手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スキー体験合宿1日目その1

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スキー体験合宿1日目。
僕はスキーをするし、3泊4日もホテルに宿泊するとあって、髪を下ろしてメガネもスポーツタイプのものに変えた。
集合場所では生徒がゾロゾロと自分のクラスのバスに乗り込んでいた。
「武本先生~スキー場でナンパするつもりでしょう。」
「大学生のふりして女子大生狙ってんじゃねー?」
相変わらず1年4組の生徒は僕をイジってくる。
「ほらほら!バス来てんだぞ。
モタモタしてないで自分のクラス行けよ!
点呼取るぞー!」
腕組みしながらイライラ気味に言った。

今朝は田宮に会ってない。
彼女も直接クラス集合場所に来てるはずだ。
この分じゃスキー場まで会えないかな。
サービスエリアで休憩があるが、わずか15分だ。
1年3組の生徒とずっと一緒のうえ、田宮にしばらく会えない苦しさで僕のストレスはハンパなかった。
昨日は推薦入試で校内生徒立ち入り禁止で田宮も登校していない。
つまり、昨日も会ってないのだ。
朝…携帯で電話でもして声聞けば良かったな…。はぁ。

ゴチッ!
清水先生が僕の頭にゲンコツを食らわした。
「もう!朝からどつかないで下さい!」
「ボーっとしてっからだよ。」
「いいですね。清水先生のクラスは。
バスの中楽しそうで…。」
「はああ?お前自分のクラスくらい自分で盛り上げろよ!」
「無理…気力もない…。」
田宮に会えないせいでテンション、ダダ下がりだった。
「まったく。姫はもうバス乗ってるぞ。」
「あ、やっぱり。」
「お前その格好で、そのテンションは落第生感出るぞ!」
「ははは。」
「怖っ!俺はもう行くぞ!」
清水先生は僕に呆れて1年4組のバスに乗り込んでしまった。

僕は脱力しながらバスに乗った。
午前7時半バスが出発し、1年3組もそれなりに実行委員もいて、しおり通りに車内レクリエーションが行われたが、そもそも、このクラスはノリが悪い。
車内の空気感はハンパなく気まずい感満載だった。
僕はフォローする事なく田宮の事ばかり考えていた。
くそぉぉぉ!田宮に会いてぇえ!
歯ぎしりしてしまうほどのストレスだ。
僕は一昨日の彼女の手の温もりを思い出して自分の手を握った。

悶々とした状態のまま、バスはサービスエリアに止まった。
「休憩時間15分!遅れるなよ!」
吐き捨てるように3組の生徒に言って、僕はバスを速攻降りた。
4組のバスの位置を確認した。

「清水先生~!」
僕は清水先生に話し掛けるふりをして4組のバスに近づいた。
「うわっ!今日のお前の顔怖いって!」
「はぁはあ。失礼ですね。はぁ。」
猛ダッシュの為に息が切れた。
「姫いねぇぞ!さっき牧田とバス降りたし。」
「えっ…。そうっすか…。」
「ったくお前はぁ。
仕方ねーな。自分の荷物持って来い!」
「へっ?荷物…?」
「バス代わってやるよ!
どうせこっちは、うるさすぎて寝れやしねぇ。
3組のバスならゆっくり寝れるだろ。」
清水先生は頭を掻きながら言った。
「ほ…本当にいいんですか?」
「言ったろ。俺は眠いんだ!」
「ありがとうございます!!」
「点呼だけはちゃんとやれよ。」
「はい!」

僕は急いて3組のバスから自分の荷物を降ろして清水先生と入れ違いで4組のバスへ向かった。
バスに乗り込んだ僕に、乗っていた4組の生徒数人か驚いた。
「武本先生どうした?」
「シミ先うるさくて逃げたんじゃね。」
僕はとりあえず、荷物を最前列に置いた。
「清水先生と交代した。眠いそうだ。」
僕の説明に生徒はすぐに納得した。
「3組なら確かに寝られるな!」
「お通夜みてぇだしな。あはは。」
…あはは…確かにそんな感じだ。

「あり??武ちゃんどったの?」
牧田と田宮が戻って来た。
「清水先生が眠いって交代した…。」
「これからが、本番なのにぃー!シミ先逃げたなぁ!」
牧田が拳を上げて怒った。
「ようこそ4組のバスへ。武本先生。」
田宮が首を少し傾げて笑いながら言った。
うう~!可愛い!これ!これが見たかった!
僕のテンションは一気に急上昇した。

「お待たせいたしました~~!実行委員の特別レクリエーション!!ハイ拍手!」
パチパチパチパチ!
バスが出発して、牧田司会の元レクリエーションが始まった。
「いいぞ~牧田!」
「ひゅー!」
僕は最前列での牧田のマイクパフォーマンスに耳を塞いだ。
何が始まるんだ??
「今から石井君がポッキーを全員に一本づつ渡します。食べちゃダメダメ!咥えるだけよん!」
石井はアシスタントらしく、ポッキーを配り始めた。
僕も強制参加らしい。
「はい!注目~~っ!
このピンクのリング!
ツルツル加工でございます!
今からこちらが指示した席番の人がリングをポッキーに通します。
次に指示した席番の人そのリングを手を使わずポッキー移しで渡して下さい。
落とした人は罰ゲーム決定!!」
「罰ゲームだってよー!」
「マジかよ!男同士だったら最低!」
「ウケる~あははー!」
かなり盛り上がって来た。
3組とは大違いだ。
雰囲気もさることながら企画が凄い。

「ゲーム!スタート!」
牧田の指示でゲームが次々と行われた。
「次!C3からA1!」
牧田が僕にウインクした。
えっ…まさか…。
僕は後ろを振り返った。
田宮の席番がC3だった。
「すっげ~!犬猿の仲だぜ!」
「田宮!武本ワザとハメるなよ!」
外野が騒ぎ立てた。
僕と田宮は通路に立った。

マジかよ…。くそっ緊張感ハンパねぇ!
お互いポッキーがあるので喋れない。
田宮はゆっくりポッキーの先にリングを少しずつズラしてきた。

うわ!うわー!
田宮のポッキーを咥える口元がヤバいくらいにエロい!!
そんな色っぽい表情すんなよ!みんなの前で!

僕は咥えたポッキーでリングを引っ掛けるようにして取った。
僕の顔は多分かなり赤くなっていた。

「セーフ!真朝はセーフ!次は…。」
牧田の司会でバスの中には盛り上がって本当にうるさかった。

時折、バックミラーに映る彼女を見て僕は幸せを感じていた。
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