手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

第2回魔女対策会議 前の談笑

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彼女から元気を貰い午後の授業を終えて、夜の会議に備えた。
職員室では実力テストの準備などで、なかなか旧理科室には行けなかった。
うーん。
魔女じゃないが…カメラとかで様子を見られれば…いやダメダメ!それは犯罪だ!
まぁ、どうせ金井先生が様子を見てるから、魔女が手出し出来るとは思えない。
今朝の件もあれば尚の事だ。
まぁいい。
昼休みに思いっきり、甘えられたんだ。
我慢しよう。

バコッ!
丸めた冊子で頭を叩かれた。
「痛っ!」
「お前、何1人で妄想してんだよ!」
「すいません。また口元緩んでました?」
「緩みっぱなしだよ。ヨダレ出過ぎ。」
「別に…キャバクラを楽しみにしてた訳じゃありません!」
いやらしい目で僕を覗き込む清水先生に言った。
「何、良い子ちゃんぶってんだよ。
姫相手じゃ欲求不満溜まるだろ。
いんじゃね~?ここらで解消しても。」
「か…解消って!」
「お持ち帰り出来なくても…お触りくらいしとけよ。
勿体無いし。」
「エロい事をするのが本来の目的ではないですよ!」
僕は清水先生に釘を刺した。

確かにそういう場所ではあるが、それは魔女を欺くためだ。
本来の目的は魔女対策会議だ。
僕は気を引き締めた。

午後7時。
田宮が帰宅し始めたのをGPSで確認した。
そろそろ金井先生も帰り支度をして職員室に来るだろう。
僕と清水先生も帰り支度をし始めた。

しばらくして、金井先生が職員室にやって来た。
「お疲れ様です。
そろそろ、行きましょうか?」
「はい。準備万端です。」
「ほいほい!サッサと行こうぜ!
お姉ちゃん達が待ってる!」
1人だけテンションのおかしい清水先生と冷静な金井先生、少し緊張気味の僕はタクシーに乗って、キャバクラ『グランディア』まで移動した。

店内に移動した僕等は何とVIPルームに通された。
「えっ…え何で?金井先生!」
「事が、事だけに今回は最善の注意を払いました。
後で、会って貰いたい人もいるので。
その人の安全も考えての事です。
気になさらないで下さい。」
「気にすんなって!
こんなとこ、一生に一度入れるかどうかだぜ!
テンションアゲアゲだな!」
このオツサンは…いつまでこのテンションでやるつもりなんだ?

「ゲストが来るまで、少し談笑しましょう。
女の子達も始めだけで、後で返しますので。」
VIPルームで5人の派手な女の子に囲まれてる、この状況…。
緊張感ハンパねぇぞ!
「清水先生!お酒は控えて下さいよ!
大切な話が後で控えてるんですから!」
僕は浮かれまくってる清水先生を一括した。
「じゃあ!そこまで言うなら、酒の代わりにお前の話しを聞かせて貰おうか?」
「なっ!」
金井先生まだシラフなのに…??
ボコられたらどーすんだよ!
「お前には貸しがたーんとあるんだよな。」
「くそっ!」
清水先生は目を細めて僕を見た。

「金井先生…こいつ、田宮に告白したの知ってます?」
「ええ、聞きました。
そうですね~。
詳しい状況は説明を受けてませんでしたね。
ぜひ、お聞きしたいですね。」
2人の視線がグサグサと僕を貫いた。
「あら、やだ先生。
好きな人に告白ー?
まさか生徒だったりしちゃって。」
女の子が図星を突いた。
清水先生がゲラゲラ笑い出した。
オヤジ~!

「別に…普通ですよ。
ずっと前から好きでした…みたいな。
ただ…僕のキスと金井先生のキスは、違うって言われました。」
「はああ?僕の…って、彼女言ったんですか?」
金井先生が少し赤くなった。
お!仕返し出来るかも…。
「ええ。ディープだったそうですね~。」
「そうですね。って。
武本先生だって、その前にしてるでしょ!」
「そうでした…。」
「…で?その先は?」
清水先生が掘り下げて来やがった!
「あ…いや。だから…違いがよく説明出来ないからって…その場でその…キスを…。」
「…!」
金井先生が少し固まった。

「ついでに乳揉んだか?」
「揉んでませんって!清水先生はそればっかですね!」
僕は女の子とイチャイチャしてる清水先生に叫んだ。
「やだ~~先生純情~!」
「可愛い!今時それだけ?」
女の子が突っ込んできた。
だから…君らとは別の種族なんだよ!彼女は。
「それだけなのに…日曜日に首筋にキスマークつけたのか?ヤッたんじゃねー?」
ああ~~!
清水先生がまた余計な話しを吹っ掛けてきた!
「ちょっと!武本先生!首筋にキスマークってそれは尋常じゃないですよ!」
金井先生まで余計な想像を!
何て言ったらいいんだ…《勉強会》は話せない。
「違います!違います!だから…座ってた僕が寒がったので…彼女が暖めようと抱きしめてくれて…で、ちょうど首筋が僕の口に当たって…そのつい…キスマークつけちゃった…みたいな。」
「何か…嘘っぽいですね。」
「嘘じゃありません!」
大まかには…ね。
「なーんだ。田宮はまだ処女か!」
「当たり前です!!」
清水先生の言葉に僕と金井先生が同時に反応してしまった。

これで…本当に魔女対策会議が出来るんだろうか…?
僕は不安になって来た。
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