手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

遥かなる想い

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しばらくして、僕は清水先生に耳打ちした。
僕はどうしても、清水先生から聞かなくてはならない話しがあった。
「この後…時間ありますか?」
「あん?」
「2人で話したいんです。
どうしても清水先生にお聞きしたい事があります。」
「なんだよ。改まって。
金は貸さないぞ。」
「…遥さんについて話して貰いたいんです。」
「!!」
清水先生の赤く高揚していた顔色が、一気に冷めていくのがわかった。

僕はどうしても死の世界から、彼女を救い出したい。
未来を歩くには、僕1人なんて嫌だった。
彼女とずっと…この先も生きていたい。
たとえ…彼女が他の人のものになったとしても…。
生きていて欲しいと願うからこそ!
遥さんが何故、死の世界から離れられなかったのか…どうしても知りたかった。

「卑怯くせぇなあ!俺の酒が回ったの見計らってたな。」
「すいません。
でも、そうでもしないと話して貰えないと思っまして。」
「はぁ。にしても、俺は本人じゃないから100%の感情を教えられるかどうかはわからんぞ。
あくまでも、俺が感じた事だ。
その辺は踏まえておけ。」
「…はい。ありがとうございます。」
「その前に…もう少し呑んでおく。
高い酒なんて滅多に飲めないからな。」
「もう…呑みすぎないで下さいよ。
話しが出来なかったら元も子もないんですから!」
僕は清水先生のお酒が進みすぎないように監視した。

金井先生と天堂さんもそろそろ出来上がった感じだった。
先に天堂さんを戻した金井先生は立ち上がった。
「そろそろ、お開きにしましょう。
ではまた、学校で。」

金井先生と別れ、僕と清水先生はタクシーで、自宅近所の居酒屋へと移動した。
「大丈夫ですか…清水先生。」
「大丈夫だよ。
この前のロバに付き合ったのに比べりゃ、屁でもねぇ。」
確かに…。
あの翌日の清水先生の廃人っぶりは凄まじかった。

居酒屋に到着して、僕等は奥の座敷に座った。
真剣な話しがしたかったので、僕はウーロン茶で酔いを覚ました。
清水先生は焼酎を頼んだ。

「…でもよ、メグちゃんから大まかには聞いたんだろ。」
「はい。
でも、詳細が知りたいんです。
お願いします。」
僕は頭を下げた。
「…ほらよ。」
清水先生は懐から手帳を出して、僕に渡した。
「えっ…。」
「開いて見ろ。」
僕は言われた通りに手帳をゆっくり開いた。
そこには、色あせた1枚の写真が入っていた。
リボンの大きな制服に身を包んだ、ベリーショートのボーイッシュな女生徒の写真だった。
「これ…遥さんですか?」
「そうだ。ちょうど出逢った頃だな。
笑ってないだろ。
無愛想たったんだよ。」
僕のイメージとは全然違っていた。
もっと、ひ弱とか…か弱いとか…そう思っていたのに、そこにいたのは意志の強そうな凜とした表情の女生徒だった。

「はっきり言っとくが、俺は失敗してんだぞ。
言わば、これから話す話しは失敗例だからな。
そこは間違えるなよ!」
「はい。失敗しない為に聞きたいんです!
僕は彼女を失いたくありません!」
僕は正座をして清水先生を真っ直ぐ見た。
清水先生は根負けしたかのように溜息をついた。

そして…遠くを見るように…ゆっくりと語り出した。
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