手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

3学期開始です。

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月曜の成人の日を過ぎて火曜日になり、いよいよ3学期に突入した。
始業式の今日はカウンセリングルームはお休みの為、金井先生は来ていない。

始業式準備の為に旧理科準備室に行けないのが悔やまれるが仕方ない。
「おう!やってるな!あけましておめっとさん。」
マイク設置をしている僕に清水先生が挨拶して来た。
「あけましておめでとうございます。」
「冬休みは楽しめたか?」
「ええ。それなりに。」
僕はわざと忙しそうにして深くは話さなかった。
それこそ、学校では話せないような内容の話しだ。
食いつかれるのはごめんだ。

始業式中、僕は腕組みしながらずっと田宮を見つめ続けていた。
もう、他のものなど何も視界に入って来なかった。
「熱いね視線が!」
清水先生が突いてくる。
「仕方ないでしょう。」
「お!素直に言うね。」
「男ですからね。僕も。」

始業式を終えて担任クラスのホームルームへと向かった。
今日は葉月は休むとの連絡があった。
それはそれで僕には都合良かった。
「あけましておめでとう。
年明け最初のホームルームを始めます。」
相変わらず大人しくしている1年3組の生徒に淡々と新学期の説明をた。

僕は軽快にホームルームを終えると、すぐさま1年4組のクラスを覗いた。
「牧田!こら!こっち来い!」
「あ…おはよう。武ちゃん。」
牧田は僕の顔を見て少しだけビクついた。
僕は牧田の襟首を引っ張って廊下の端まで連れて行った。
「何で田宮にケーキ販売の手伝いさせたんだ?」
見下ろすように腕組みして言った。
「あ…とぉ。
金井先生とは過ごして欲しくなかったんよ。
真朝、結構無理して金井先生に合わせてるみたいな感じだったし。
武ちゃんとなら…それは無いかな…なんて。」
クシャクシャ!
「ありがとう!牧田!感謝してるよ!」
「きゃあああ!武ちゃんヒドい!ヘアが乱れるぅ~!」
僕は嬉しさと感謝の気持ちを牧田の頭をクシャクシャに撫でる事で表現した。
妖怪恋愛アンテナはさすが恋愛に関しては上手だった。
おかげで、何よりも楽しいクリスマスイブを過ごせたのだ。

「あら。銀ちゃんと遊んでるんですね。」
田宮が声を掛けてきた。
「ヒドいのよ!武ちゃん!頭クシャクシャに!」
「そうね~。
でも武本先生に直せないから私がやってあげるわ。
先生も、あんまり銀ちゃんをイジメないで下さいね。」
「あ…おう。」

言葉が出なかった。
感情が爆発しそうだった。
そこに…すぐ側にいる彼女を抱きしめたくて仕方なかった。
あのクリスマスイブの彼女の唇の感触がたまらなく良くって…。

「武ちゃん!エロ~~い!ヨダレ!」
「ば!バカな!ヨダレなんて!」
はい、完全に出てましたよ!
牧田に指摘されて慌てて口元を拭いた。
「英語の先生って口元緩いんですかね?
勉強になります。」
田宮が嫌味を言ってきた。
「何の勉強だよ。それ。」
「ふふふっ。」
彼女が笑った。
もう顔なんか緩みっぱなしになってしまう。
「田宮もやってやる!」
僕は彼女の髪の毛を優しくクシャクシャした。
「きゃっ!やめてくださいよ~。」
「すっげー可愛い!可愛い!」
「可愛くないですって!
生徒への愛情表現変ですよ!もう!」
彼女は少しだけ膨れた。
「あはは。ほら、膨れて可愛い!」
僕は素直に彼女にそう言えていた。
可愛い…愛おしい。
僕は僕を否定する事なく、そう思った。


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