手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子の敗北感1

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翌日はテスト休暇で生徒は登校していない。
職員室では朝早くから実力テストの採点が、昨日に引き続き行われていた。

ブルルルブルルル
携帯が鳴ったので、僕は廊下に出た。
久瀬からだ。授業前にかけて来たのか?
「どうなってんだよ!見ちゃったけど、田宮が金井先生と出掛けてったぞ!知ってんのか?」
「えっ…。」
知らない…。昨日の帰りも会ってないし。
そっか…今日は田宮、学校に来られないし…教師でもない金井先生もお休みで…。
平日だからどこも混んでなくてデートにはうってつけの日だ…。
ああ…そうか…。

「聞いてる?おーい武本っちゃん!」
「悪い…僕は実力テストの採点しなきゃならなくて…。」
そうだ…僕は仕事で…休みじゃ…。
「んな事、言ってんじゃねーよ。
金井先生、巻き返して来てんじゃねーの?
田宮がどこ行ったかGPSで調べられるんじゃね?」
「ああ…そうだな…。」
「武本っちゃん?おーい!
聞いてんの?ったく、こっちも授業始まるから、また後で連絡するからな。」

ツーツー。
電話が切れてもボーッとしか出来なかった。
GPSか…。
久瀬の言う通り、彼女の行き先を確認した。
ドリーム・バーチャルランド…最近出来た室内遊園地だ。
そっか…遊園地行った事無いって言ってた。
金井先生と初めての遊園地か…。
僕は廊下の天井を見つめて、唇を噛んだ。
こんな小さな事で…なんでこんなに…。
僕の器…小さ過ぎだろ…。

僕は溢れそうな涙を抑えつつ、職員室に戻った。
「おう?何かあったか?何だよその面!」
「えっと、いや別に…。」
自席に座ると、隣の席で採点してる清水先生が手を止めた。
「どーせ姫絡みだろ。
だから本気なら早く自分の物にしちまえ。
そんなに待てるもんじゃ無いぞ!男は特に。」
「出来るなら、やってますよ!」
言われなくたってわかってるよ!
彼女に恋してからの僕は…臆病で。

「お!キレた。
はは~ん。今日は金井先生も休みだ。
2人でデートにでも行ったかな?」
「……。」
図星だ…!なんで、わかるんだよ!エセ牧師!
「お前さ、姫に気を遣いすぎなんだよ。
好きな人には、少しくらいワガママじゃないとな。
格好つけんのは、深い仲になってからでも遅くないぞ。
特に姫みたいなタイプは、待ってたって動いちゃくれないだろう。
お前自身が動かねぇと。」
「言うのは簡単ですよ…。」
ワガママって。
僕だって、彼女に甘えたくて我慢出来なくなってキスしたりして…。

「武本…淫行ってのは、愛の無い行為だ。
けどな、お互いに愛があるなら…お互いがお互いを深く愛し求めたなら…それを止めるなんて事は神様だって出来やしないんだぜ。
それを淫行って言う奴らこそゲスだと俺は思うぞ。」
「無理ですよ…そんな事あり得ないんです。
彼女は僕を好きになんて…ならないんですから。
一方的な行為は…やっぱりダメなんですよ。」
「…だー!もう!イラつくなテメェは!
ヘタレだとは思ってたけど、限度があるだろ!
じゃあ、教師らしく、1つずつ解答してやる!」
清水先生が答案用紙をしまい、僕に向き直った。

「お前は今、現在進行形で姫が好きなんだよな!」
「現在進行形って…まあ…そうです。」
何も、そんなところ勉強に引っ掛けなくても。
「そして…その今現在進行形の気持ちは、金井先生と2人でいて欲しく無い!って事だろ!
自分と2人でいて欲しい!これで間違いねぇな!」
指を顔の前で差すなよ。
それは、完璧に僕のワガママで自分勝手な想いだ。
「…間違いありませんけど…。」

「けど…じゃねーよ!だったら今すぐ電話して来い!そのまんま伝えろ!
そうしなきゃ、バレンタインデーなんて夢のまた夢になっちまうぞ!」
「!!」
ガッツ!
清水先生が僕の座ってる椅子を思い切り蹴り出した。
椅子の車が回転して席が移動した。
「ほら!早く電話して来い!
そんなんじゃ採点ミス連発すんぞ!
スッキリさせて来い!」
「ん!もう。わかりましたよ!
行けばいいんでしょ!」
逆ギレだ…!わかってる。
清水先生に言われなきゃ行動出来ないなんて…!

僕は再び廊下へで出て、誰にも聞かれない様に旧理科準備室に駆け込んだ。
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