手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

暗雲の影その1

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「3年って半分以上ストレートに上の大学に上がるんですよね。」
職員室で僕は清水先生に聞いてみた。
「まぁな。推薦みたいな感じで、内部受験は既に合格なんて12月時点で内定してるようなモンだし。
余裕ブッこいて遊んで補導されるバカも出る時期だな。」
「…つまり…意外に3年の動きが自由?」
「何だ?3年に何か変な事されたのか?」
「あ、いえ別に。
取り越し苦労かもしれないので。」
僕は葉月に近づいていた3年が脳裏の片隅に引っかかっていた。
あれは…名前…なんだっけ…。

「3年のえーっと、ワンレングスのよく赤いリップの…キツネ目の…。」
「愛里か?里中 愛里。大人っぽい奴。」
「そうです!確か彼女だ。
葉月と話してたんですが…違和感ありまして。」
「里中が…葉月と?
確かに接点がない気がする…。
おい!ちょっと注意しといた方がいいかもな。」
清水先生も何かを感じてるようだった。
「そうですね。
一応、気にして見てみます。」
嫌な予感がした…。
浮かれてる自分の裏で田宮 美月が笑ってる…そんな気がしてならなかった。

葉月は確かに厄介な存在ではあったが、仮にも自分の担任するクラスの生徒だ。
何かあってからでは遅い。
注視しなければいけない…。

「バレンタインの約束…そろそろしといた方がよくないか?」
「え??」
何を、このオヤジは急に吹っかけてくるんだよ!
思わず思考停止しただろうが!
「ひと月切ったぞ~。
クリスマスイブ取られた金井先生も、今回は譲る気無いと思うぜ。」
「なっ!そんなの知りませんよ!」
とはいえ…確かに。
次は、そう簡単に譲ってもらえる立場じゃない。
バレンタインかぁ。すっかり忘れてた。
いや…でも告白はしたけど…別に付き合ったり、恋人になったりした訳じゃないし…。

確かに僕は彼女に応えを求めてはいないものの、
やっぱりそこは男の性で、本心を言えば色々したいのは確かだ。
ダメだとわかっていてもついつい…キスしたい衝動にかられてキスマークを首筋につけたりしてしまう。
本当はキス以上だって…最後まで行きたい気持ちが無いなんてのは嘘だ。
けど…それが出来ない事も充分理解している。
彼女の気持ちが無い行為なんてあり得ない。
そんな状態のまま迎えるバレンタイン

今回は…さすがに無理かもな…。
一緒に過ごす理由が見つからない。
「はぁ。」

どうも…ついついマイナス思考に傾いてしまう。
根暗なのかな…やっぱり。
劣等感の子供時代…。
自分の本質なんてそうそう変わるもんじやないのかもな。
僕のマイナス思考を…いつも彼女はプラスに変換してくれていた。
何が合わないだ…最高の相性じゃないか!
僕等はまるで…2人で一つじゃないか…。はは。
そう…思わないか?…田宮。

僕は彼女への想いを膨らます一方だった。

その日、やはり葉月の様子がおかしい。
かなり僕を避けようとしてるのが目に見えた。
授業中でも視線をワザと逸らす仕草が見受けられた。
僕は意を決して、昼食を誘う事にした。
葉月は優等生だ。
下手に生徒指導室とかには呼び出せない。
「葉月!ちょっと話がしたい。
昼食一緒にどうだ?」
「…それは…。」
「2人が嫌なら友達連れて来ていいし、何なら清水先生か金井先生を誘ってみんなで食べてもいいし…。」
「2人で…お願いします。」
「わかった。先に食堂で待っててくれ。」
僕は一旦職員室へ荷物を置きに行った。

職員室にいる清水先生にとりあえず、葉月と話してみると報告をした。
「一応、録音しておけ。
田宮 美月に関係してそうなら、後で金井先生の見解も必要になるだろう。」
「そうですね。わかりました。」
僕は清水先生のアドバイスに従って、葉月との会話をこっそりと録音する事にした。
胸ポケットに入ってるパグ犬のストラップ…。
お守りがてら携帯に付けてみた。
プラプラ揺れると泣きそうな顔に哀愁がただよった。
以前の僕を見てる気分だ。
こりゃ、田宮も放っとけなくなる訳だ。
僕はクスッと笑って携帯をポケットにしまった。

準備万端の体制で僕は葉月との昼食の為に食堂へ向かった。
葉月との席で気を付けたいのは3年が近くにいない事だ。
特に田宮 美月なんかの取り巻きには注意したいところだ。
「葉月!こっちだ!」
僕は葉月を見つけて声をかけた。
いつもの自信たっぷりの様子はなく、頷いてこちらに来た。

僕と葉月はとりあえず、個々に食べる物を注文して、テーブルに向って移動した。
僕はサバ味噌定食、葉月はオムライスを手にしていた。
ちょうど、ロバ先生も2年と食事をしていた。
ロバ先生に付かず離れず、テーブル一つ分空けて僕等は座った。
教師が近くにいると言う事は、危ない奴らは警戒するはずだ。
どうやら、3年も周りに見当たらない。
2年と1年が周りを囲んでいる状況だ。
「とりあえず、食べよう。」
僕は葉月に食事を進めた。
「…はい。」
さて…どうやって、話しを切り出そうか…。
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