手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

男の子達の恋話会議3

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ダン!
久瀬がいきなりテーブルを叩いた。
「だーっ!イライラする!
ボケか?ボケなのか?
いい加減にしろよ!武本っちゃん!
いいか、田宮は毎日のように白衣着てる金井先生じゃなくて、たまに着てる武本っちゃんから欲しがったの!
しかも、1度の使用なら借りれば済むところを、欲しがったの!自分の物にしたがったの!」
「え、えええ~~?ないない!ンなの。」
あり得ないってそんなの!
「それ!すぐ否定してるけど、その根拠は何ですか?
先生自身、自分に自信がないだけじゃないんですか?」
久瀬と安東が2人掛りで畳み掛けてくる。
そんな…何で責められてんだよ!
泣きそうになるだろうー!

「はあぁぁ!
あのさ、田宮が恋愛経験ゼロなのはわかってんだろ!」
「はい…。」
何故だろう…思わず正座してしまった。
2人の威圧感ハンパない!
久瀬なんか腕組みして見下ろしてるよ。
「つまりですよ、彼女がもし武本先生を好きになったとしても、自分で気が付かない方が当たり前なんじゃないですか?」
「…あ。」
「つまり、武本っちゃんの方が気が付いてやらなきゃならないんだよ!
スッとぼけてっから、金井先生に出し抜かれんだろ!」
「すいません…。」
何で謝ってんだよ…。
「まさか…武本先生がこんなに恋愛に鈍感とは思いませんでした。はあ。
25歳ですよね。…どんな恋愛して来たんです?」
安東まで傷口をグリグリえぐって来やがった。
悪かったよ!お子様だよ!僕は!

「まず…整理すんぞ!
親切丁寧に話すから、恋愛大ボケ先生は耳の穴全開で聞け!いいな!」
「はい…。」
もう…何が何だか…。
久瀬が人差し指をおっ立てて説明を始めた。

「まず…田宮は少なからず、武本っちゃんに好意を抱き始めてる。
今までの苦労の甲斐あって、告白の影響もあると思う。
では、何故バレンタインデーを金井先生と過ごすのか?」
「そうだろ。やっぱり違うんじゃないか…。
バレンタインデーを金井先生と過ごすって事は、田宮はやっぱり…僕より…。」
僕は思わず否定の言葉を発した。
「聞けって言ってんの!
田宮が何故、バレンタインデーを金井先生と過ごすって言ったんだよ!
もう1度、あいつのセリフ思い出せ!」

『ディナーを予約して下さってるそうなので…夕食を金井先生とご一緒する事になりました。
キャンセル料とか出ると悪いので。』

あ…あ…ああああ~!!
「まさか…キャンセル料金発生すると迷惑掛かるからか?
恋愛うんぬんじゃなくて??
単純にそれだけの為に行くってのか?」
だー。もう…どうして…。
「大正解だ!武本っちゃん。」
「田宮さんの性格上、それが一番しっくり来ませんか?
それを踏まえて、今度は白衣の話しに持って行くと…。」

「田宮の事だ、おそらく武本っちゃんが手作りご飯を食べたがってるのはわかっていたはずで、いつもならジェンガで、ワザと負ける事なんて簡単にやってくれたはず。
…なのに…あいつは負けなかった。
むしろ、勝って、武本っちゃんから戦利品を受け取りたかった。」
「それが…白衣か?」
「白衣は田宮と武本っちゃんの間で、何か意味があったのかも…?心当たりないか?」
「えっ…。何度か貸して、洗って返してもらった…ああ、飴とかお礼に貰ったりして。」
「ビンゴ!ほらソレ!」
「はぁ?ビンゴ?」
もう、この2人のノリに着いてくのがやっとで、思考が着いていかない。
その白衣がどうだってんだよ!
わかんね~って。

「先生…メモリアルグッズですよ。」
「…えっ…?」
「女ってのは、記念日だの記念品だのにうるさいだろう。アレだよアレ。」
「田宮さんには、思い出の品になるんじゃないですか?先生の白衣…。」

思い出の品…?
白衣が…?白衣の思い出…?

僕の頭の中で、過去の思い出がフラッシュバックした。

寝てる彼女にかけた白衣…。
ふざけて白衣を着てメガネをかけた姿…。
そして…水をかけられた彼女に被せた白衣…。

何で…僕は…気が付かなかったんだ!?

顔が烈火の如く熱を帯びた…思わず口元を押さえた。
は…恥ずかしいいい!
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