手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子の宣言

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廊下に出ると、隣のクラスから出て来た清水先生と鉢合わせた。
「おい!何だありゃ。お前の人気急上昇だぞ。」
廊下でざわつきながら、僕に声を掛ける女生徒達に清水先生は驚いていた。
「それについて、お願いがあります。
今日の昼休み、僕と一緒に彼女達と食堂で食事して下さい。」
「俺を巻き込む気かよ。」
「いえ、ちゃんとした態度を取るつもりではいますが…相手も子供だし…サポートして欲しいんです。」
「ったく。仕方ねーな。
お前には貸しが多いな。」
「そのうち、キチンと返します!」
「そのうちどころか、今夜の話し…色々聞き出してやるからな。
告白の話し聞いてないし。
覚悟しておけよ!」
「げっ…。」
やっぱり、魔女の呪いだろこれはぁあ!
くそっ!
やっぱり、早く田宮から元気を貰いたい。

昼休みに入り、僕と清水先生は食堂に向かった。
途中の廊下から既に何人かの女生徒がついて来ていた。
「武本先生は、お弁当作って来てますから、これを食べて下さい。」
「全員のは食べられないし、君1人のを食べるのも何だ。
今日は食堂の食事を取るよ。」
僕はやんわりと手作り弁当を拒否した。
隣の清水先生は肩を震わせて笑いを堪えていた。

食堂のテーブルに着くとザッと10人ほどの女生徒に囲まれた。
おいおい、一気に来たな…。
「こりゃ、全員相手したら身体持たね~な。
ふはははは。」
清水先生は僕をイジって喜んだ。
「武本先生って、今お付き合いしてる人いないんですよね。」
「葉月さんも違うって…。フリーですよね。」
「どんなタイプの女の子好きですか?」
あ~。またこういう、恋のイメージだけで寄ってくる奴ら。
基本苦手なんだよ。
君らみたいな相手を知りもいないで、イメージ先行で寄ってくるの。
でも…ほとんどの女子って、こういうのなんだろうな…。
田宮が飛び抜けて違ってる…つくづくそう思う。

「あの…。残念だけど…僕は君達の誰とも教師と生徒の関係以上になる気はない。
ハッキリ言って、困ってる。
僕には…。
一生一緒にいたいと思える女性がいる!」
きゃーきゃー騒いでいた生徒が水を打ったように静まり返る。

「誰です?」
「大学生?」
「教師仲間?」
再びザワザワし始めたところで、清水先生が口を挟んだ。
「嘘じゃないぞ。
俺も知ってる女だ。
お前等と違ってオスに尻尾振ったりしない女だ。」
キツめなその言葉に、女生徒達は引いた。
「期待させてしまったならごめん…。
でも…。これだけは譲れないんだ。」
僕は真剣なまなざしで彼女達に言った。

「な~んだ。フリーじゃないじゃん!」
「誰よ!武本フリーっつたの!」
彼女達は浅はかな考えだったせいもあり、皆んなすぐに納得してくれたようだ。
葉月にも感謝しないとだな。
始めから僕も、香苗や葉月に対してこうしていれば良かったんだ。
始めから…自分が田宮を好きな事を認めていたら、傷つく人は出なかったんだ。
改めて、自分の不甲斐なさを反省した。

そんな昼食を終えて、僕は周りを気にしながら旧資料室を目指した。
3時間目の中休みに鍵を開けておいて正解だったな。
少し遅れてる気がする。
さっきの光景は彼女も目撃したのかな…。

ガラガラ…。
旧資料室を開けると、彼女はやはり先に来ていた。
狭い埃っぽい部屋の向こうの窓辺で、肘をついて外を見ていた。

「遅れたかな…すまない。待たせて。」
「いえ。先生こそ、彼女達をおいて来て大丈夫なんですか?」
やっぱり、見られてた!
「あれは…違うんだ…。
その…。」
僕は慌てて、彼女の真後ろまで歩いた。
「せっかく、モテてるのに…何で私なんですか?」
「えっ…。何でって。」
「う~ん。可愛い子や、綺麗な子が男の人って好きなんじゃないかな?って…。
わざわざ、私を選ぶなんて…どうなのかなって…。」
「だから!どうして自分をそんなに下に見るんだ!」
僕は思わず、背後から彼女を抱きしめた。

「僕は君じゃなきゃダメなんだ!君しか…僕には君しかいないんだ。」
「…そう…なんですか…。
それでは…仕方ありませんね。」
彼女は小さな声で呟いた。
「ああ。どうしようもないんだ。
この気持ちは変えられない…。」
彼女は僕の顔の下でゆっくりと頭を斜めにして、僕の右肩に頭をもたれ掛けた。
背後から抱きしめてる僕の手に、自分の手をそっと重ねた。
僕は彼女の首筋に顔を埋めるようにして、目を閉じた。
彼女の香りが僕を包み込んでいた。

「この部屋…少し寒いですね。」
「ん…寒いな。」
僕等はお互いの体温で温めあっていた。

「今朝はごめんなさい。
姉は心配性だから…。
先生は…姉とキスするの嫌でした?」
「ん…嫌だった。
キスは君としたい…。」
僕は重ねた手の指を絡めながら言った。
「先生が学校で言っちゃダメなセリフですよ。
今のセリフ。ふふふ。」
「ん…そうだな。
本当…そうだな…。ははは。」

この気持ちいい感覚…止まっ時間の中で…2人だけが触れ合える…そんな不思議な感覚。
これが…僕の心に幸せをくれる…。
君しか出来ない事なんだ…。
他の誰でもない…君にしか…。

僕は彼女に勇気を貰い、午後の授業へと向かった。

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