手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子の町娘奪還作戦2

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午後7時。
職員室で待っていると、金井先生が先に入ってきた。
「お疲れ様です。清水先生はまだですね。」
「はい。」
「今回の情報は本人からですか?」
「ええ。ですから確実な情報かと。」

そこへ、清水先生がやって来た。
えっ…。
清水先生が1人の女生徒をグイグイ引っ張って来た。
「清水先生…それ!里中 愛里!?」
「おう!待たせて悪かったな。
こいつが、顔出したくねぇってダダこねまくって遅れた。ほら!」
「きゃあ!」
里中は清水先生に押し出されたものの、すぐに清水先生の陰に隠れてしまった。
清水先生のコートを鷲掴みしながら、震える声を出した。
「ごめんなさい!警察には突き出さないで!
お願い!お願い!お願い!」
少々混乱気味の里中に金井先生が近づいた。
「里中さん。
ハーブティでもいかがです?
僕らは話を聞きたいだけで警察沙汰にはしません。
お約束しますから、落ち着いて話しをしてくれませんか?」
柔らかい物腰でさらりと言った金井先生に、里中は安堵の表情を見せた。

僕等と里中しかいない職員室で、僕等は彼女から話しを聞き出す事にした。
「だから…女王から…指示が。
葉月って子が失恋して自暴自棄になってるから、誘うチヤンスだって…紹介料が10万もらえるの。
アルバイト禁止だし…。
お母さんが、先月倒れて働けなくなって…。
卒業までは何とか学校通いたくて…。」

失恋して…自暴自棄か…僕が最初からもう少しハッキリとした態度を取っていたら…こんな事にはならなかったかもしれないのに…。
僕は罪悪感で少し息苦しくなった。

「女王…つまりは田宮 美月ですね。」
金井先生の言葉に里中は無言を突き通した。
「……。」
言える訳ない事は僕等3人は理解していた。
確かに…この状況で里中を警察に突き出したって幸せになる奴なんかいない。
「里中さん。
協力していただいたので、卒業までの生活費と学費は僕の会社でお貸しします。
無論、働けるようになったら、コツコツ返して下さい。いいですね。」
金井先生は里中に優しく提案した。
「いいんですか…。
ありがとうございます。
…でも私…葉月さんに大変な事を…!」
「これから、俺らが葉月を救出に行く!
安心しろ!」
清水先生が里中の肩をポン!と叩いた。

里中をタクシーに乗せ帰宅させた後、僕等は金井先生の車で移動した。
「いいですか。
慌てて葉月さんや相手を捕まえてはダメですよ。
ホテル前までは隠れて尾行します。
武本先生はカメラの用意を。
フラッシュはたいて下さい。
清水先生と僕で葉月さんを救出します。」
「はい。」
カメラ役か…だろうな…体力的に3人の中では僕が1番ダメだからなぁ。
鍛えようかな…。

「それから…まだ話せませんが、天堂から金の動きを掴んだとの連絡がありました。
ここへ来て、運が味方してます。」
「マジか。すげぇな。あの童顔でか。」
「いや…童顔関係ないっすよ。清水先生。」
でも、金井先生といい、天堂さんといい、清水先生といい…僕以外は仕事がデキるんじゃねーの?
なんかも~ヘコむわ~。

そんな、ちょいヘコみのまま、僕等は地下駐車場に車を停めた。
車からおりると、葉月が待ち合わせしてる場所を監視する為に僕と清水先生は、藤和銀行正面のテナントビルに金井先生は予備校側の裏路地に身を潜めた。
「おい!今何時だ?」
「えっ…と午後9時57分です。」
「そろそろ、どちらかが来るぞ。」
「ですね。」
緊張感マックスで、僕等は藤和銀行前を注視した。

「あ!葉月です!あれ!」
僕は清水先生の耳元で言った。
「紺のダッフルコートだな。
ワザと制服指定してやがんのか。
変態は細かいなぁ。」
「でしょうね。
女子高生ブランドですからね。」
葉月は心細そうにキョロキョロと辺りを気にしていた。
すると、数分後に予備校とは反対の道からトレンチコートにアタッシュケースのビジネスマンが現れた。
年齢は40~50代くらいの管理職っぽい男だ。
葉月に無理やり腕を組ませて歩かせているようだ。
「なンだよ!俺よりジジイじゃねーか!スケベジジイ!」
清水先生が毒を吐いた。
いや…あんたには言われたくないと思う。
「そんな事より行きますよ。」
僕は清水先生を引っ張りながら、葉月と男の跡を追った。

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