手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スキー体験合宿終了

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それから僕は彼女をそっと部屋に戻して
僕はダウンジャケットを部屋に戻した。
部屋に清水先生はいないようで、まだミニ新年会は続いているようだ。
本来なら戻るべきなんだろうけど…。
僕はさっきまでの余韻に浸りたかった。

僕は胸のロザリオを外して手に持った。
「彼女が僕にドキドキする事があるなんて思わなかった…。」
でも、確かに彼女の胸の鼓動は激しく、僕と同じ間隔で高鳴っていた。
告白するだけのつもりだったのに…。
あんなに長くキス出来るなんて…。
遥さんのお掛けかな…。
本当に御利益あったな。
僕はロザリオをそっと机の上に置いた。

スキー体験合宿は明日の朝帰宅して終了となる。
そして…明後日には《勉強会》が行われる。
年末年始から今日まで僕と彼女の距離は一気に縮まってる…確実に…。
もっと自分に自信を持とう…。

僕は新年会に戻らずにベッドに入る事にした。
今夜の事を夢で見られるようにと…。
きっと、明日は清水先生に怒られてしまうのだろうけど。


「うおぉぉ。気持ち悪っ…。」
翌朝、午前6時。
隣のベッドから悲痛な声が響いてきた。
「あはは…おはようございます。
清水先生。
昨夜は…かなり呑まされたんですね。」
「くそっ!ロバの野郎が武本探すって、動く度に足止めして呑んだらこのザマだよ!
後日、じっくり話を聞かせろよ。」
「あ、はい。ありがとうございました。
それから、このロザリオ。
凄く御利益ありました。」
「おう…そうか。よかったな。」
清水先生は大事そうにロザリオを受け取った。
シャワーを浴びて、スッキリさせてから食堂に向かった。

食堂の職員席は僕とロバ先生意外、全員グロッキー状態で席に座っていた。
「おはようございます。
武本先生。
昨夜は途中から何処へ?」
「あ、いやちょっとお腹の具合が悪くなってしまい…部屋で休んでました。」
「そうでしたか…。
何度か探しに行こうかと思いましたが、清水先生との話しが盛り上がってしまって…。」
「ははは。そうなんっすか?」
僕は必死にトボけた。
こりゃマジで後日、清水先生におごってあげないとマズイな。
一生懸命、僕の為に気を使ってくれた事に目一杯感謝した。
「ロバート先生、お酒強いんですね。」
「そうなんですが…1人で呑みに行けないんですよ。
だから、ああいう会は嬉しくて!」
「1人で呑みに行けない?」
「見かけがこんなのなので、30歳で補導されかかった事も多くて。」
「あーああ。なるほど。」
「1人で呑むのも楽しくないし、何より美味しくないんですよ。
どうです?今度一緒に呑みにいきませんか?」
「えっ…。まあ、その内…。」
絶対に行きたくない!
地獄を見そうだ!

僕はそっと、清水先生の隣の席に移動した。
清水先生は完全にダウン状態で水しか飲んでいなかった。
「帰りのバス大丈夫ですか?」
「無理!4組なんか乗ったら死ぬ!
ゲロ祭りだ!お前4組乗れ!」
「えっ…。いいんですか?」
「3組なら爆睡出来る!4組はお前に任せる!」
乱暴な言い方だけど…多分気を利かせてくれてるんだよな。
本当にいい先輩だな。
「わかりました。4組は任せて下さい。」
「おう!相手してやってくれ!」
これで、帰りも田宮と同じバスで帰れる。
僕はちょっと、はしゃぎたい気分になった。

ホテルの点検を終えて、各バスに生徒を乗せてから僕等教師もバスに乗り込んだ。
「またシミ先逃げたのー?」
「マジ武本?2年行けば?
喜ぶんじゃね?」
「2年行ったら、ヤラれるんだろ!」
「あははー!最低ー!」
4組のバスに乗り込んだ僕は速攻、生徒にイジられた。
「静かにしろ!清水先生は体調が悪くて、静かな3組のバスに乗ったんだ。」
どっ!
4組の生徒が爆笑した。
「静かな3組って!自分で言うなよ!」
「担任の扱いじゃねー!」
「ウケる~~!」
何を言っても爆笑する生徒に僕はお手上げで、そのまま最前列に座った。

バックミラー越しに田宮が見える。
彼女もクスクスと笑っている。
僕はそれを見て、幸せ気分に浸っていた。
告白しても、いつもと変わらない笑顔、変に意識しない彼女の仕草が僕に安らぎを与えてくれた。

「ジャンジャジャーン!
発表!カップル誕生!!ハイ拍手!」
また牧田がレクリエーションを始めた。
「ではでは、今回のこのイベントで4組の中で何名かカップルが誕生しております!
ここで、発表します!
カップルの方が隣の席に座れるように、席を譲ってあげて下さい。」
「ヒューヒュー!」
生徒達は大騒ぎだ。
牧田はマイクを伏せて僕に指示をした。
「武ちゃん、隣の席荷物避けて!開けといて!」
「えっ…。」
僕は一応指示通り隣の席の荷物を足元に避けた。
「ハイハイ!ではお静かに!
まずは1組目!山口さん葉山君!
ハイ立って!立って!
皆さん、祝福の拍手をお願いします!
おめでとう!カップル誕生!」
わ~~パチパチ!
「では席を譲って隣の席に座れるようにしてあげて下さいね!」
そう言って、次々とカップル同士が席に着いて行った。

「ハイ。真朝は香山さんと池田君の為に席を譲って。
ここ!空いてるから席!」
えっ…!牧田!それは…。
「おお!武本と田宮が同席だぜ!」
「ケンカ始めんなよ!」
「牧田!ナイスチョイス!」
他の生徒達がウケて笑い出した。
田宮はゆっくりと僕の隣の席に来た。
「失礼します。
すいません、私なんかで。」
「別に…構わない。」
他の生徒の手間、無愛想を装った。
本当はメチャクチャ嬉しくてたまらなかった。
牧田~~!やっぱりお前いい奴だよ!
僕は顔の緩みを必死に手で隠して抑えた。
彼女は時折、僕に優しく微笑んでくれた。

4組のバスの中はもう、ラブラブモード全開の生徒で大騒ぎ状態のまま、学校へと向かった。
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