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3学期
王子の敗北感3
しおりを挟む「田宮…これから言うのは、あくまで僕自身の気持ちだから、それに左右されたりしないでくれ。
…僕はワガママなんだ。」
「えっと。ワガママ?そうなんですか?」
「君が…金井先生と2人きりでいるのが…その…嫌なんだ…ごめん…。
そこに…君の隣にいるのが…僕じゃないのが、腹立たしくて…悔しくて…。
だから…その…。」
「武本先生?」
「君が他の男といるのが嫌なんだ!
すっげえ、ヤキモチ妬いてる!
だから…それをわかって欲しい。」
自分でもなに言ってんだかわかんねー。
小学生のワガママだ!
でも、それも自分の素直な気持ちなんだ。
「…困りましたね。
私…どうしたら。」
困らせてしまってる…けど…。
「悩んでくれ…そして。
君がどうしたいのか、わかったら教えて欲しい。
僕の事を考えて悩んで欲しい。
ごめん…酷い事言ってるのわかってるんだけど。
無理に好きになって欲しい訳じゃないんだ。
君の中に…僕がいるのかどうか…知りたいんだ。」
「私の中に?先生の存在がどのくらいかという事ですか?」
「そうだ…。
僕の中の君はもう、溢れそうなほどいっぱいで少し苦しいんだ…。」
「苦しいんですか?
大丈夫?あの…えっと…。」
「とりあえず…バレンタインデーは金井先生にも誘われてるんだってな。」
「はい。」
「で…どうするか決まったのか?」
僕は恐る恐る聞いてみた。
「えっと…平日ですし、学校終わりになりますがディナーを予約して下さってるそうなので…夕食を金井先生とご一緒する事になりました。
キャンセル料とか出ると悪いので。
報告が遅れてごめんなさい。」
あ…そうか…金井先生と過ごすんだ。
やっぱりな…そんな気はしていた。
僕には自信無かった。
ディナーの予約なんて理由を用意する事さえしてなかったし。
少し…キス出来ていたくらいで、調子に乗ってしまった…。
「そっか。わかった…。
君が決めたなら、それが1番だ。
楽しめよ。
じゃあな。」
「あの…。」
プッ。
僕は電話を切った。
期待していた訳じゃない。
心のどこかで、わかっていた気がする。
君が金井先生を選ぶのは必然だ。
だからと言って、諦められるほど…僕の君への想いは簡単な物じゃない。
告白出来て、浮かれすぎたんだ…。
余裕から、自分から行動する事を忘れていた。
金井先生は本気で来るって、わかってたのに。
職員室へ向かう廊下の窓から外を見た。
雪がゆっくりと舞い落ちてきた。
余計に告白の日を思い出して、苦しくなった。
職員室へ戻ると、案の定清水先生が興味深々で椅子ごと身体を近づけて来た。
「どうだった?おい?ヘコんでんな…。」
バレバレだよ、まったく。
「完璧に振られましたから。」
「フラれって…マジか?」
「ええ。バレンタインデーは金井先生と過ごすんだそうです。
まあ、仕方ありませんね。」
「お前、それでいいのか?」
「それで、いいも悪いもありませんよ。
彼女に決定権があるんですから。
僕の気持ちを押し付ける訳には行きません。」
「うーん?んん?あれ…おっかしいな…。」
「ん?何ですか?清水先生。
奥歯に物が引っかかるような言い方。」
「はっ?な何が?いやーははは。」
なんだ…?明からさまに何か変だぞ。
僕が振られた事と何か関係あるのかな?
とりあえず、僕は仕事である実力テストの採点を始めた。
気が紛れるし、早くしないと久瀬が来てしまう。
僕が振られたと知ったら、ガッカリさせてしまうんだろうな。
でも、こんな時だからこそ独りにならなくて助かった。
独りだと悪い方向に考えて、きっとまたブッ倒れてしまう。
実力テストの採点を無事に終えて、清水先生とコーヒーで一息ついた。
清水先生は気を遣ってか、話し掛けて来ない。
僕は空気が重いのに耐えられなくなった。
「気を遣わないで下さい。
逆に辛いですから。」
「あ、おう。」
「これから、知り合いと会うのでそこまで、落ち込んでませんよ。
ま、気晴らしでもしますよ。」
「そっか…プラス思考になって来たな。
良い傾向だな。」
「これも、姫のおかげですかね。」
そんな話しをしてると事務から内線連絡が入った。
ピピピピピピ…ガチャ。
「はい。武本です。」
「武本先生、お客さんが2名いらしてるので事務局まで来て下さいとの事です。」
えっ?2名??
久瀬1人じゃないのか?
「とりあえず、僕は帰ります。
清水先生、お疲れ様です。」
「おう!お疲れさん!」
僕は急いで帰宅準備をして、事務局へと走った。
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