手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

男の子達の恋話会議2

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「普通のカップルだと、遊園地後はディナーして、そのままベッドインかな…?」
「それ…普通じゃないだろう!
まだ田宮さんは高校生!
金井先生だってそこまで、見境いない事しないよ。
久瀬じゃあるまいし!」
安東が久瀬を叱咤するように言った。
多分、僕をいたわっての事だ。

可能性が無いわけじゃない…無いわけじゃ…。
ははは…ヤバいヘコんで来た。
「武本っちゃん!
冗談でそこまでヘコむなよ!
真っ暗じゃん!
武本っちゃんの周りだけ暗雲立ち込めてるよ!
とにかく、ここ1ヶ月くらいの田宮との話しを聞かせろよ。
学校違うから状況が全く見えてないんだよ。」
「1ヶ月…というか、田宮以外の件でゴタゴタもあって…。
田宮 美月の件だ。」
「あのメスブタがまた何か仕掛けてきたのか?」
メスブタ…相変わらずひでぇ呼び方だな。
「久瀬!女性に対してメスブタってないだろう!その言葉使い何とかしろ。」
久瀬の口の悪さに呆れた安東が突っ込んだ。
「先輩は知らないんすよ。」
「どちらかと言うと…魔女だよ。
金井先生と清水先生と僕は、そう呼んでる。」
「金井先生とか…ってそんな大事なんで話してくんないんだよ!友達なのに~~!」
久瀬が拗ねて、足をバタつかせた。
「あ、悪い…マジで倒れるくらい、いっぱいいっぱいだったから。」

僕は、田宮 美月の処女売春斡旋事件の経緯をなるべく丁寧に久瀬と安東に話して聞かせた。

「うわ~~すげ~な。
なんつ~話だよ。事件だよそれ。
先輩?大丈夫か?安東先輩?」
「あ、ああ。」
安東は理解するのに時間が掛かるのか、口をポカンと開けていた。
「そりゃ、忙しくて田宮にちょっかい出してるどころじゃねーな。
武本っちゃんも大変だったんだなぁ。」
っていうか、久瀬は何でそんなに、アッサリ受け入れてんだよ。

口を開けていた安東が、不意に意識が戻ったかのように質問して来た。
「あの…田宮さん…彼女の方からのアプローチみたいのは無かったんですか?」
「ないない。
そんなの…僕を好きな訳じゃないし。
友達感覚だろ。
バツゲームで僕の白衣欲しがったり、してたし。」
「んんん?何?田宮が武本っちゃんの白衣欲しがったの?」
久瀬が何かに引っかかったかのように声を上げた。
「1度コスプレ気分を味わいたかったんだろ。」
「いやいや、待てよ。
違くね…それ…安東先輩どう思います?
白衣は金井先生が常に着てるんだよ。
体育祭の時もそうだし。」
「武本先生は常に白衣着てらしたんですか?」
「あ、うん。たまにね。
上着がわりに…汚れ防止とか、寒さ対策で…英語教師なんだけど。
大学でも着てたからつい。」
「…だよな?」
「…どう考えても…。」
おいおい、どうした?
2人が顔を合わせて沈黙した。
白衣が何?何か変か?

「えーと、まずは…どうすっかな。」
「多分…出だしが間違ってんじゃないかな?」
何の話だよ!何の?
「ちょっと待て…話しが全く見えて来ないんだけど…?」
何か、僕の方が不安になってくるだろ!

「そもそも、何で武本っちゃんは自己否定すんのさ!」
「え?自己否定?」
「自分を好きにならないってとこですよ。
今までお付き合いした経験、あるんですよね。
つまり、他人から好かれる事はあった訳です。
なのに、田宮さんに限って好かれないって決めて掛かってる。」
「田宮はそもそも、感情は薄い方で【嫌い】という概念が存在しない。
けどさ【好き】はあるんだよ。
そこ、ちゃんとわかれよ。」
「わかってるさンな事は。
でも、それだからって僕を好きになるとは限らないだろ。」
僕と彼女の想いには温度差がある。
それは充分わかってるさ。
「先生、先生。
根本的な事忘れてますって。
そもそも、相手は女子高生。
女の子ですよ。若い女の子。
女子高生が何の目的で相手の物を欲しがったのか?って話しですよ。」
安東が冷静な口調で僕に問い掛けてきた。
「だから…コスプレじゃ…?」
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