手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

町娘の告白1

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実力テストを何とか終えて、帰りのホームルームの為に1年3組に入った。
「ホームルーム始めるぞ。
テストの答え合わせは後でやれ!」
そう言いながら、葉月の席を横目で確認する。
どうやら、清水先生はちゃんと連れ出しているみたいだ。

「武本先生、葉月さんが戻ってません。」
友達の女子が手を挙げた。
「体調が悪いらしい、保険医の山中先生が連れて帰ったようだ。
休み明けだったから疲れたのかもしれないな。」
僕は、生徒達が納得するような嘘の言い訳を言った。
僕の説明を不審に思う者は現れず、内心ホッとした。
「明日は1日テスト休みだが…気を抜くなよ。」

なるべく平常心を装い、ホームルームを終えた。
慌てず、教室を出ると田宮と鉢合わせた。
「あ…。」
思わず声が出た。
今朝から1度も会ってなかった。
けど…ここは1年の教室前の廊下だ。
下手に仲良く出来ない…。
「すいません。
よそ見をしていました。」
「ああ…。」
1年3組の生徒達が後ろのドアから流れ出て来た。

ドン!
「うわっ!」
「きゃ。」
倒れそうになって思わず壁に手をついた。
「武本先生ゴメン!ぶつかっちまった。」
「あー武本が、田宮を壁ドンしてるぞ!」
「マジ~?田宮だぜ!強迫の間違いだろー!」
廊下にいた生徒達がザワザワした。

「あ、えーと…。すまない。」
マジか…壁ドンしちゃったよ。
生徒が大勢いる前で!
超恥ずかしい~~!
「…張り倒されるかと思いました。ふふふ。」
「はああ?」
何て事を言うんだよ!
ドッと廊下の生徒達が笑い出した。

ああ、ごまかしてくれたんだ。
僕は壁から手を離すと、生徒達の笑い声を背中にそそくさと職員室へと向かった。
ちょっとだけ、彼女を間近で感じられたので緊張が程よく解けていた。

僕は荷物を自席に置いた。
やはり、隣の清水先生はいない。
すでに会議室にいるのだろう。

僕は職員室を出ると、カウンセリングルームにいる金井先生に声をかけに行った。

コンコン。
「はい。どうぞ。」
ガチャ。
「金井先生、清水先生が会議室で待ってます。」
「わかりました。行きましょう。」
金井先生はすぐさま席を立つと、僕と一緒に会議室に向かった。
「むやみに問いただしてはいけませんよ。」
「わかってます。繊細ですからね。」
「後…すいませんが、武本先生はなるべく質問しないでいただけますか?」
「えっ…どうしてですか?」
「少なからず、葉月さんは貴方に恋愛感情がありました。
そんな人に質問されて、心を掻き乱してしまっては元も子もないんです。
申し訳ありませんが、なるべく聞くだけを心掛けて下さい。」
「なるほど…確かにそうですね。
では、僕は席を外した方がいいのでしょうか?」
「いえいえ。逆に居てください。
そこは、武本先生に居てくれないと困ります。」
「というと…?」
「葉月さんが不安を覚えた時、武本先生が視線に入るだけで不安を緩和出来るはずです。」
「ん…じゃあ、黙って隅に座っていればいいんですね。」
「そうですね。それがベストだと思います。」
僕は金井先生の話に納得した。
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