手の届かない君に。

平塚冴子

文字の大きさ
110 / 302
2学期

天使達との休日その1

しおりを挟む
入学説明会前に事故があってバタバタしたものの、とりあえず大事にはならなかった。
予定通り日曜日に入学説明会が行われ、僕は清水先生の指示通り、朝からロバ先生と待ち合わせしていた。
動きやすい服装との指定で僕は黒のダウンジャケットにグレーのパーカー黒のデニムで頭もブラシを通しただけの大学生仕様にしていた。

「武本先生!」
白の軽ワゴン車からロバ先生が手を振って来た。
「おはようございます。って…!」
田宮 真朝!何で…ええっ!?
車には田宮と牧田が乗っていた。
「うぃ~っす武ちゃん。」
パンダのブード付きパーカーの牧田が顔を出した。
「おはようございます。武本先生。」
奥の座席から田宮が挨拶した。
上・下黒ジャージのロバ先生が車から降りてきた。
「おはようございます。清水先生から聞いてないんですか?」
「実は何1つ教えてもらってなくて。」
「そうですか。児童養護施設のボランティアですよ。」
ちくしょう!
田宮が来るから秘密にしてたんだな!

「あ…。」
僕は車に乗ろうとして躊躇した。
何で牧田は助手席に乗ってんだよ!
必然的に田宮の隣になっちまうじゃね~か!
しかも軽ワゴン車!狭いんだよ中!
「あ~牧田…後ろ…。」
「嫌っ!銀ちゃん助手席がいいの!」
マジかよ!そりゃ、嬉しいよ!嬉しいけどもね。
僕だって男なんだよ!くそっ!
「すいません。痩せてないから狭くて。」
田宮が嫌味を言った。
「そうじゃない!そうじゃなくて…。」
僕の気持ちの問題なんだよ!
僕の心臓はすでにバクバクだった。
「とにかく、乗って下さい武本先生。」
仕方ねぇなもう!
僕はダウンジャケットを脱いで車に乗り込んだ。
クソ牧師の罠に掛かってしまった。

隣りに座る彼女はデコルテの開いたピンクのセーターに白のデニムパンツというラフな格好だった。コートは膝の上で畳まれていた。
あ…!ブレスレットしてる…!
心臓の音はさらなる高揚をし始めた。
狭い車内で車が揺れるたびに、僕の身体は彼女の身体に触れていた。

僕は顔の緩みを抑える為に口元に手を置いた。
勘弁してくれ!嬉しいんだよ!マジ嬉しいんだけど…理性が…!
この目の前に見える彼女の左手。
僕のプレゼントしたブレスレットをしてる手を握りたくてたまらない!
手を繋ぎたい…!!

「武ちゃん、何か喜びすぎ!」
牧田がアンテナで鋭く指摘してきた。
「はああ?誰が喜んでんだよ!」
はい。メチャメチャ喜んで興奮してます。
「そうね。
好きな人だと良かったんでしょうけど。
すいません。私なんかで。」
「いや…!そういう意味じゃ!」
だから、好きな人が君なんだってば!
興奮を抑えるのに必死なんだよ!
欲望抑えるのに精一杯なんだよ!

車の中で僕は自制心と欲望の狭間でもがきまくっていた。
これ…着くまでもつかな僕。

「田宮…えっ…とこの前、金井先生に送ってもらった時、何話したんだ?」
うわー馬鹿!テンパり過ぎて何の質問してんだよ!
「金井先生の昔のお話しをしてもらいました。学生時代とかの。
昔の写真とかも見せてもらいました。」
「へ、ヘェ~そう。」
聞かなきゃ良かった~!
何だよ仲良くしてんじゃん!くそっ!
「ひゃつひゃつ!武ちゃん自爆ぅ!」
牧田がウケまくってた。
「うるさい!自爆って何だよ!」
確かに自爆しましたよ!木っ端微塵にな!

「着きましたよ。児童養護施設」
ロバ先生が駐車場に車を止めた。
「つ…着いた。」
僕はすでに疲労困ぱい状態だった。
「先生、いきますよ。」
車を降りた田宮が僕の袖をツンツン引っ張った。
「あ、ああ。」
また、こいつは…!
無意識に可愛い仕草しやがって!このぉ!
僕は照れ笑いしながら車を降りた。

「武ちゃん、鼻血出さなくて良かったよん!
前の席でドキドキだよお!」
「何で鼻血出すんだよ!遊ぶな!僕で!」
いや…マジ出そうになってたけど。
妖怪恋愛アンテナは痛いとこ突いてくるよな~まったく!
「良かった。
武本先生、銀ちゃんと仲直りしてくれて。」
田宮が僕らのやり取りを見て微笑んだ。

うわぁ。マジ可愛い~~!
くそ!これで牧田いなきゃ最高なのに!

「…武ちゃん。今、何か変な事考えてたでしょ~。」
「ははは。」
僕は乾いた笑いでごまかした。

「さぁ、行きますよ。」
ロバ先生が僕等を施設内に案内した。
施設長室に僕とロバ先生がまず入って挨拶をする事になった。

コンコン。ガチャ。
ドアを開けた。
「失礼します。
清水先生の紹介でボランティアに
来ました。高橋です。」
ロバ先生が入ってすぐに挨拶をした。
「まあまあ。ようこそ。
児童養護施設 星の子館へ。
施設長の桜井です。
清水先生にはいつもお世話になってます。」
「今日はこちらの武本先生と女生徒2人でボランティアのお手伝いをしたいと思います。
よろしくお願いします。」
「武本です。
よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
まず、クリスマスツリーの装飾をお願いします。
結構大きなツリーなの。
ホールに材料が用意してありますから。」
「わかりました。
では、ホールに行って来ます。
武本先生、行きますよ。」
僕等は部屋を出るとホールへと向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...