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2学期
恋する男…2人…
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今日1日、結局僕は職員室を出る度に生徒の視線を集める事から職員室以外何処にも出かけられず、お昼に至っては清水先生の愛妻弁当を食べる状態だった。
放課後も興味深々の生徒が廊下にいてなかなか旧理科準備室に行けない状態だった。
今日は諦めた方が良さそうだ。
本当は今すぐにでも行って、旧理科室の彼女に謝罪とお礼を言いたかった。
けれど…それが逆に噂になっては元も子もない。
マンションに帰ってから…電話…。
何だかそれも違う気がした。
やっぱり、彼女の顔を見て心から感謝してる事を伝えたい…。
明日の早朝がベストか…。
僕の写真の犯人への怒りなんて何処かへ行ってしまっていた。
僕は職員室で彼女が帰宅したのをGPSで確認した。
せっかく、しばらくスッキリしていたはずの頭の中がまた彼女でいっぱいになっていた。
「何で僕なんかの為に…。」
彼女の行動が僕の気持ちを増大させていた。
こんな気持ちのまま…クリスマスイブを迎えるのかと思うと…。
いっそ、自分の気持ちを全部ぶつけて吐き出してしまいたかった。
出来ないとわかってるくせに…。
「まだ、帰らないのか?」
清水先生が自席に戻って来た。
「いえ、そろそろ帰ります。」
「お前。今。
田宮の事を考えてたろ。」
「へっ…。」
「嫌いじゃないぞ。
お前のそういう顔。」
「何すかそれ?」
「そうだなぁ…辛そう、苦しそうけど…なんか…幸せそうな…そんな感じだ。」
幸せそう…僕の顔が…?
「何かMみたいな言い方じゃないですかソレ。」
「Mか?だははは。そうだな。」
「ははは。」
僕も清水先生につられて笑ってしまった。
幸せ…。
個の幸せが普通の幸せとは限らない。
そうなのかもしれない。
僕の幸せは…多分…他人には認められない幸せなんだと…そう感じた。
自宅マンションに帰宅して僕はコンビニ弁当を開けた。
「やっぱり…美味くない。」
彼女のおにぎりの方が何倍も美味しかったなぁ。
僕は半分程食べて残してしまった。
ブルルル。ブルルル。
携帯が鳴った。
久瀬からの電話だった。
「お疲れ様~。
今日は大変だったね~。」
「はああ?お前知ってんのか?
今日何があったか。」
「だって仕掛けたの俺だもん。」
「!!」
なんてこった!まさか…あの牧田とつるんでやってたのはコレか!?
「お前!やっていい事と悪い事が…!」
「武本っちゃん。
田宮に謝りに行かないでね。」
「はああ?何言ってんだよ!
こっちが迷惑掛けたんだぞ!」
彼女は僕の為に教頭にまで説得しに行ったんだぞ!
「だから…《勉強会》までは田宮に迷惑かけっぱなしでいてくれって言ってんの。」
久瀬の言葉に耳を疑った。
「そんなの出来るわけないだろ。」
「しなきゃいけないんだ。
田宮の心の中のあんたの存在がどれだけ大きくなって行くか確かめないとね。」
「久瀬…!お前!」
「言ったろ、田宮を焚きつけるって。
田宮は動いた。誘いに乗った。
後は彼女に変化が起きるかどうかだ。」
「そんな…。田宮が苦しむ…。」
彼女の困惑したあの表情が浮かんだ。
「ああ、そうだな。」
「お前はそれでいいのか?」
「武本っちゃん。
本気の恋愛ってのは痛みを伴うんだよ。
そろそろ理解して欲しいね。」
久瀬の言葉に僕は何も言えなくなってしまった。
確かに…そうだ。
これで本当に彼女の心が見られるのか…?
僕は1週間耐えられるだろうか…。
久瀬からの電話を切った僕は、混した頭を抱えながら風呂に入った。
久瀬の仕掛けた罠に…彼女は何故掛かってしまったのか。
よく考えたら彼女には何1つ関係のない事なのに…全ては僕の為なのか…?
