手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

第2回魔女対策会議その1

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「失礼します。お連れのお客様が参りました。」
ボーイが1人の男を中に案内した。
見覚えの無い顔だ。
童顔に細っそりした身体つきの若い男性だ。
「初めまして。
(株)スクール・メンタルケアの校外調査員の天堂です。宜しくお願いします。」
「(株)スクール・メンタルケアって金井先生の会社の…。」
僕は金井先生を振り返った。
「お疲れ様。
彼は、うちの校外調査を専門にしてるスタッフです。
主に夜の補導や非行調査を専門にしてます。
学生に扮しての潜入捜査などもやってますので、
人目につかないようVIPルームを使用しました。
さて、そろそろ本題に入りましょう。
女の子達には引き上げて頂きましょう。」
「ええ~。もう終わりぃ~。」
清水先生が悲痛な声を上げた。
甘えるな!ジジイ!

女の子達は言われた通りに部屋を出て言った。
「武本先生。
先日のメモの件は清水先生には?」
「えっと…まだ話していません。
今日まとめて話した方が、秘密保持になると思いまして。」
「懸命な判断ですね。
では、順立てて話しを進めたいと思います。」
金井先生はそう言って、立ち上がると天堂さんと一緒に話し始めた。

「まず、ウチのカウンセラーが精神を病んだ件から事は始まります。
彼は初め、魔女、田宮 美月と深い関係を結びました。
そして、骨抜きにされ、1.2年の生徒達の情報を集め出しました。」
「1.2年限定ですか?」
僕は聞き返した。
ここでも…何か引っかかる。16歳前後の年齢だ。
「そうですね。
この学年及び年齢には意味があります。
まぁ、それは後ほど。
で、特に魔女が知りたかったのは、お金に困っている、家が貧しい、一度に大金を手に入れたいなどの女生徒の情報でした。」
「おいおい!それって!」
清水先生も事の重大さに声を上げた。
「その通り。
会員制のJKビジネス…いや実態はもっと酷かった…。」
金井先生の表情が曇り、口を止めたのを見て、天堂さんが代わりに話し始めた。

「処女専用の高額売春斡旋…それが田宮 美月の目的でした。」
「し…処女専用!?」
「16歳というのは隠語です。
今や18歳に処女のイメージは薄いので、16歳という処女イメージに近い隠語をサイトで使っていたと仮定されます。
私が調べた内容ですと…金額は50万円から100万円が相場のようです。」
「俺らの月給なんぞカスだな…。」
清水先生が呆れた。
「ここからが魔女の頭のいいところです。
この行為は確実に処女のみが行い、客からは信頼を得ます。
女生徒には一度きりで、罪悪感を植え込み…そして情報漏洩のリスクを減らしていました。
何度もそれで金を手にすると、罪の意識が薄れる事を計算していたんです。
1人当たりの単価が処女ブランドで高く、1人一回キリで充分な金額を手に出来る。
美味しい仕事だと踏んだのでしょう。」
「だから…逆に情報が漏れづらく、関係者だったカウンセラーが1人で精神を病んでいったんですか?」
僕は食い気味で金井先生に視線を向けた。
「でしょうね。
彼は自分の行っている事に歯止めが効かなくなっている現状に、精神を病んだと推測されます。」
金井先生は苦虫を噛んだような表情を見せた。

「ちょっと待て!実は…里中という女生徒は3年だが…1年に声を掛けてる形跡がある。
しかも、奴の家は今、借金で大変だ…。
もしかして…。」
清水先生がコンタクトを取っていた生徒の事を切り出した。
「その件ですが…副社長の指示で深く調査したところ…すでに1度仕事をした者で、どうしても金銭に不自由してるものを田宮 美月は利用している事がわかりました。
義理立てさせる事で秘密保持させて仕事をさせる。
つまり…勧誘役としてですが。」
何てこった…。
吐き気がする…胸の奥に黒いものが…。

「副社長!?」
清水先生の目が点になった。
「 はい。ここにいる金井副社長です。」
え…え…ええ~!?副社長!?
「学生時代に仲間と会社を起こしたので、必然的にですよ。」
「武本…お前…経済的にも負けてんぞ!」
「…ですね。完敗ですよ。ははは。」
ちくしょう!教師の給料なんて雀の泪だ!

「あれ?…ちょっと待て。
僕のサイトの情報が証拠にならないかな。
田宮 美月の…。」
「残念ですが、今朝完全に閉鎖されました。
卒業までに足跡を消す計画だったのかもしれません。」
「なんだ…そんな…。」
僕は金井先生の言葉に落胆した。
「けれど…武本先生の情報があって、ここまで足を踏み入れる事が出来ました。
とても、感謝しています。」
金井先生は優しく言ってくれた。

「ここまでは、あくまで経緯です。
一番の問題はそこではないと、僕は考えてます。」
金井先生は少し頭を抱えて言った。
「副社長。
副社長に言われた事が気になって、彼女達に匿名での意見を聞きました。
これです。どうぞ。」
天堂はタブレットを金井先生に渡した。
金井先生はそれを見ると、更に眉間にシワを寄せた。

僕にはその状況の意味する事がわかっていた。
そうだ…簡単に助けるなんて出来ないんだ…。


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