手の届かない君に。

平塚冴子

文字の大きさ
231 / 302
3学期

実力テストの陰で…。

しおりを挟む
1月最終日の水曜日、実力テストが行われる。
そして…その影で、僕らは葉月から詳細を聞く事になるんだ。
朝起きて、ワークデスクの引き出しから彼女のウエディングドレス姿の写真を出した。
「おはよう。今日は気合いを入れなきゃな。」
彼女に囁くように、言葉を発した。
実力テストの当日にさすがに、田宮とイチャつく訳にもいかないので、写真を通して彼女に意気込みを語ったのだ。
そして…昨日のキスを思い出す。
君のキス1つで僕は暗闇を抜け出せる…。

あいにく、昨夜からの雪で学校への道もいつもより時間が掛かってしまった。
葉月はおそらく、ギリギリに登校してくるはずだ。
その前に職員室で清水先生と軽く確認しておきたいな。

「あ、清水先生!おはようございます。」
指紋認証の出勤を記録してる清水先生に声を掛けた。
清水先生も今日は早めに出勤してくれていた。
「おう。今日だな。」
「はい。」
「気合い充分だね。
何かいい事あったか?」
「変わりませんよ。いつもと。」
「クールだね~。ったく。
大人に成長しちゃって可愛げねぇの。」
「随分前から、大人ですが。」
「そんなに言うなら、姫に大人の男の手ほどきしてやれよ。
得意なんだろ、大人の経験者は。」
お!大人の経験者…男の手ほどきって…。
昨日のキスがフラッシュバックした。
赤い顔で慌てて切り返した。
「はああ?バカですか?もう!」
「ははは。ま、気楽に力抜いて行こう。」

バンバン!
清水先生は僕の背中を叩くと自席に向かった。
きっと、清水先生なりに僕に気を遣ったんだと思う。
僕も自席に座って実力テストの準備を始めた。

「テスト終了後、お前や金井先生じゃ目立つから、俺が葉月を連れ出す。
ホームルーム後よりテスト終了後の方がいいだろう。」
「えっ、ホームルーム欠席ですか?」
「テスト終了直後は、生徒は気を抜いた直後とか、問題見直しする生徒が多い。
他人に注目する事が少ない。
だから、その隙を狙って会議室に連れてく。
お前は、葉月がいなくてもさっさとホームルーム終えちまえ!
生徒に突っ込まれたら、体調不良で帰宅させたとか何とかゴマかせ!いいな。」
考えてないようで、ちゃんと考えてんだなこの人。
「わかりました。」
「葉月には電話で休憩時間は、常に教室。
トイレは友達と必ず一緒に行けと伝えてある。
ま、女子は基本連れションだから、大丈夫だろ。」
「確かに…。」
昔から女子は何故トイレに集団じゃないと行けないんだろう。
永遠の謎だな。

実力テストか…まあ、今回は白紙答案はさすがにないだろうから、淡々とこなせばいいかな。
とにかく放課後の会議室での葉月の証言で、確実に事態は動くはずだ。
そして…この件がひと段落ついたら…《勉強会》だ。

彼女を救う方法はまだわからないけど…ヒントは掴んでる。
彼女に生きる目的を、どうにかして与えなきゃ。
そして…僕自身も…記憶の呪縛から脱してみせるんだ!

朝のミーティングで実力テスト中の注意事項の説明を受け、試験官の時間とクラスの確認をした。
前もって清水先生は自分が最終テストで、3組に行く事を調整していたようだ。
学年主任ならではだな。

ミーティングを終えて、自席に戻り実力テストの準備を始めながら清水先生に小さな声で話し掛けた。
「そういえば、登校拒否の生徒はどうなったんですか?」
「金井先生が調べてる。
メンタル的な事が大きいからな。
葉月の件が終わったら、様子を聞いてみよう。」
「はい。わかりました。」
僕と清水先生は職員室を出た。

実力テストを受ける生徒よりも、緊張感MAXで教室へと向かった。
なるべく葉月を意識しないように…自然にしなければ。
勝負の放課後まで…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...