手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

魔女包囲網1

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魔女との密談を終えて、足早に職員室へと戻った。
おそらく、葉月から連絡が入ってる筈なのだが、どうだっただろうか。
明日の実力テストを受けられる精神状態かさえも気になる。

「清水先生!」
職員室に入るなり、清水先生の方に直行した。
「おう!待ってたぞ。ホラ!携帯。」
「あ、はい。こっちをお返しします。
…で連絡は?」
「あったぞ。しかし午後の授業が始まる。
話しは後だ。」
「わかりました。
連絡が来ただけでも先行き明るいです。」
僕はホッとした。
その反面…さっきの魔女の姿が気にかかっていた。

彼女は…魔女を、あんな魔女を理解していたんじゃないか?
自分のせいで逆に…怯え…壊れていく魔女を。
なんて…残酷な現実だ!!
1番辛い筈の彼女は…魔女の事さえ自分の罪にしてるんだ。
魔女の言いなりになるのは…贖罪なんだ。
生きてるだけで…魔女を傷つけて行く。
だからこそ、魔女の命令を聞く度に魔女の分の罪と自分の罪でストレスに負荷がかかっていたのか。

僕の頭は再びクラクラして来た。
ダメだ…一旦考えるのを止めよう。
とにかく、午後からの授業と葉月の件にだけ…今は集中しなければ。
胸ポケットの手帳を握りしめて、深呼吸した。

放課後になり、ようやく清水先生と話しが出来るようになった。
「金井先生も混ぜて話したいんだ。
カウンセラールームじゃ狭いから、会議室行くぞ。」
「あ、はい。」
清水先生は会議室の鍵をクルクル回しながら、僕を連れて職員室を出た。
途中、金井先生に声をかけて、3人で会議室に入った。

「座ったな。
まず、葉月からの連絡を伝える。
自分の知ってる事は全て話たい。
だが…身の危険も感じてる今は動けない。
そこで、実力テストを利用する。」
清水先生は腕組みしながら僕と金井先生に視線を送った。
「さすがに、実力テストを休むなんて目立つ事を魔女は嫌う筈だ。
実力テストを受けに来た葉月をテスト終了後、会議室に匿う。
ここなら、職員室も目と鼻の先で近い。
彼女の安全を確保出来る。
放課後、話しを聞き出した後は俺か、金井先生が車で自宅まで送って行く。」
「学校内で大丈夫でしょうか?
自宅までこっちが行った方が…。」
僕は短絡的に思った。
「いえ。自宅に僕らがゾロゾロ押し掛ける方が不自然で、魔女も警戒します。
やはり、清水先生の案が最適だと思います。」
金井先生がわかりやすいように説明してくれた。

「で…武本の方は?魔女と何話したんだ?」
「あ…。」
おそらく、2人はまた脅迫されたとか思ってるんだろう…けど…実際は。
どうしよう。
…いや、仲間を信じよう。
僕1人でどうにか出来ないことは充分にわかってる。
「魔女…田宮 美月も苦しんでます。」
「は?この件がバレそうでか?」
清水先生の返しに僕は首を振った。

「金井先生、僕では理解してあげられなかった部分もあるので、アシスト出来るところはお願いしてもいいですか?」
「わかりました。
どうやら重要な情報を入手したようですね。
武本先生。」
金井先生は僕の方に身体を向けて、しっかりと聞く体制を整えた。

「まず…魔女は妹がいなくなると…自分が母親に妹と同じ扱いをされるのではないか、という恐怖に長年苛まれていました。
金井先生の言った通り、魔女は妹を最後の砦だと思ってるようでした。」
「自分を可愛がる母親の仕草さえ…魔女にとっては寒気のする行為だったんですね。
対比する妹の姿がトラウマになっていた。
そうですね。」
「はい。そう思います。
そして…彼女は中2の時教師に強姦された過去がありました。」
バン!
「中2だと!!誰だ!そのふざけた野郎は!」
清水先生が烈火の如く怒り、机を叩いた。
「ええ。酷い話です。そして…おそらく転勤か移動になり、魔女から逃げてます。」
「そんなバカな大人が魔女を狂わせたのか?
くそっ!ブン殴ってやりて~!」
「清水先生、抑えて下さい。
今は武本先生の話しをじっくり聞くのが先決です。」
「ここからは…僕の仮説ですが…。
魔女は強姦という傷だけで処女を失いました。
だから…いっそ、同じ傷つくなら、逆に大金を引き換えに失った方が…お金をどうしても必要としてる少女の為になると…バカな大人からせめて特になる物を…と考えたのではないかと。」
「お前、何言ってるかわかってんのか?
処女売春斡旋が魔女にとっては、慈善事業だって言うのか!?はっバカバカしい!」
清水先生が呆れた顔で仰け反った。
しかし、金井先生は逆に頷き、立ち上がった。

「やっと繋がりました。
武本先生の推察通りで間違い無いでしょう。」
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