手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スキー体験合宿2日目その6

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田宮は牧田と部屋へ、僕は清水先生に引っ張られるようにして部屋へ連行された。
清水先生は廊下に人がいないのを確認してドアを閉めた。
「ほら、そこ座れ!」
「は…い…。」
緊張感が部屋に充満していた。
僕は恐る恐る椅子に座った。
「お前、今日丸一日仕事しないで田宮とイチャついてたのか?」
「…言い訳しません!
すいません、その通りです。」
「ったく…勢いつきすぎだろ。
極端なんだよ。
お前の行動は…フォローするこっちの身にもなれよ。」
「はい…。」
僕は頭を下げたまま返事をした。
「…じゃあ!洗いざらい話してもらおうか。
何してたんだよ2人で。」
清水先生はいやらしい興味深々の顔で僕を覗き込んだ。
う~~!くそっ!
あんたの興味はそこだろ!

「えーと、午前中に田宮のウェディングドレスの写真を撮って…。」
「はああ?ウェディングってお前…!」
「違う!違う!1人ウェディングって、今流行ってる写真ですよ!
別に隠れて式を挙げた訳じゃありません!」
あー。びっくりした。
確かにウェディングって聞いたら勘違いするよな。
「つまり…田宮のウェディングドレス姿の写真が欲しくてって事か?」
「まぁ…そんなところです。」
「また中途半端だなぁ。お前等は!」
「昼食は牧田達と食べて少し買い物を…。
で、その後夕陽を見に湖に…。」
「んんんんん?まさかそれだけ?」
「はい、それだけです。」
「なんだよ!
仕事サボってそれだけかよ!
もっと何かしらあるだろう!
肩を抱き寄せてキスするだの!
愛の告白するだの!」
「ありません…でしたね。何も…。」
「うぉいい!突っ込み入るぞ!
男としてそれはどうなんだよ!
あ~~イライラする!」
「僕だって告白くらいしようと思いましたよ!
清水先生の電話さえ無けりゃね!」
「あ!あのタイミングで告白しようとしてたのか?」
「ええ…まぁ。」
「…運が無ぇな…お前…。」
ボソッと清水先生が呟いた。
「言い方!
その言い方やめてもらえますか!
わかってますよ!ンな事!」
もう切なすぎるだろ~!
僕は手で顔を覆った。
告白を失敗した僕は思ったよりヘコんでいた。
そんな僕に清水先生が何かを差し出した。

「ほら、運気上がるように貸してやる。」
赤い天然石の組み込まれた十字架を差し出した。
「えっ!勧誘ですか?
買いませんよ!怪しいグッズなんて!」
ボカッ!
いきなりぶん殴って来た。
「怪しくねぇ!遥のロザリオだよ!ボケ!」
「痛ぇ。って…遥さんの!?」
「運気が付くように明後日まで貸してやるよ。
着けとけ!御利益あるから。」
「あ…でも。」

おもむろに、清水先生は席をたって窓の方に寄りかかった。
「俺さメグちゃんに、ずっと謝り続けてる事があってさ。」
「えっ?謝り続けて?」
何をいきなり言い出すんだ?
「俺は死んだら…遥の元に行くつもりだ。
メグちゃんでも子供でもない…まっすぐに遥の所にだ。
非難されるかもしれないが、これだけは譲れない。」
「清水先生…!」
「後悔するな…。失敗を恐れるな…。
愛する者を守る為の鉄則だ。
他に犠牲があってもだ。
わかるな…。」
「はい…。」
まだ僕は勇気が足りなかったのかもしれない…。
僕の底に眠る臆病な僕がゴソゴソと動いているのかも…。
どうしよう…出来れば勉強会の前に告白しておきたかったんだけど…。

僕はロザリオを握り締めた。
いや…まだ時間はある。
チャンスを逃さなければきっと…。

清水先生と話し終えた後、僕は夕食前に久瀬に電話をかけた。
「えええ~!!告白しなかったのかよ!
あのシュチュエーションで?
あのセッティングで?
おいおい。ヘタレにもほどがあるって!」
「僕だってヘコんでんだから、追い打ちかけるなよ。
告白しょうとしたけど、タイミング悪くて失敗したんだよ。」
「そっか…金井先生いない今がチャンスだと思ったんだけどな俺は。」
「まだ…時間はあるだろ。」
「お!おお!何?
武本っちゃん!やる気じゃん!」
「いつまでも、周りの力を当てにしてちゃダメだろ。
とにかく、このイベント中に出来れば告白したいんだよ。僕も。」
僕だって、もう我慢の限界に来てる。
このはち切れそうなほど膨れ上がっ彼女への想い…吐き出さなければいけないんだ。

「自分でやらなきゃ。
そうだろう。」
「うう~。武本っちゃん!
惚れちゃうじゃん!」
「惚れるな!やめろ!それだけは!」
「ケチ!俺だってなぁ…まいいか。
とにかく頑張れよ。」
「おう!」
僕は久瀬との電話を切って、夕食の為に食堂へ向かった。

食堂の入り口で田宮が電話をしているのが目に入った…。
まさか…金井先生?
僕は柱の陰に隠れて聞き耳を立てた。
「ごめんなさい。
でも…心配だったし。
怒らないで。」
ん?金井先生じゃなさそうだ…。
「寒いから暖かくしてね。
お姉ちゃん。」
…お姉ちゃん!?田宮 美月か?
姉を気遣って電話してたのか?
…あんなのでも…彼女にとっては姉なんだな。
…おそらく…母親も…彼女は憎めない…。
残酷だな…現実は残酷過ぎる。
まだ…憎んだ方がマシなのに…。

僕は彼女の優しさが辛かった…。
家族と言う足かせから逃れられない彼女。
そして…久瀬もまた同じ足かせを持っている。
僕には…足かせがあるのだろうか?
彼女と同じ場所に立つ僕の足かせは?

彼女が電話を切って食堂に入ったのを確認して僕も食堂に入って行った。
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