手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子と魔女2

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~PM9:00クラブ『スカルドット』カウンター端の席の魔女に接触。~

裏路地から奥まった所にある店の名前と金井先生からのメールの店名を確認した。
…『スカルドット』
よし!同じだ。
時間もピッタリ。

店のドアを開けた。
と、いきなり激しい音楽が耳をつんざく様に流れて来た。
耳痛え~。
耳を塞ぎつつ混雑した店内を進んで行った。
店の奥にカウンターを見つけ、人を押し退けて進んで行った。
カウンター席の端に小柄な女性がいた。
…魔女…田宮 美月だ!

思ったより派手な格好はしていなかった。
どちらかと言うと、地味な方だ。
白のロンTに革のタイトスカート、黒の帽子を被り、オレンジジュース、もしくはカクテルを飲んでいる様だ。

僕はターゲットをロックオンして、ゆっくりと魔女に近いた。
そして…声を掛けた。
「今晩は。隣に座らせて貰うよ。
田宮 美月。」
「…!!武本!」
僕は隣に腰掛けると、ワザと視線を合わせない様にして前方を向いたまま、語りかけた。

「警戒しないでくれ。
補導とかそう言うんじゃないんだ。
少し、話したいんだ。
色々と…。」
「あら、ナンパですか?
真朝が振り向かないから今度は私?
なーんて、武本先生に限ってないわね。
…話しね。」
「もう、卒業だからこうやって話せる機会がないだろ。
個人的付き合いをするつもりは、お互いに無いだろうし。」
「 あはは。面白い事言うのね。
確かに、先生と卒業後までお付き合いしたくは無いわね。」
「かと言って、後腐れ悪いのも嫌だと思わないか?」
僕はなるべく、魔女から全てを話したいと思う気持ちを引き出そうとした。
魔女が自発的にそう、考えてくれる…そんな雰囲気を感じ取ったからだ。

「そうね。
心がモヤモヤするってのが1番嫌かも。
でも…。」
「僕は一昨年の夏、中3の田宮 真朝を旧理科室で見た時から、ずっとモヤモヤしていた。
自分を否定して、教師であろうとして無理をした。
そして…彼女を沢山傷付けた。」
「そうね、あの腕の傷も一生残るもの。」
「ああ、だから逆に自分に正直になろうと思った。
嘘つきは辞めようと。
僕は田宮 真朝が大好きで、彼女無しでは生きられないと認めた。
誰が何と言っても、それを否定する事はもうしない。
そう決めてから、モヤモヤなんて無くなってスッキリしたよ。」
「なあに?自慢話?あはは。
面白すぎ…。
先生は私をどうしたいの?」
「話しを聞きたい。それだけだ。」
「…嘘。大人はそうやって子供を騙すのよ。
どうせ、警察や校長とかに話すんでしょう。
自分の実績にする為に。」
「それは、君が田宮 真朝にしてる事と同じだろ。
利用する為に…。
そんなひどい事出来ない。
田宮 真朝が傷付く事は、僕は絶対にしたくない。」
「…そう。
確かにそうかもね。
あの子…嫌になるくらい私を心配するから。
自分の方がケガしてるのに…。
…いいわ。
少し、話しましょう。
落ち着いた場所知ってる?
あ、でも先生のマンションだけはごめんなさい。
死んでも嫌だから。ふふふ。」
チャンスが来た!
魔女の方から話しに応じてくれそうだ!

「お前な…ま、ここから歩いて行ける場所に、深夜もやってる喫茶店があるから移動するか?
ここじゃまともに話せないし。」
「待って…!彼が居るの。
彼に声をかけてから行かないと。
武本先生と浮気してると思われちゃう。
そんなの耐えられない。」
そりゃ僕相手に誤解されちゃ、プライドが許さないよな。
魔女はDJブースの彼氏に声をかけてから、戻って来た。
「30分位なら大丈夫よ。行きましょう。」
魔女はダウンジャケットを着て、颯爽と歩き出した。
僕は慌ててコートを着て魔女と共に店を後にした。




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