
金井先生は意味深な笑いでごまかした。

「金井先生…お待たせしました。」
僕は息を飲んだ…隣に蕎麦を持って、田宮 真朝が立っていた。
「待ってたよ。真朝君。」
金井先生は自分の隣…つまり僕の正面に田宮を座らせた。
「田宮さんなの!?金井先生が待ってたのって。」
葉月も驚きを隠せない。
「ええ、僕が…今、1番興味のある生徒ですよ。」
はああ?何言ってんだよ!
僕は内心、動揺と嫉妬が渦巻いていた。
「私は珍獣ですか?ハシビロコウ並みですか?」
田宮は冷静な口調でつっこんだ。
「そうだな。
どっちかっていうと伝説の麒麟かな。」
何、通じ合ってるみたいな会話してんだよ!
この2人は!
「実は君のお姉さんの田宮 美月さんについて少しばかり、話したいと思ってね。真朝君的にはどんな、お姉さんなんだい?」
…田宮 美月!!…こいつ!魔女に近づくために田宮を利用するのか!?
「素敵な姉ですよ。
彼女が居なければ、私は死んでいたくらいに。
金井先生も直接会ってみては?」
彼女は本心を言ってるのか?…それとも。
「う~ん。そのうちね。
でも、やっぱり僕は君の方に興味があるんだ。」
このおお~~。
僕は笑顔の下で拳を握っていた。
「そうですか。
武本先生といい、変な先生ばかりですね。」
彼女はいきなり僕に話しを振って来た。
「はああ?お前何言ってんだよ!
変って何だよ!
田宮の方が変だろ!」
反射的にムキになって反論してしまった。
「ええ、私は変なのをキチンと自覚してますが…武本先生は…。」
「ハッキリ言えよな!いつも、いつも!」
「言ったら怒られます。」
「怒られるような事なんだな!」
売り言葉に買い言葉で言い争う僕と田宮に、金井先生が喜んだ。
「いいね~。仲いいんだ。武本先生と。」
嫌味にしては含みのある発言だった。
「いいえ。合わないだけです。」
「こっちのセリフだ。
何かにつけて突っかかって来るし。」
なんか、いつものパターンにハマってきた…。
くそっ!
「そうですよね。
武本先生は田宮さんじゃなくて、私がタイプなんですぅ。」
葉月がまた余計な事を言った。
あ~~ウザったい!
「お似合いだね。じゃあ。
武本先生は…僕が真朝君と仲良くなっても関係ないですよね。
彼女僕のタイプだし。」
「はっ?」
僕に挑戦的な眼で金井先生は言い放った。
「私は別に、金井先生と仲良くなる気はありませんが。」
田宮が断りを入れた。
僕は胸の奥がジリジリと焼け付くような感覚を覚えた。
「時間をかけて、じっくり仲良くなりますよ。ねっ真朝君。」

ニヤニヤと田宮を見つめる金井。
こいつ、一体何の目的で田宮に近づくんだ?
やっぱり田宮 美月の情報収集か?
3年の登校拒否の元凶は田宮 美月だと清水先生から聞いている。
だとしたら…こいつも田宮を危険な目に合わせてしまうかもしれない。
彼女を利用する為だけに近くのなら、彼も要注意人物だ。

「金井先生はおいくつ?武本先生よりは年上に見えるけど。」
葉月が話題を変えてくれた。
「29歳ですよ。武本先生は?」
「25歳です…。」
金井先生が鼻で笑ったような気がした。
「金井先生は、お付き合いしてる人とかいないんですか?」
葉月が問いかけた。
「いないね。一応、これでもモテそうでモテないんだ、実際に付き合うってなると長続きしないんだ。」
「性格の問題だな。」
僕は嫌味たっぷりに言った。
「そうですよね。
女の子って軽い話しが好きなんだよね。
でも僕は1つのテーマをじっくりと討論したいタイプでね。
理屈が多いってすぐにフラれるんだ。」
「じゃあ。武本先生の方が性格いいのかしら。
ちゃんと婚約者もいらっしゃるし。」
田宮がいきなり婚約の事を話しだした。
なっ!田宮の奴余計な事を!
「婚約者?本当に?」
「ええ。きっと素敵な女性なんでしょうね。
私とは大違いで。」
彼女の素直な言い方に胸が痛んだ。
聞きたくない…君の口からは…。
「…なるほど…。
大学からの付き合いとかかな?」
「まぁ…そんなところです。
可愛いですよ。
素直で…僕を好きでいてくれる…。」
そんな香苗に僕は、婚約解消を申し出てる最中なんだが…。
「先生!でも私の方が先生を大好きです!」
葉月が僕の腕を引っ張った。
僕は田宮を横目で見ながら、葉月の頭を撫でた。
こんな事したくないのに…。
「ごちそうさまでした。
私はそろそろ行きます。
清水先生に呼ばれてるので。」
田宮はそういって席を立った。
「じゃあ、またね真朝君。」
金井は田宮に笑顔で手を振った。

金井先生は僕に出来ない事をしている。
彼女に笑顔で手を振り、自分の好みだと告白した。
羨ましくて、それが出来ない自分に腹が立って…切なくて…。
でも、僕が彼女に出来る事は……。

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