それだけの為に…君は…君は…。
僕は…君の心に触れる事が出来るだろうか…触れたい…君の心に…君の全てに…。
翌朝、外はひときわ寒さを増していた。
旧理科準備室の電気ストーブをつけてコートを着たまま、コーヒーを入れた。
空っぽの小瓶はまだ机の上に置いてある。
飴…入れておこうかな…。
足音が近づいて来た…。
あれ…彼女ともう1人…。
僕は中扉の小窓を覗いて彼女が入って来るのを待った。
ガチャ。
赤いマフラーに紺のダッフルコート姿の彼女の後ろから、白衣の金井先生が入ってきた。
彼女は暖房のスイッチを入れてコートを脱ぎ始めた。
「で、今日は何の用ですか?」
「用って、特にはないけど。」
「じゃあなんで、ここにいるんですか?」
「決まってる。
君と一緒にいたいんだ。
少しの時間も惜しいんだよ。」
「変わってますね。」
彼女は淡々と金井先生の言葉をかわして行く。
「君だって変わってるだろ。」
「自覚してます。」
「教頭に詰め寄ったらしいね。」
「迷惑な騒ぎですから。
早く終わって欲しかっただけです。」
急に金井先生が彼女の右手首をつかんだ。
「本当にそれだけ?」
「他に何が…?」
「真朝君、そろそろ理解して欲しいんだ。
武本先生も僕も…先生である前に…君の前では単なる男だ。…女性である君を求める男なんだよ。」
「…私には…わかりません。」
彼女はまるで、睨むかのように金井先生を真っ直ぐ見据えた。
「だったら、わかるようにしてあげよう。」
「あ…!」
金井先生は掴んだ手をグイッと引き寄せた。
そして、彼女の腰に手を回してキスをした。
「!」
金井先生!!
軽いキスなんかじゃなかった…。
力強く彼女を抱きしめ、熱くて長いキスをした。
僕は見ていられず、中扉の下にしゃがみ込んだ。
会話は全く聞こえて来なかった…。
放課後も興味深々の生徒が廊下にいてなかなか旧理科準備室に行けない状態だった。
今日は諦めた方が良さそうだ。
本当は今すぐにでも行って、旧理科室の彼女に謝罪とお礼を言いたかった。
けれど…それが逆に噂になっては元も子もない。
マンションに帰ってから…電話…。
何だかそれも違う気がした。
やっぱり、彼女の顔を見て心から感謝してる事を伝えたい…。
明日の早朝がベストか…。
僕の写真の犯人への怒りなんて何処かへ行ってしまっていた。
僕は職員室で彼女が帰宅したのをGPSで確認した。
せっかく、しばらくスッキリしていたはずの頭の中がまた彼女でいっぱいになっていた。
「何で僕なんかの為に…。」
彼女の行動が僕の気持ちを増大させていた。
こんな気持ちのまま…クリスマスイブを迎えるのかと思うと…。
いっそ、自分の気持ちを全部ぶつけて吐き出してしまいたかった。
出来ないとわかってるくせに…。
「まだ、帰らないのか?」
清水先生が自席に戻って来た。
「いえ、そろそろ帰ります。」
「お前。今。
田宮の事を考えてたろ。」
「へっ…。」
「嫌いじゃないぞ。
お前のそういう顔。」
「何すかそれ?」
「そうだなぁ…辛そう、苦しそうけど…なんか…幸せそうな…そんな感じだ。」
幸せそう…僕の顔が…?
