手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スキー体験合宿2日目その3

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久瀬は僕だけの田宮のウェディングドレス姿の写真を撮らせようとしたんだ。
たった一枚の写真…僕だけの…彼女の写真。
「写真撮ろう。
せっかくだから。
ウェディングドレス着てみろ。」
「でも…。」
彼女は戸惑い悩んでいた。
「僕が見たいんだ。」
僕はそう言って、スタッフの前に彼女を押し出した。
「では、始めにメイクとセットをしますので、こちらへ。」
「…あの…はい。」
彼女はスタッフの1人と一緒に奥に消えて行った。

「では、ウェディングドレスの選定をお願いしてもよろしいでしょうか?
久瀬様より男性の方に選んで貰うようにと言付かっております。」
そう言って、ウェディングドレスのカタログを手渡された。
「こちらに、ブーケなどの小物も選べますのでどうぞ、お申し出下さい。
では、お茶をお持ちしますので、ごゆっくりお選び下さい。」
スタッフは奥に消えて行った。

僕は客用のソファーに腰掛けカタログをペラペラとめくった。
…スタッフの目には僕はどう見えたんだ?
田宮は制服着てるし…僕はスーツだし。
やっぱり、教師と生徒だよなぁ。
教師と生徒でこういう写真撮るなんて…不自然すぎるよな…外道だよな…多分。
自分の現状にちょっとヘコんだ。

でも…彼女のウェディングドレス姿はやっぱり見たい!
しかも僕だけの写真が手に入るなら!
冷たい視線なんて!
僕は気合いを入れてカタログを見た。

あまり華やかなのは似合わないな。
色はやっぱり白かな…Aライン…いやマーメイドのスッキリしたフォルムで…。
肩と背中が出てる方が綺麗だな…。
ベールが長めで…ブーケは…白薔薇より白百合だな…。
花言葉が純潔…彼女にピッタリだ。
って…いいんだよな。
僕の欲望満載でも…僕だけの写真だし。
完全に鼻の下が伸びてる気がするくらいに頭の中は彼女の妄想でパンパンだった。

「お決まりでしょうか?
そろそろメイクも終わりますので。」
「あ!はい。えーと。
これと…これで…。」
僕は選んだ物をスタッフに告げた。

スタッフが出したコーヒーを飲んで一息ついた。
ドキドキ…。
別に、自分と結婚する訳じゃないし、一緒の写真を撮る訳じゃないけど…。
僕の心臓は喜びと期待で跳ね上がるくらいドキドキしていた。

しばらく待ってると、スタッフがやって来た。
「準備が整いました。
撮影スタジオの方にご案内致します。
どうぞこちらへ。」
「どうも…。」
席を立ってスタジオへと足を運んだ。
「とても良い仕上がりになってますよ。
白い肌がとてもウェディングドレスと合っていて。」
スタッフからの言葉にさらに期待で胸が膨らんだ。

写真スタジオの中は洋風の中庭をモチーフにしたセットが組まれていた。
緑の中で白いウェディングドレスの彼女がそこに立っていた。
シンプルなマーメイドの背中が大きく開いた白い光沢のあるドレス、カールされてまとめられた髪に掛かる大きめの長いベール、小ぶりのダイヤモンドネックレスとイヤリング、腕の傷を隠す肘までの白い手袋、大きめの白百合のブーケ、口紅の紅が差し色になって一際映えていた。

わっ!わー!わー!
すっげ~!
もう!たまんねーー!

僕のテンションは振り切れそうだった。
恥ずかしそうにうつむく彼女が可愛くて可愛くて…!

撮影が終わると、僕はすかさずに彼女に駆け寄った。

「凄ぇ綺麗だ。可愛いよ。」
彼女は照れて頬を真っ赤に赤らめた。
ブーケで顔の下半分を隠していた。
「本当に誰にも、写真見せないで下さいね。」
「ああ。2人だけの秘密だ。」
「お願いします。」
「もっと…よく見せて。」
彼女の持つブーケを下に下げて彼女の顔をじっくりと見つめた。
彼女は恥ずかしそうにして、視線を合わせなかったが、それがより一層いじらしくて僕の胸は興奮状態だった。

これが…本当の結婚式なら、この彼女に誓いの口づけをするんだよな…。
…してぇ!マジ、キスしたい!!
けど、スタッフもいてそんな事出来るはずもなく、僕は妄想だけに留めた。
「そろそろ…着替えてきますね。先生。」
彼女はそんな僕を現実に引き戻した。
「あ…そうだな。」

後ろ髪引かれる思いで、ロビーのソファー
で彼女を待った。
「写真の方は御自宅に郵送させて頂いてよろしいでしょうか?」
スタッフに声をかけられた。
「あ…はい。」
「では、希望サイズと郵送先の記入をよろしくお願いします。」
僕は記入用紙に記入した。
「あの…料金は?」
「久瀬様からお支払い頂いておりますので、御安心下さい。」
「あの…その…変ですよね…僕等は…。」
どう見ても教師と生徒でこんな…。
「とてもお似合いのお二人ですよ。
早く、本当の結婚式が出来る事をお祈りさせて頂きます。」
スタッフは迷いなく、すんなりと僕に言ってくれた。
「あ、ありがとうございます。」
営業スマイルなんだろうけど…でも、僕は少しだけ自信が持てた気がした。
僕が君を好きになる事はそれ程非常識な事ではないと…。
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