手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スウィートキャンディ

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今夜…久瀬との《勉強会》の精査がある。
僕は僕に出来る事を最大限するしかないんだ。
多分、それが彼女の心に触れる事になる。
僕には昔のような迷いはない。

不思議な気分だった…。
この前の勉強会を終えてから、やはり僕は打たれ強くなっている気がした。
まるですぐ隣に彼女がいるかのような安心感と心強さを感じていた。

週明けの朝の職員室は色々と騒がしい。
ミーティングもいつもより長々と掛かっていた。
「武本、お前今週末金曜日開けとけ!」
「えっ?何です。」
いきなり清水先生が僕のネクタイをぐいっと引っ張った。
「…ウリの話しを金井先生とする。」
他の教師に聞かれないように耳元で囁いた。
「あ!…わかりました。
開けておきます。
で、やっぱり場所はあそこなんですかね?」
「決まってんだろ!リクエストしておいた。」
「ったく、抜け目ないっすね。
どんだけ女遊びしたいんすか?」
「バカ!
そんな気無くなったら男としてはおしまいだよ~。
性欲旺盛!元気な証拠!」
「あー。ハイハイ。」
よく言うよ。
そうやって、ふざけてるフリしても。
遥さんしか本気で愛せないくせに…。
どんな人だったんだろう…遥さんって…。

僕は朝のホームルームの為に1年3組へと向かった。
1年教室前の廊下に葉月と見かけない3年女子が話していた。
学級委員か何かの連絡か?
でも…初めて見る顔だな…。
3年女子は僕に気がつくとサッと身を翻して階段の方へ走り去った。
んん?何か引っかかる感じ…。
「…おはよう…ございます。」
「おはよう。葉月、今の3年…。」
「教室に戻ります。」
葉月は僕の言葉を遮り、教室に入った。
何だ…今の?

僕は気を取直し、1年3組に入って行った。

朝のホームルームを滞りなく終えて出て来ると、隣りの教室から出てきた清水先生にいきなり腕を掴まれた。
「あれ、やったのお前だよな!」
「へっ?何です…あれ?」
清水先生は僕の耳元に口を近づけて小さな声で言った。
「姫の首筋のキスマークだよ!」
「あ!!」
えっ…いや…確かに昨日…ええ~!
「身に覚えあるんだな。」
「は…い…。」
「本人が気づいてない今のうちにどうにかさせろ。
金井先生にみつかるぞ。」
「そうですね。
またややこしい事になりますね。」
僕は4組に顔を出した。

しかし…何て言って呼び出そう。
ここは適当な事でも言うしかないか。
「田宮!…その保健室に忘れ物があるそうだ。」
僕は思い切り嘘をブッこいた。
「保健室…ですか?」
自席にいた彼女が立ち上がってこちらに来た。

顔を上げて僕を見る彼女の左首筋に…確かにほんのりと赤くキスマークがついていた。
白い肌がより色っぽく目立たせている。
「あ、僕も用事があるからついでに行く。」
そう言って彼女を連れて保健室前まで来た。

誰も廊下にいないのを確認して、僕は田宮に告げた。
「すまない。」
「えっ?なんですか?」
「えっと…その首にキスマークが。」
「あ…。」
「興奮してなんか…強く吸ってたみたいで…。
本当にゴメン無意識のうちで…あの…。
気づく人もいるから、今日一日は絆創膏でも貼っていてくれ。」
「わかりました。
じゃあ、保健室で絆創膏貰って来ますね。」
「そうしてくれ。
じゃあ、僕はこれで…。」
歩き出した僕の上着を彼女がグイっと引っ張った。
「待って下さい。これ。」
彼女はポケットから小振りのカラフルな飴の袋を差し出した。
「えっ。くれるのか?」
「お土産屋さんで見つけて。
以前の飴はもう無いと思いまして。」
「あ、ありがとう!嬉しい!」
僕は素直に喜んで、それを受け取った。
あの小瓶はまだ旧理科準備室に置いてある。
あれに入れよう。

僕は身を翻して旧理科準備室に飴を置きに行って
白衣のポケットに数個だけ入れて職員室に戻った。
浮かれて戻って来たのが清水先生にバレバレだったようで、すぐさま捕まって席に引きずられてしまった。
「顔が緩んでるっつーの!鼻の下伸び切ってんぞ!」
「すいません!反省してます!」
「キスマーク逆に増やして来たんじゃないだろうな!」
「してません!当たり前じゃないですか!」
このオヤジはぁ~!
清水先生はグイグイ顔を近づけてきた。
「告白の話し、まだ聞いてないぞ。」
「こんなとこで話せませんよ!
それに清水先生には感謝してますが、話のネタにされるのはごめんです!」
「お!生意気だぞ~!」
いきなり職員室でコブラツイストをかけてきた。
「ふふん!」
「後輩をオモチャにするのやめて下さいよ!」

職員室の先生方は呆れ顔をしてこちらを見ていた。
周りからは単なる仲良しの先輩後輩にしか見えていないのだろう。
まさか僕が生徒に恋愛感情を抱いてるなんて、清水先生以外誰も予想していないんだろうな。

僕はもう…向こう側の教師じゃないんだ。
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