「何かMみたいな言い方じゃないですかソレ。」
「Mか?だははは。そうだな。」
「ははは。」
僕も清水先生につられて笑ってしまった。
幸せ…。
個の幸せが普通の幸せとは限らない。
そうなのかもしれない。
僕の幸せは…多分…他人には認められない幸せなんだと…そう感じた。
自宅マンションに帰宅して僕はコンビニ弁当を開けた。
「やっぱり…美味くない。」
彼女のおにぎりの方が何倍も美味しかったなぁ。
僕は半分程食べて残してしまった。
ブルルル。ブルルル。
携帯が鳴った。
久瀬からの電話だった。
「お疲れ様~。
今日は大変だったね~。」
「はああ?お前知ってんのか?
今日何があったか。」
「だって仕掛けたの俺だもん。」
「!!」
なんてこった!まさか…あの牧田とつるんでやってたのはコレか!?
「お前!やっていい事と悪い事が…!」
「武本っちゃん。
田宮に謝りに行かないでね。」
「はああ?何言ってんだよ!
こっちが迷惑掛けたんだぞ!」
彼女は僕の為に教頭にまで説得しに行ったんだぞ!
「だから…《勉強会》までは田宮に迷惑かけっぱなしでいてくれって言ってんの。」
久瀬の言葉に耳を疑った。
「そんなの出来るわけないだろ。」
「しなきゃいけないんだ。
田宮の心の中のあんたの存在がどれだけ大きくなって行くか確かめないとね。」
「久瀬…!お前!」
「言ったろ、田宮を焚きつけるって。
田宮は動いた。誘いに乗った。
後は彼女に変化が起きるかどうかだ。」
「そんな…。田宮が苦しむ…。」
彼女の困惑したあの表情が浮かんだ。
「ああ、そうだな。」
「お前はそれでいいのか?」
「武本っちゃん。
本気の恋愛ってのは痛みを伴うんだよ。
そろそろ理解して欲しいね。」
久瀬の言葉に僕は何も言えなくなってしまった。
確かに…そうだ。
これで本当に彼女の心が見られるのか…?
僕は1週間耐えられるだろうか…。
久瀬からの電話を切った僕は、混した頭を抱えながら風呂に入った。
久瀬の仕掛けた罠に…彼女は何故掛かってしまったのか。
よく考えたら彼女には何1つ関係のない事なのに…全ては僕の為なのか…?
それだけの為に…君は…君は…。
僕は…君の心に触れる事が出来るだろうか…触れたい…君の心に…君の全てに…。
翌朝、外はひときわ寒さを増していた。
旧理科準備室の電気ストーブをつけてコートを着たまま、コーヒーを入れた。
空っぽの小瓶はまだ机の上に置いてある。
飴…入れておこうかな…。
足音が近づいて来た…。
あれ…彼女ともう1人…。
僕は中扉の小窓を覗いて彼女が入って来るのを待った。
ガチャ。
赤いマフラーに紺のダッフルコート姿の彼女の後ろから、白衣の金井先生が入ってきた。
彼女は暖房のスイッチを入れてコートを脱ぎ始めた。
「で、今日は何の用ですか?」
「用って、特にはないけど。」
「じゃあなんで、ここにいるんですか?」
「決まってる。
君と一緒にいたいんだ。
少しの時間も惜しいんだよ。」
「変わってますね。」
彼女は淡々と金井先生の言葉をかわして行く。
「君だって変わってるだろ。」
「自覚してます。」
「教頭に詰め寄ったらしいね。」
「迷惑な騒ぎですから。
早く終わって欲しかっただけです。」
急に金井先生が彼女の右手首をつかんだ。
「本当にそれだけ?」
「他に何が…?」
「真朝君、そろそろ理解して欲しいんだ。
武本先生も僕も…先生である前に…君の前では単なる男だ。…女性である君を求める男なんだよ。」
「…私には…わかりません。」
彼女はまるで、睨むかのように金井先生を真っ直ぐ見据えた。
「だったら、わかるようにしてあげよう。」
「あ…!」
金井先生は掴んだ手をグイッと引き寄せた。
そして、彼女の腰に手を回してキスをした。
「!」
金井先生!!
軽いキスなんかじゃなかった…。
力強く彼女を抱きしめ、熱くて長いキスをした。
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